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大掛かりな再編成が行われてから数ヶ月の時が流れた──
再編から数日後には、
副班長としてエルドが就任。
リヴァイ兵長の指揮のもと、
“新リヴァイ班”は活動を続けていた。
当初はレイが副班長をすると思われたが、
指揮官としての適性が認められ、
エルド・ジンにその任が託された。
また 壁外調査や任務が進む中で、
調査兵団はイルゼの手帳を見つけた。
人語を話す巨人。
人類はまだ、巨人について無知だ。
その正体を暴く為には、
その命を賭して戦わなければならない──
そして今日
巨人の討伐並び、巨人の捕獲を目的とし、
“第56回” 壁外調査が行われようとしていた。
━━━
「レイ!お待たせ!」
ペトラの声がけに、
彼女は白い髪をなびかせながら振り向く。
「ペトラ、それに皆も。準備は出来た?」
ペトラの周りには、
エルド・グンタ・オルオの姿もあった。
「あぁ、準備万全だ」
「俺も問題ない。レイは相変わらず早いな」
エルドとグンタが答える。
「ったく……俺は準備出来ていたんだがな、
コイツらがノロノロするせいで遅れちまった」
「オルオ、その話し方やめてくれない?」
リヴァイの話し方を模したオルオに、
ペトラが怪訝そうな顔をしながら言う。
「オルオは相変わらずね。
とにかく皆、今日も問題なさそうで良かった。」
「そろそろ兵長も来るはず。
上官達が揃い次第、出発になるから。」
皆の変わりない様子を見て安心し、
レイは柔らかい表情になる。
「了解。隊列を整えて待っていよう。」
エルドが指示を出し、特別作戦班のメンバーは
それぞれの配置に着いた。
先頭─リヴァイ
2列目─エルド・グンタ
3列目─オルオ
4列目─レイ・ペトラ
「レイと同じ列なんて初めてじゃない?」
ペトラがレイに話しかける。
「確かに、今までは別の班だったし、
この班でも基本的に別列だったからね。」
「そうそう。ほとんどオルオと同じだったから、
レイが隣で嬉しい!心強いし!」
ペトラの嬉しそうな声に、
オルオがこちらに視線を向ける。
「おいおいペトラ、照れ隠しか?」
「オルオうるさい。
出発も近いんだから前向いて。」
ピシャリと言い放つ。
「2人は、本当仲が良いんだね。」
「え!?レ、レイ……それ本気で言ってる!?」
レイの一言に、ペトラが驚愕した顔になる。
nagi.
4,394
1
#オリキャラ
「うん。戦場では息ぴったりだし、2人の連携にはいつも助けられてる。」
驚くペトラを他所に、
レイは素直な顔で淡々と続ける。
「それは嬉しいけど……えぇ、」
嬉しさ半分、
心外さ半分といった表情で困惑している。
「でも、兵長とレイの連携には到底勝てないよ」
「私と兵長の動きは、基本的に兵長が合わせてくれたり、指示をくれたりするから成り立ってるだけ。」
「いやいや……!兵長の動きに着いて行けるのレイだけだからね?レイ”も”凄いんだよ!」
謙遜するレイに、ペトラが食い気味に反論。
その勢いに、レイら一瞬目を見開くが、
すぐに小さく笑いながら言った。
「ありがと、ペトラ。」
「そう言ってくれるのは嬉しい。
でも、実力が足りていないのも事実だから。」
「私は、これからも実践を積んでより強くなる。そして、リヴァイ兵長の隣に少しでも長くいられるよう努力する。」
「四肢を失おうと、五感が機能しなくなろうと、
この命ある限り もがき続ける。」
冷静に話すレイだが、その瞳の奥には、
計り知れない熱が秘められていた──
レイの言葉を聞き、
班全員が呆気にとられる。
そして次の瞬間、
コツン、と頭を小突かれた。
「生きろと言っただろうが」
「てめぇは本当に話を聞かねぇな。」
低い声、リヴァイだ。
「兵長……」
「簡単に命をかけようとするな。俺はこの班含め、誰にも死なせる気はねぇ。」
そう言い捨て、隊列の最前列へ向かう。
胸の奥が、ほのかに熱くなった。
そして──
「これより、第56回壁外調査を開始する」
「進め──!!」
エルヴィン団長の声が響き、
調査兵団が一斉に壁外へ飛び出す。
前進する瞬間、ペトラが言った。
「レイ、私は貴方の事を応援する。兵長の隣に立ちたいって強い気持ち、凄くよく伝わった。」
「でもね、私も貴方には絶対に死んで欲しくない。」
「だから、今回も生き延びて必ず帰ってこよう」
「”2人”で、一緒に」
一呼吸おいて、レイが短く応える。
「うん、必ず」
2人は前を向いて馬を走らせた。
人類の進歩のために
そして、皆が笑って暮らせる未来のために──
━━━
数時間後──
血なまぐさい臭い、辺り一面に広がる蒸気
兵士の呻き声に、巨人の叫び声。
戦場は、いつもと変わらない。
「兵長!増援を集めてきました!」
ペトラがリヴァイの元へ、
エルドとグンタを連れてくる。
