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12 - 第12話 医者の言う事は……

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2023年01月14日

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前回までのあらすじ。紆余曲折あって、夏畑海(なつはたうみ)についての調査を終えた紗季と歩美は、学校に戻ってきたのだが、さっそく夏田海(なつだかい)から依頼が舞い込んできた。

依頼内容は、サッカー部で流行っている、目が良くなるという謎の器具を取り上げ、保健委員に注意してほしいという内容だった。

雪と絵菜、そして露とマスターと合流した3人は、保健室に向かったのだが、

「何よ!もぬけの殻じゃない⁉」

紗季が珍しく叫んでいる。

「ああー少し遅かったみたいだな」

「もーう!私が来た意味‼」

「いてっ」

絵菜が怒りのままに、雪の髪を引っ張る。

「もー、髪の毛括りなおさ」

その時、パチンとゴムがはじけて飛んで行ってしまった。

「あ」

「大丈夫か雪?」

海がゴムを拾うと、雪に渡した。

「え、あっ……」

雪は海の顔をじっくり見て、しばらくした後、ゴムを受け取った。

「ありがと……」

絵菜がその様子を見て、呆然としている。

「雪って……夏田さんの事好きなの?」

「なっ、そんなわけないだろ‼」

雪は少し顔を赤くしながら言った。

海はそんな彼女の様子を見て、ある出来事を思い出していた。

『そんなわけないでしょ⁉誰がこんな奴なんか‼』

海は眼鏡を直すと雪に言った。

「このゴム、誰かにもらったやつなのか?」

「まあな。私の親友みたいなやつ」

「へえ」

雪は髪を括りなおしながら、歩美に言った。

「なあ、どこに行ったのか分からないのか?」

「ああ、分かるよ」

歩美はゆっくり立ち上がると、保健室を出て行った。

「何も、保健室にいるとは限らない。これは、生徒会の倫ちゃんに聞くしか無いよね‼」

「でも、倫は今どこに居るんだ?」

「倫は確かテニス部だった気がするけど……」

露はマスターをおぶりながら言った。

「そうと決まれば行こうか」

保健室に居た全員が歩美に着いていった。


この学校のテニス部は、テニスコートが2つあり、2つのコートが校舎を挟んでいる。

普通なら、男子テニスと女子テニスが、話しているところは見たことが無いのだが……

「……猿だな」

「もーなんでなんだよ‼」

そこには、例の器具を進める男子テニス部だった。

「宗教勧誘かな?」

露は若干、顔に血管を浮かせて、怒った。

「お前ら何やってんのー?」

雪は少し大きい声で、倫に聞いた。

「ねえ、何とかしてよ‼」

倫は雪の腕を掴み叫んだ。雪は倫の手首を掴んで、冷静に言った。

「落ち着けって。何があった?」

「実はさ。私達、今週末試合なんだけどさ、男テニが変な器具持って、『これ動体視力上がるよ』って進めてくるのー」

「なるほど。今、その犯人を捜してるところなんだよ」

雪は落ち着いた表情で、倫に言った。

「犯人なら、あそこにいるよ?」

倫はコートの先、いやそれよりもっと先を指さして言った。指さした先にはゴマ粒みたいな黒い人が立っていた。

「ちっっっっっっさ‼」

「さすが、テニス部で一番の視力を持つ彼方倫。なかなかやるじゃないか」

「はぁ……とにかく、あの人を追えばいいんだね?」

「じゃあ、あたしら帰るか……」

雪が校舎の方へと方向転換すると、海が襟元を掴んできた。

「何勝手に帰ろうとしてんだ?お前も来い!」

「なんでだよー‼」

「……」

2人の様子を露が眺めて居た。

「あれ?起きたの?」

「あ?」

露の背中でマスターが目を覚ます。

「何してんの?」

「ちょっと色々あって……」

「マスター。俺、今週末試合があるんだよ」

「うん。で?」

今藤の話にマスターが仏頂面で返した。

