第2話『違和感の正体』(wkiside)
涼ちゃんが笑って「ぼくまたやっちゃった」って言う時、
俺は毎回、胸がズクンって痛む。
――またやっちゃった、の頻度が、増えてる。
前はただのうっかりだったのに、今は……なんか、違う。
鍵を冷蔵庫に入れてたり、
トイレの電気をつけっぱなしにしてたり、
テレビのリモコンを冷凍庫にしまってたり。
最初は、疲れてるだけだって思った。
でも最近の涼ちゃんは、明らかに“探してる時間”が長い。
自分が何をしようとしてたのか、どこに向かってたのか、
ふとした瞬間に、止まってしまう。
昨日なんて、俺の名前を言いかけて……数秒、止まってた。
「わ……わ……け、若井、ごめん、名前が出てこなくて」
涼ちゃんがそんなこと言うなんて、想像もしてなかった。
俺が笑って「俺のこと忘れるなんてショックだな〜」って茶化すと、
涼ちゃんも「やばいな、ほんと」と笑ってた。
でも、目は、笑ってなかった。
怖がってる。
きっと、自分がどうなってるのか、もうわかってるんだと思う。
けど言わない。
きっと、俺らに心配かけたくないんだろう。
だから、俺は――
ちゃんと気づいてあげたいと思った。
笑ってごまかす涼ちゃんに、ちゃんと向き合いたい。
どれだけ怖い真実でも、
俺は逃げたくない。
だって……あの人は、涼ちゃんなんだから。
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うがぁぁぁぁぁわかいさぁぁぁん