斜め下を見れば緑で広がっている。春風が夏風に変わりつつある。空は青く、雲ひとつない晴天だ。
遠くの景色はまるでジオラマを見ているようでとても興味深い。
これで全てが開放される。大好きだったものからも。大嫌いだったものからも。
文字通り全てのものから。
最後にお礼ぐらいはしておかないとな
最後に送った文はきっと支離滅裂で読むに耐えない文だろう。
電話が鳴りだす。
着信音さえもBGMに俺は地面に背を向ける。
送信ボタンを押すのを躊躇ったのはきっと大好きなものから離れたくなかったから。
でも、覚悟は決めた。もう大丈夫。迷うことはない
電話の内容が気になるがきっと取ってしまったら後には戻れない。
珍しい彼の名前を見て少しまた話したいと思ってしまった。
でも、ダメだ。だって恥ずかしいもんあんなこと送っといて電話出るのは
あぁ、覚悟を決めても決めても決めきれない。
最後に少しだけ。未練がありすぎる。
「もし「お前今なにしてんの」
焦った声。普段だったら人の話を遮らないのに
「何してるって、特に何も ?」
「あれは何 あいつらに聞いてもそんなドッキリ企画してないって言うんだけど」
「だってドッキリじゃないもん」
「絶対ダメだから」
「今から行く どこ居る」
荒い呼吸。きっともう外にいるのだろう。万年部屋にいる彼が。
「内緒、笑」
「最後に話せてよかったよ。決心が着いた。
今までありがとう。 なんか恥ずかしいな笑」
俺だけが笑っている。おかしな世界だ。
呼吸を整え最後まで一言一句彼の言葉を逃さないように聞いた。
お互いに一方的な会話だったが全然良い。
きっと最後は震えていたと思う。かっこ悪いなぁ、
でも決心がついた。大好きなものから離れるのは苦しいけどそれより嫌いなものから開放されたい。
大好きで溢れた世界に行きたい。
でもこの世界は大嫌いで溢れていた。
思い返せば楽しいことだらけ。辛いことも苦しいことも全部全部耐え抜いてきた。だからこそこの痛みには耐えきれない
きっと俺が居なくなっても困ることは無いし、世界は何も無かったかのように回り出す。
せ〜ので飛ぼうや
隣からそんな声が聞こえる
「どっちが言う?」
「じゃあ俺で」
「おけ」
今から大きな旅に出る。
せ〜ので大きな一歩を踏み出す。
今から飛んでみよう
ーーせ 〜 の っ !
最後に聞いたあいつの声は少しだけ震えていた。
まるでネジの外れたエスカレーターの如く急降下していく。
2人きりで海行くなんてデートみたい
そう笑った日が懐かしい。
お互いに手を伸ばす。最後に見たあいつの顔は涙でどんな顔をしているか分からなかった
。ずっと青いそらが目線にある。
握っている手の温もりがいつ消えるのか。少しだけ怖かった。
下はどうなっているんだろう。そろそろ海かな。なんて考えて。
未練がましく腕を伸ばしながら。
最後は笑顔で散っていった。
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