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小説リレーの企画に参加させて頂きました!3番目です(`・ω・´)ゞ
とりあえず街に入って散策してみることにする。話を聞く、と言っても装備で固められた俺達は避難所のようなこの街で相当浮いていて、時折睨まれるときもあった。初っ端からその人たちに話しかけて行く勇気もなく、俺達は軽く散歩をして街にある帝都慣れていくことを選んだ。鋭い目つきを感じてはイタリアが大袈裟にビビるので、俺は呆れながらもそっと背中に手を置いてやった。
「…あれ、新しく街に来た方ですか?」
そうやって足を動かしていると、ふと、後ろから話しかけられたので少し身体がこわばった。まさか話しかけられるとは思っていなかったからだ。
その言葉に反応して振り返ると、そこには丸眼鏡をかけた白衣の青年と、後ろにもう1人青年が立っていた。すらりと若々しいその佇まいに先ほどまでピリピリしていた雰囲気が少し和らいた気がした。
「…あら、その割には装備を付けていらっしゃる?」
「なんか、上の奴が言っていた”勇者”…じゃないか?」
後ろにいた青年がそういうと、眼鏡の青年は「あぁ」と何か思い出したようにこちらを向き、少し口角を上げて話しかけてきた。
「初めまして。僕はここで医者をやっています、オーストリアと言います。
…まぁ、地方の貧乏医だったのを、派遣されたのですけど。この街の方とは顔見知りなので、見慣れない顔だなと思って声を掛けさせていただきました。」
「あぁ。そうか、だから白衣を」
さっきよりイタリアや日本の緊張が薄くなったように思えた。確かに先ほどまで悪い空気が漂っていたので愛想のよく礼儀正しいこの医者への好感度が上がるのも判る。
「こちらは、…助手というか、看護師というか。スイスと言います。実はあと一人いるのですが、…今はお留守番中でして。」
「構わない。…俺はこの街のやつらに話を聞きにきたのだが」
「魔王軍と何の知識のないままに戦うのは肝が据わりすぎていますからね。」
「…でもこの街の人なんか冷たいんね、貴方にお話を伺っても…?」
オーストリア、だったか。オーストリアのお陰で緊張がほぐれて来たのか、日本とイタリアも口を開き始める。
「あはは、…優しくていい人ばかりなんですけどね。でもまぁ、あの方たちも随分と怖い思いをしたでしょうし…その装備と武器を見たら、怖くなってしまうのも不自然ではない」
彼は本当に良い医者なのだろう。ふとそう思った。オーストリアは「それなら」と付け加える。
「私が、患者さんに聞いた話をお伝えしましょうか?患者さんに怖かったことをフラッシュバックさせたくありませんし、この子が一回魔王軍に鉢合わせていますので」
そう言ってオーストリアはスイスの頭を撫でる。スイスはオーストリアに「子供扱いすんな」というまなざしを向けた後、こちらへ顔を向けて一礼した。
「なら是非お願いしたい。」
「承知です。立ち話も何ですので、私の家へおあがりになってください」
オーストリアはそう言って自然に俺達を手招いた。
「…本当?スイスもチーズがすきなんね?」
「あぁ。うちのフォンデュは絶品だぞ」
「それは私も興味があります。今度紹介していただいても?」
「勿論。ふふ、他のチーズが食べられなくなるぞ。」
いつのまにか仲良くなっている三人を尻目に、俺達はオーストリアの家に着いた。
「…なるほど、あいつらは殺傷だけでなく、強奪も…」
「えぇ。この前は2歳の少女が目の前で親を殺されて…」
「2歳の…?しかも女の子が?それは非道な話だ。その少女はどうなったんだ?」
「他の同年代の子供たちのグループに入れてあげました。自分も怪我をして、親は目の前で…残虐な話ですよ、もう」
コト、と机にコーヒーが置かれる。オーストリアは「Danke、リヒテン」と言って置かれたコーヒーを啜る。家にもう一人いる、というのはこの人だったのか。
オーストリアやスイスより一回り小さい、中性的な身なりの彼、…彼女かもしれない、は、丁寧に一礼してイタリア達のもとへ行った。俺達は話を続けた。
「それも、脳筋で突っ込んでくることばかりでないことをお気をつけて。彼らは標準の頭を持っています。」
「策なしでどうにかなるわけでもない、か…。」
野蛮な山賊のような雰囲気を出しながら、相当油断してはいけない相手なのだろう。
「それと、これは噂話なのですが、…魔王軍の奴らには舌が三枚ある、と噂ですよ。」
「はぁ?舌が三枚?なんのファンタジーのモンスターだ。」
「加えて、カエルを食べるのだとか!」
「いや、…どんな噂だ。ふざけているようにしか思えん。どこかのガキが適当に言った戯言だろう」
彼はクスッと笑って「どうでしょうね」と返す。俺はその後でも、真面目に頭を働かせていた。
「今日は此処で泊まるのでしょう?少しでも居心地が良いように、皆さんに勇者様方の事を伝えておきますよ。」
「いいのか」
「はい。皆さん、平和をずっと待ち続けているのです。それに、貴方達はとてもいい方ですから。」
オーストリアが椅子から立ち上がる。俺も椅子から立ち上がって荷物をまとめ始める。
「…なんだお前ら。随分と楽しそうじゃないか」
「はい。スイスさんとリヒテンさん、意外と面白いんですよ」
「意外とはなんだ。意外とは」
ドイツは少し呆れながらも、まぁ、人と仲を深めておいて損はないと思うことにした。ふっと笑った。
「大怪我をしたり、病気になったときはお任せくださいね。僕、腕に自信があるんです」
オーストリアはそう言って俺に何かを握らせた。
「…これは?」
「回復薬です。あげられるだけ、今のうちに渡しておきます。
味が良くないのが欠点ですが、効果は目を見張るものです。勇者様のご健闘をお祈りいたします。」
俺はその回復薬を懐に入れ、「感謝する」と一礼する。そうして俺達は、一時的なものかもしれないが、オーストリア達に別れを告げた。
スイスが小さく手を振りながら言う。
「今日のディナーにチーズをもっていかせてやる!」
「へへ、スイスGrazie!」
どれだけチーズが好きなんだお前らは、と思うが俺も好きなので突っ込むに突っ込めない。俺は少し機嫌の戻った二人を見て少し良い気持ちになりながら街を歩く。心なしか、行きよりもきれいに見えた。
一人、舌が三枚の化け物がカエルを食べる様を思い浮かべて、思わず笑いだしそうになる。…まさか魔王がそんな、…くくっ、…。
「泊まる所どんなとこだろーね、」
「綺麗なお布団があれば私はなんでも」
(…俺は、ソーセージとビールが欲しいな。)
結局、何処へ行ってもドイツなドイツであった。
~続く~
遅くなって申し訳ございません!!!
少し続きが書きにくい終わりになってしまったかもしれませんが…🙇
お医者さんオーストリアさんが書けたので大満足です🥰🥰
次… 推しが多すぎる人です さんです!
優しくて、アナログの絵がとてもお上手な方です😖😖
字が本当に綺麗で羨ましい限りです…(ノД`)・゜・。
コメント
3件
なるほど…あのブから始まってスで終わる四文字のあの国ですね!
はい!しかとバトン受け取りました!誠心誠意書かせていただきますね! あらやだ、最近イラストテラーに乗せてないですわッッ‼ 思い出させてくれてありがとうございます! さーてがんばるぞぉ!