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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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喫茶店を出てから、智絵里は一言も発しなかった。恭介はそんな智絵里に寄り添って、黙って見守るしかなかった。

家に着いてからも、ソファに寝転がって微動だにしない。

そりゃそうだよな。今まで智絵里は一人で必死に乗り越えようとしてきた。誰にも言いたくないから、人と関わらず、過去の関係だって断ち切ったのに、それをいきなり証言だなんて……。

しかも証言をしたことで、智絵里に危険は及ぶのではないのかと心配になる。

キッチンに立って考えていた恭介は、突然智絵里に後ろから抱きしめられ、はっと我に帰る。

「どうした?」

「……一人だといろいろマイナスに考えちゃいそうだから」

「じゃあさ、一緒にお風呂にでも入る? 二人で入ったら考える暇なんかないかもよ」

「……えっち」

「お前ねぇ……」

「……でも悪くない」

「ったく、素直じゃないなぁ……」

「でもこんな私《《でも》》好きって言ってくれるんでしょ?」

恭介はくるっと回転すると、智絵里の鼻を怒ったように摘む。

「何言ってんの。こんな智絵里《《だから》》好きなんでしょうが」

智絵里が嬉しそうに微笑むから、恭介は抑えがきかなくなって、智絵里を抱き上げ浴室へと走る。

キスをしながら服を脱がす。恭介の手が智絵里の体中を撫で回していく。思わず吐息が漏れ、智絵里はその場に崩れ落ちた。

乱れる呼吸の中、恭介は智絵里の目をじっと見つめる。

「智絵里……今日はお前のこと、めいっぱい甘やかしていい?」

この人はなんてことを言うのかしら……恭介の言葉だけで体の芯が震えた。智絵里は恭介の体に腕を回す。

「私が満足出来るくらい甘やかしてくれないと許さないんだから……」

「了解……」

恭介が智絵里の中に入ってくると、そのぴたりと重なり合う感覚に身体がのけぞる。あぁ、私の中、恭介だけを受け入れられるようになってる。愛し合うことがこんなに気持ちが良くて、幸せな行為だということを、恭介が私に教えてくれた。

「愛してるよ……智絵里……」

「うん……私も……」

恭介の匂いを胸いっぱいに吸い込み、智絵里は彼が与えてくれる安堵の中に堕ちていった。

* * * *

貪るようなキスに酔っていると、急に恭介の動きがぴたっと止まる。

「良いこと思いついた」

「良いこと?」

恭介はニヤッと笑うと、智絵里の隣に移動してスマホを手に取る。急に現実に戻されてしまい、智絵里は不服そうに恭介の体に抱きつき足を絡める。

「おっ、見つけた」

「何を?」

智絵里の質問に笑顔だけ向けると、スマホの操作を続ける。それが終わると、智絵里の額にそっと口付ける。

「せっかくの三連休、まだ二日残ってるしさ、一泊二日で旅行にでも行こうか?」

「……いきなり?」

すると恭介はスマホの画面を智絵里に見せる。隣の県にあるリゾートホテルだった。

「直前って意外と空きが出たりするんだよね。嫌って言っても予約しちゃったからね、連れてくよ」

「……嫌なんて言ってないわよ。旅行なんて久しぶりだからちょっとびっくりしただけ」

恭介の手が、智絵里の髪の中を滑っていく。

「何も考えずに、ゆっくり過ごそうよ。食べたい時に食べて、観光してもいいし、部屋にこもって一日中イチャイチャしてもいいしさ」

「……なんて自堕落な旅行かしら……」

「いいんだよ。いろいろなことがあり過ぎて、頭の中だってまだ混乱してるだろ? のんびりぼんやりイチャイチャして一度リセットしてさ、その後でちゃんと考えよう」

「……イチャイチャっていうワードが二回も出てきた」

「……智絵里だってしたいだろ? イチャイチャ」

覆い被さってきた恭介の首に腕を回し、唇を重ねる。彼の気持ちが嬉しかった。

「あのね、ベッドの中だけがイチャイチャじゃないのよ」

「……確かに。お風呂とかもイチャイチャ出来るな」

「そうじゃなくて。ご飯食べる時とか、一緒に並んで歩くだけだって、二人でいるだけで私は幸せだって言いたかったの」

「智絵里……!」

「なので、観光はちゃんとプランに入れてね。確かそのホテルの近くに有名なプリンのお店があったし、道の駅のご当地ソフトクリームも食べたいから」

「……さすが智絵里だよ。ブレない甘党。そんなところも好きだけど」

クスクス笑い合うと、再びキスが始まる。

「恭介……」

「ん?」

「……いっぱいイチャイチャしようね……」

「もちろん」

恭介の腕の中にいると何も考えられなくなる。ずっとこのままならいいのに……現実に戻るのが怖くなる。

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