テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
他愛もない会話をしながらの道中は、思ったよりもあっという間だった。
喫茶店でいつものコーヒー豆を買い、次の目的地である仕立屋へ。
店主「いらっしゃい。今日は2人おそろいだね」
アラスター「どうも。先週お願いしていたものを」
店主「はい、できあがってるよ。待たせたね」
一言二言交わしてから店主が店奥から持ってきたのは、一着のコートだった。
色味や形はアラスターが着ているものに似ているけれど、生地や模様が少しずつ異なっていて新鮮さもある。
〇〇「素敵だね、コート新調したんだ」
受け取ったコートを入れた紙袋を手に、アラスターが店から出てくる。
それを着ている所を想像しながら声を掛けると、手元にその袋を差し出された。
アラスター「私のものではありません。これは、貴女用です」
〇〇「え・・・私・・・・・・?」
思いもよらなかったその言葉に、きょとんとしてその顔を見上げる。
アラスター「貴女、出かける際にはいつも同じスーツを着ているでしょう」
そう言いながら、アラスターは私のスーツを指さす。
アラスター「常に同じ服装、というのもいささか女性らしさに欠けますからねぇ」
アラスター「たまには気分を変えてみてはいかがですか」
〇〇「で、でも・・・・・・」
確かに、私が外出用と決めているのは今着ているこのコート一着のみだ。
だからといって、こんな高価なものを”そうですか” と受け取って良いものか迷ってしまう。
アラスター「受け取りにくいのなら、オーナーからホテル修繕の礼と思えばよいのです」
私の迷いを見透かしたように、アラスターは少し柔らかい口調で言う。
*それでも躊躇して動けずにいると、*”〇〇” と名前を呼ばれた。
アラスター「こういうときは、相手の顔を立てるものですよ」
―――ドクン。
紳士的な瞳と視線が交わり、不意に心臓が大きく高鳴った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!