テラーノベル
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第13話
「あの……貴女は……?」
あれから、恐る恐る口を開いたのは、さっきの獣人だった。フードを被っていて、顔は見えない。さっきは、伸びた黒い髪に白い肌に何も期待して無い赤い目が見えたけど、深く被り直されちゃった。
でも、唸り方が犬では無い。もっと野生っぽい感じ。
でも、唸り声とは対照的に震えながら座り込んでいて、とーっても私の事を怖かっている魔力の動き。
「私は、セリーナと申します。立てますか?」
私が手を出すと、その手を見つめて……そのまま動かない。さっきよりも、怖かってる。
……近くで見ると、七歳くらいに見える。でも、本当はもっと下なのだろう。
「……そうですよね。まだまだ、冷え込みますから、被っていてください。風邪ひいてしまいますよ」
私が持っていた毛布を肩からかけると、震えが止まった。心なしか少しだけ安心したような魔力の流れになった気がする。
「な、何で獣人なのに、助けたんですか……?」
「耳と、尻尾が生えてる事以外殆ど変わりませんし……一番は魔力が叫んでいるから。それ以上でもそれ以下でもありませんでしたね」
「魔力……? 俺にそんな物が?」
「えぇ。強い護衛に向いているような膨大な魔力ですよ。見た聖騎士の人たちと同じような種類。私、五年後に出張形職人になる予定なんです。腕はまだまだですけど……どうですか?」
私がしゃがんで目線を合わせながら言うと、困ったよえな魔力の動きになった。恐怖とかそこら辺の気持ちは殆ど無くなった。
「また見つけますよ。その時はよろしくお願いしますね」
私がパンを手渡しすると、ゆっくりと食べ始めた。
「あ、ありがとうございます。絶対に忘れません!」
「えぇ。私も忘れないですよ」
「ん……リナ……?」
ニルスさんの弱々しい声が後ろから聞こえた。
「ニルスさん! 大丈夫ですか?」
「あぁ。少し、打ったみたいだけど……何かあったみたいだな」
「まぁ……色々と……」
ヤバい。あんな事をしたなんて……口が裂けても言えない……
「あの、助けてくれたんです」
「そうなんだな。このパンもか?」
「はい。俺みたいな奴隷に……獣人って、怖くないんですか?」
ニルスさんは少し考えてから「……言葉が伝わるからあんまりなぁ……しかも、殺気が無いし」と言ってふわりと微笑んだ。
確かに、言葉が伝わるって大きいのかも?
「ふふっ。あの、名前って聞いていませんでしたね。聞いてもいいですか?」
私がそう言った瞬間、空気が重くなった。
あれ……空気読み苦手なのは、昔からだけど……マズイ……
「あ……名前は……」
「大丈夫だ。リナも、説明しそびれたな。番号で呼ばれるんだ」
あ……詰んだ。
「あの……良いんです。俺の主になるんだったら、俺の名前を付けてください。どんな意味でもいいです」
ちょっと待ってよ。彼の名前をどんな意味でもって……
ニルスさんの事を見ても、顔を逸らすし、この子の期待オーラがもの凄い。
え? 私なのか?
でも、ニルスさんと、この子の魔力はそう言っているからな……
『リーパー。お願いしたい事がある。いつも通り顧みずによろしくな』
脳裏に突然響いた。何か聞いたことがある声。殺意満々の声。
リーパー……死神か……
あんまり良くないよね……
ってか、誰? 私は……
黒い髪に黒い目。それに、白い肌。容姿は全く違う。だけど、知らない誰かの顔が脳裏に浮かんだ。
あれ? 誰なの……この人は……
いやいや。その前に、名前考えないと……深く考えるのはまた後で。
……ノア。
どこから来たのか分からないけど、なんかしっくりくる。
それでいいかな? 人間も、獣人も、寿命は百五十年くらいなのだから。それに、この一生……百五十年くらいでこの子は何かをやり遂げる気がする。私の直感でしか無いけどね。
「……ノア。何かしっくりきたんですよ。特に意味は無いけど……いいかしら?」
その……ノアさんは自分に与えられた名前を口の中で転がしている。いつの間にか、魔力も嬉しそうに動いている。
ニルスさんの顔を見あげると、微笑みながら頷いてくれた。
これは……正解かな? 正解か、不正解かなんて、見分けられる程、器用では無いけれどね。
「名前を付けてくれてありがとうございます。俺、この恩を返せるように頑張ります」
「えぇ。またどこかで」
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「元気でな。ノア」
「はい!」
それから二人で横に並びながら帰路を真っすぐ帰った。
勿論、後から事情は聞き取られたけどね……
ニルスさん。学校での評価下げてごめんなさい!
……でも、何かあってからは遅いんです。私の心配症を許してください。
コメント
1件
こはるさん、第14話読ませていただきました!セリーナが獣人の子に「ノア」って名前を付ける場面、すごく優しい空気が流れてじんわりしました。「何かしっくりきた」っていう直感を大事にする感じ、セリーナの人柄がにじみ出てますね。それに脳裏に浮かんだ黒い髪の人物やリーパーって声…気になる伏線も仕込まれていて、次が楽しみです。ニルスさんへの申し訳なさも可愛かったです(笑)