「……そんなことを聞いてるんじゃないです……」
口にして、手首を拘束するベルトに視線を移す私に、
「ああ、こんなことをしておきながら、何をしているんだと……?」
政宗医師が事もなげに返し、またロックグラスから一口を含んだ。
「……何も。それが、あなたへのお仕置きですから」
ウイスキーを呑み下した彼の喉元が、ごくりと僅かに波打つ。
「どうして、これが……」
その首筋につい目が引き寄せられつつも、何もするわけでもないのにと思う。
「……そうですね、強いて言えば、羞恥……ですかね」
彼が手にしたグラスを、静かにサイドテーブルに置き、
「何もされないままで、そんな風に放っておかれていることに、羞恥を感じませんか?」
政宗医師は言って、唇の端でにやりと笑って見せた──。
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