「なのにさ、まだ未解決の事件が残ってんだよ。しかも、テニス部の他の部員も同じように変な機械持ってるし……」

「未解決事件?」

マスターが首を傾げると、今藤はきょとんとした顔で彼を見返した。

「ああ。あの二件の傷害事件だよ。一人は捕まったんだけどな、もう一人がな……」

「……そうか」

マスターは何か隠すような表情で言った。

「てか、お前ら仲良すぎ」

今藤は小馬鹿にするようにマスターの方を見た。

「おい早く下ろせ」

「なんでよー?」

マスターは露の背中で手足をジタバタさせた。

露はマスターをゆっくりおろした。


疾風のごとく、ゴマ粒のような男を追い続け、5分。

男との距離はわずか、数メートルになってきた。

「待って、早すぎだよ……」

「アイツ何者⁉」

雪は疲れ果て、そこに倒れた。

ちなみに、絵菜は呆れた先に帰ったようだ。

残りの三人はすごい速さで追い続けていたが、体力の限界で倒れてしまった。一人の男を除いて。

「待てこの野郎‼俺たちの練習をめちゃくちゃにしやがって‼」

海はすごい速さで男を追っていた。しかし男の方は余裕の笑みを浮かべた。

「捕まえられるもんなら捕まえてみろ‼」

男は、海の方を向くと、その余裕綽々の表情を彼に見せつけた。

「あ、お前、前」

海は立ち止まると、男はひるんだのか、さらに余裕の表情になった。

「なんだ?諦めたのか?やっぱ俺を捕まえるなんて百年早……」

ゴーン。

校舎の壁にぶつかった。さっきまでの余裕の表情は無くなり、男はその場に倒れこむ。

「馬鹿だなこいつ」

「あっ、海くん。捕まえた?」

「ああ。だいぶ足早かったけど。サッカー部なめんなよ?いっつも何キロ走ってると思ってんだ?」

海はゆっくり手を伸ばすと、男の胸倉をつかんだ。

「こいつ。よく見たら保険部長じゃないか」

「倫ちゃんの言ってることが正しければ、一連の事件の犯人は此奴ってこと?」

「まあ、そういうことでしょうね」

紗季は眼鏡を取ると、男の方をじっと見た。

「おい!起きろ‼なんでこんなことしたんだ⁉」

海がそう言って、男の身体を強く揺さぶった。

「い、いやなんでって別に……俺はただ、皆の視力が上がればいいと……」

「はあ?」

全く理解できなかった。

「今、生徒たちがゲームしすぎて、視力の低下が問題になってるんだ。それで、何か方法がないかと、探していたら、先輩が卒業する際に作った本に、この器具の作り方と効能が載ってたからそれ通りにしただけだ‼」

「なるほど。医者が医者の言う事を聞いたってことか。お前のせいで次の大会負けるだろ‼どうしてくれるんだ⁉」

海は男の胸倉をつかんだまま焦燥に駆られ、怒りのままに叫んだ。

「だ、だって、俺はほんとにただ皆を助けようと思って……」

「まあいいや。俺は引っかからなかったし……でも!ちゃんと皆に謝れよ」

「は、はい」

海は男の肩を叩いて言った。

海はゆっくり後ろを振り向くと歩美と紗季に言った。

「この器具、この男が作ったみたいなんだが、保健室の方に、この器具の本があったらしいんだが、まあ証拠も無いし、とりあえず警察に言っといたほうが……」

そう言いかけた途端。海はその場に倒れこんでしまった。

「ちょっと⁉海くん?」

歩美が驚いてとっさに海の身体を支えた。

「全く、無理して追いかけるからよ」

紗季は海の身体をそのまま屋根の方へと移動させた。

「はい。これで良し」

歩美、紗季、海の様子を後ろから見ていたのは、雪、と冴香。

「冴香。今日管理官に呼び出されてるんだろ?早く行った方が良いんじゃないのか?」

「そうね。どうやらマスターも居るみたいだし。さっさと行って帰ってくる。新しい依頼でしょうし……」

「管理官から伝えられる依頼は、危険人物、もしくは、それなりに大きな組織からの依頼である可能性が高い。例えば、ラトレイアーとかさ」

雪の隣で冴香は冷静に言った。

「忠告ありがと」

「ああ、じゃあな。また仕事で」

雪は小さく手を振って去って行った。

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