「ペトラ、お前は下の兵士の介抱。残りの全員は右の1体をやれ。左2体は俺が片付ける。」
「それと、レイ」
隣に立つレイに、声をかける。
「はい」
「お前は目の前の3体以外に巨人がいねぇか周囲を確認しろ。倒せるなら倒せ。難しければ俺を呼べ。いいな?」
「了解」
レイの返答を聞くと同時に、
リヴァイは立体機動に移る。
「兵長!?」
(そんな……兵長1人で2体の相手だなんて、)
ペトラが焦ったように声を上げる。
「ペトラ、大丈夫。」
「とにかく皆は、兵長の指示に従って動いて。」
レイは冷静に声を掛け、
ペトラの頭をくしゃっと撫でる。
そして次の瞬間には、
周囲の確認をする為、立体機動に移った。
建物を縫うように駆け、巨人を視認。
「……皆が集まってる方向に2体」
先程の位置から見えた、右の1体の後ろから
8m級が2体接近していた。
レイはブレードを引き抜き、戦闘態勢へ。
2体の巨人の足の間からワイヤーを通し、
向こう側の建物にアンカーを引っ掛ける。
低空─地面ギリギリで間合いに入る。
回転をかけながら、巨人の足首を的確に狙う。
2体の足を同時に切り裂き、
巨人がバランスを崩した。
そして建物の壁に辿り着いた瞬間、
強く壁を蹴り出す。
巨人のうなじへアンカーを突き刺し、加速。
そして、あっという間に1体を討伐。
うなじを裂き切った瞬間、
隣にいた巨人の手が伸びてくる。
レイは即時に動き、手の指を全て切り落とす。
再度 低い位置へアンカーを刺し直し、
遠心力で空へ高く舞い上がる。
上空から勢いをつけ、2体目も一撃で仕留めた。
「……ふぅ」
(危うく捕まるところだった。もっと注意を払わないと……)
レイは少しばかり呼吸を整えながら、
周りを見渡す。
すると何やら、伝令兵が忙しなく走り回っている。
彼女は下へ降り、現状を尋ねた。
「実は、ここら一帯にいた巨人が全員、街がある方へ北上しているんです……。」
「もしかしたら壁が破られたのかもしれません……。エルヴィン団長が退却命令を出された為、急ぎ準備が進められている状況です!」
近くにいた兵士が状況を伝える。
「……」
レイはその場に立ち尽くした。
(……私は、また何も守れないの?)
呼吸が浅くなる。
レイにとって、地下街での生活は最悪だった上に、良い思い出なんてものはほぼない。
しかし、リヴァイという男に出会えたのも、紛れもなく あの地下街だ。
隣に立ちたいと強く思えた人との出会いの場所、母と暮らした場所。
そして今、自分を大切にしてくれている人達が住む街。
それらが全て、
今この瞬間壊されているかもしれない。
そう考えた瞬間、
足が動かず思考も機能しなくなった。
(また、何も出来ないの……?
無力なまま、巨人共の好きにさせるの?)
固唾を飲む。
(……いや、違う)
「……私は、強くなった。」
彼女は自身の頬を強く叩き、我に返った。
「……早く皆にも伝えないと」
そう呟き、急ぎリヴァイの元へ向かった。
━━━
「兵長!ペトラ!今しがた退却命令が……」
レイは2人を見つけると、
すぐさま近寄り声をかけた。
するとそこには、
血塗れで倒れている男性兵士がいた。
「……彼は生きているの?」
レイがポツリと聞く。
その声に、ペトラが静かに首を振った。
「……そう」
彼女は視線を落とし、拳を握りしめた。
調査が進む度、仲間が命を落としていく。
数刻前まで、何気ない会話を交わしていた仲間達が呆気なく。
これだけは、いつまで経っても慣れない。
いや、慣れてはいけない。
この状況を当たり前だと思うようになった時、人類は巨人に完全敗北する。
巨人を絶滅させ、人類の生きる希望を紡がなければならない。
それが、仲間達が残した意思に、
唯一報いる方法なのだから──
レイは歯をギリッと鳴らす
悔しさを押し込めるように。
そして、再度視線を戻し告げる。
「兵長、退却命令が出ています。」
「今すぐご準備を。」
「何?退却命令だと?」
リヴァイは眉間に皺を寄せる。
「リヴァイ、ここに居たのか。」
するとレイの後ろから、エルヴィンが現れた。
「……おい、エルヴィン」
「退却するってのは、どういう事だ?
俺の部下は犬死か」
苦虫を噛み潰したような顔で問いかける。
「巨人が街を目指して、一斉に北上し始めた。」
「……何?」
「そんな……」
リヴァイとペトラの顔色が変わる。
「5年前と同じだ。壁が壊されたのかもしれない。」
その場の全員が、最悪の事態を想定した。
「兵長、行きましょう。」
レイのやけに冷静な声が響く。
「……ちっ、仕方ねぇ」
リヴァイは舌打ちをし、すぐに馬に跨る。
「ペトラ、その兵士は私が運ぶ。」
「その間に残りの兵士への伝達をお願い。」
「……分かった。」
焦る気持ちを抑え、ペトラも今できる最善を尽くす。
そして調査兵団一同は、
急遽壁内への帰還を余儀なくされた。
人類の未来は、またしても揺るがされた。
──次に待つのは、希望か、絶望か。