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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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名刺が欲しいというので仕方なく渡したら、香椎さんがひどく心配そうな顔をしていた。
この女性があとでなにかしら連絡してくるつもりなのはこの時点で予想がつくけれど、そのときは秘書が対応するから気に止めなくていい。
ふたりは大学が同じで友達なのだと女性は主張したが、香椎さんはそれにひどく驚いていた。本当に友達なのだとしたらその反応はおかしい。
女性が帰り際に小さなメモを渡してきたけれど、これもよくあることだ。|友利《ともり》百合菜という名前が書かれてあるのが見えた。おそらくほかには携帯番号やメッセージアプリのIDが添えてあるのだろう。
相手が来店客というのもあり、カドが立たないように一応受け取るものの、俺から連絡する気は一切ない。
以前に俺がどこでこの女性を見かけたのか、あとになってようやく思い出した。
数ヶ月前、接待で訪れた店で彼女を見かけたことがある。同席の男や店員に当たり散らしていて、強く印象に残っていた。
そうだ、あのときの気の強い女性だ と記憶がよみがえってくる。
この日、外出先で仕事を済ませた俺は遅い時間になったが会社へ戻ることにした。
香椎さんはきっとまだ残業をしているだろう。責任感の強い彼女がケロリとしているはずがない。
コーヒーの差し入れを持って店舗運営部に赴くと、ひとりでパソコン画面を見つめてむずかしい顔をする彼女がいた。
「きちんと始末書を提出して自分への戒めにします」
がんばる女性は好きだ。だけど彼女は常に一生懸命で気を張りすぎていると思う。
それとも今回のことはあの女性客が絡んでいるのが理由で、今も泣きそうな顔になっているのだろうか。
「あのお客様と君は友達?」
「違います」
彼女は迷いなく即座に否定をした。どういうつもりか知らないが、やはりあの女性がウソをついたのだ。
「そんな顔をされたら抱きしめたくなるけど、会社の中じゃ無理だな」
涙目になっている彼女を目の前にしても、そう言葉をかけるので精一杯だった。
本当はギュッと抱きしめたかったけれど、彼女の気持ちが俺に向いていないなら単なるひとりよがりになる。
翌週の週末、朔也からサーフィンに誘われたものの、俺はキャンプに行きたいと言って断った。
朔也は潮の香りが好きでたまらないみたいだが、俺は山の綺麗な空気を吸って優雅にのんびりしたい。
一目惚れで昨年購入したキャンピングカーに乗り込んでエンジンをかける。
ゆっくりと車を走らせていると、川沿いの堤防にあるベンチに座る女性の姿がふと視界に入った。
その人物が香椎さんによく似ていた気がして、俺はわざわざ近くにあるコインパーキングに車を停めてそこへ向かった。
ここは祖父が通っている碁会所からもそう遠くないので、彼女がベンチに座っている可能性も大いにある。
たしかめに行ったところ、やはり見間違いではなかった。魂が抜けたようにぼうっと一点を見つめる香椎さんの姿がそこにあった。
声をかけると彼女は俺の顔を見て驚いていたが、リフレッシュしたくてここに来たのだと言う。
なんだか元気がない。笑みをたたえてはいるものの、どこかその表情が曇っている。
おそらくマネキンの始末書の件をまだ引きずっているのだろう。
コメント
1件
若葉さん、今回のお話もじわじわくる…!主人公の「会社じゃ抱きしめられない」って自制するところ、逆に切なくて好きだな。キャンピングカーで香椎さんを見つける偶然もドキっとしたし、あの友利さんって女性がなんだか不気味に絡んでくる感じ、続きがすごく気になるよ。穏やかなのに重なり合ってく距離感、大事に読んでる🌙