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魅力的な彼女がモテるのもうなずける。
氷室という彼女と同期入社の男の顔が浮かんだ途端、心の中にモヤモヤとした感情が芽生えるのが自分でもわかった。
「歓迎会を開いてもらったときに、あからさまに香椎さんに絡んでたわ。ふたりが仲良くなって付き合っちゃっても知らないからね」
「なにが言いたいんですか」
「恋にはタイミングも重要ってこと」
咄嗟にとぼけたけれど、伊地知さんとは付き合いが長いから本当はなにを言わんとしているのか見当がついていた。
もたもたしていたら氷室に先を越されるぞ、という警告だ。
「まるで俺が香椎さんを好きみたいじゃないですか」
「違うの?」
「……そうですけど」
ズバリ聞かれてしまい、逃げ場を失った俺は素直に認めた。照れた上でのことだとしても、彼女への気持ちを否定したくはなかったから。
はにかんで複雑な顔をする俺を見て、伊地知さんがニヤリとした笑みを浮かべる。
「香椎さんは思いやりがあっていい子だよね。朝陽くんがイケメンだってだけで近寄ってくるほかの女の子とは違うじゃない? 香椎さんのそういう部分に惹かれたんでしょう?」
「はい」
俺がなにも言わなくても全部お見通しだった。伊地知さんは普段から人をよく見ているし、きちんと他人の気持ちに寄り添えるところがすごい。
「大丈夫。私は朝陽くんを推しておいたわよ」
「ありがとうございます、先輩」
「その呼び方、懐かしい」
伊地知さんは俺にとっては何年経っても“先輩”で、色恋抜きで人間関係を築こうとしてくれる数少ない異性だ。頼りになる姉のような存在でもあり、それは出会ったころから変わらない。
「先輩は昔から世話焼きですけど、自分のことはどうなんですか?」
「私?」
「俺がアイツをけしかけておきますから、イエスかノーか、そろそろ答えを用意しておいてくださいね」
俺はあえて固有名詞は出さなかったが、誰のことを言ったのか伊地知さんはわかったはずだ。
その証拠に聞き返したり、とぼけたりはせず、視線を泳がせながら考え込んでいた。
数日後、本店でトラブルが起きた。
ゴルフウェアの展示の動線は俺も気になっていたため様子を見に行ったところ、マネキンが倒れて近くにいた女性客を驚かせてしまった場面に偶然居合わせた。
おそらく展示台の上に設置したマネキンのバランスが崩れて落ちたのだろう。
「最近アミュゾンが人気だって聞いたから来てみたのに、なんて店なのよ!」
マネキンは女性客の身体には当たらなかった。それは俺が自分の目で見ていたからたしかだ。
もちろん驚かせたのは申し訳なく思うが、怪我はしていないはずなのに、その女性客は対応した店長に罵声を浴びせていた。
「こちらの不手際でお客様を驚かせてご不快な思いをさせてしまいました。心よりお詫びいたします」
なんとか穏便に収めるために俺がていねいに頭を下げると、急に女性客が態度を軟化させた。とりあえずは事なきを得そうだ。
しかし、この女性を以前にどこかで見かけた気がするのだが、それがいつだったか思い出せない。
そんなふうに考え込んでいると、少し離れた場所にいた香椎さんが「百合菜」とその女性の名前を口にした。どうやら知り合いのようだ。
「冴実が私に謝るなんて、さぞかし屈辱だろうね」
謝罪をする香椎さんに対し、勝ち誇ったように言い放った女性客の言葉が引っかかった。いったいどういう意味なのだろう?
ふたりにはなにか因縁があるらしい。その証拠に、香椎さんは怯えるように小さく震えている。
「神谷さんは独身ですか?」
女性客が突然そう聞いてきたけれど、この質問を受けるのには慣れている。
鷹槻れん

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鷹槻れん

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コメント
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今回もじっくり読ませてもらいました。主人公が伊地知先輩に気持ちを認める流れが自然で、照れくさそうな「そうですけど」がすごく刺さりました。香椎さんの過去を知っていそうな女性客の登場で、今後の因縁が気になりますね。二人の関係にどう影響するのか…次が楽しみです。