※2章ラスト!
「カービィ…!」
視界がぐらぐらと回っている。遠くからカエデの声が聞こえた気がした。
すり減った体力を押して立ち上がる。そこでワドルディの足元に青い星が転がっているのが見えて、今のぼくはすっぴんなのだと気がついた。
(まずい…!あそこまでは吸い込めない…走りに行くのも…難しいかな… )
視線が上がる。ワドルディの姿が目に入った。
その手には、開いたパラソルが握られている。
…反対の手に持った、ウォーターの能力星を隠すようにして。
何気なくまばたきをするのを合図に、それがこちらに投げられる。ぼくはそれを確認して、すぐに吸い込もうとする。
「…させない!」
リリルがさっきのスパーク弾を放った。ウォーターの能力星をめがけて、打ち砕こうとするように。それを見てぼくは、さらに吸い込みの力を強めた。リリルの攻撃が能力星に当たる前に、吸い込みたかった。
…けれどそれは、叶わない願いで。
スパーク弾は、リリルの狙い通り、能力星に当たる。青い星が割れる。スパークの黄色も砕ける。
(この、光景…どこかで見たことがあったような…)
思案している間も、ぼくはどうしてか吸い込みをやめなかった――やめられなかった。
二つの能力が引き寄せられる。ぼくの口の中へと向かっていく。
そうして飲み込んだとき、ようやくぼくは事のおかしさに気づいた。
(割れたはずの能力星…どうして吸い込めた?なんでこうも、星の形を保っている?)
思い出せない。二つの能力がぶつかって、それなのに一方が打ち消されない理由が。遠くで二つの力が混ざっていくのを感じながら、懸命に考える。
――混ざる…?
ひとつの心当たりが浮かんだ。
(そっか、今度は“これ”かぁ…!)
さっき、スパーク弾が当たったとき。ウォーターの能力星は割れたかのように見えたけれど、それは違った。
不定期的に、ぼくが使えるようになる特殊な能力。その内のひとつ、それが――
「ミックスコピー能力、“ウォータースパーク”!」
全身に湧き上がってきた力を具現化するみたいに、大きなエネルギーを生成していく。たぷたぷと水の揺れる音、それにまとわりつく雷の音。
「せいやっ!」
雷をまとった大きな水の塊を、リリルめがけてぶん投げる。突然のことで驚いたのか、リリルは避けきれずに被弾する。
「すごい…っス、カービィさん!まさかウォーターとスパークを、ミックスしちゃうなんて…!」
「なん…だ、これ…ウチが、しびれてる…!?」
信じられない、とでも言うような表情。
ぼくらに、勝機が見えてきた。
「一気に決めるよ、ワドルディ!」
「はい!“パラソルダイブ”!」
天井スレスレまで高く飛びあがったワドルディが、パラソルの先を向けて急降下する。リリルはかろうじて、それを避けた。まださっきのしびれが、残っているらしい。
「いまだっ!」
巨大な球を、体勢の悪いリリルへ投げつける。それも避けられたが、顔はもう苦しげだ。それに――
「キミが避けるのは…想定内だよ!」
「…っ!?」
ゆらぐ水の向こう側に、紅白のパラソルが見えた。
「…っ…“だいどうげいなげ”っっ!!!」
いつもの星型弾よりも重量のある水球を、パラソルで受け止めて投げ返す。予想外の反撃と僅かな体力、それらが合わさってリリルはもう避けられない。
真正面から喰らった攻撃が決め手となって、ぼくたちの勝ちが決まった。
「くっ…そ、負けた…なんだよ、さっきのウチ、恥ずかしすぎじゃん…」
「えっ?そ、それは…」
「相手の強さが分かんないのなら、まだウチは未熟だってこと。…あいつなら絶対、そんなことはしないのにさ」
「…そっか」
カエデとリリルが何を話しているのかは分からない。けれど、
「ぼくたち、ちゃんと強かったでしょ?」
「…ああ。そうだな!」
これから仲良くなれそうだってことは、分かった。
「…カービィ、だったっけか。…もしそっちさえ良ければなんだけど…ウチも、連れてってほしい。ウチ以外にも、まだ捜さないといけないやつがいるんだ。だから、ってわけじゃないけど…」
「もちろん!最後まで付き合うつもりだよ!」
「へへ…ありがとな」
照れくさそうなリリルと向き合って、ぼくたちは笑う。
一歩進んだ冒険の道のりは、まだまだ長く続いていた。
おまけ1 カエデとリリル
「…ねえ、リリル」
「ん?」
「…さっきの戦い、かっこよかったよ」
「…ん」
おまけ2 一方そのころ
「あたしたちの出番…ないね」
「しょうがないだろ、ワドルディの目立った活躍、ここまでなんだからよ」
「…ワドルディさん、なんかごめんなさい…」
おまけ3 キャラ紹介
リリル
オリキャラ。楽園を目指して旅をする一族の少年。魔力量は平均的。カービィの“スパーク”や“プラズマ”のような力を使う。
“黒い影”にやられたあと、何とかホロビタスターの遺跡に逃げ込む。そのまま隠れていたが、カービィたちと出会い、戦ったあとで仲間になった。
一人称は「ウチ」だが関西弁は話さない。
旧デザインだとグレーのパーカーと黒の ヘッドホンを身につけていた。 名前は語感を重視して決めた(つまり適当)。由来を考えるとするなら「ビリビリする」から…?
リリル「ちなみに前の設定だとどんな奴だったんだろ…」
作者「足が速い引きこもりのゲーマー」
あとがき
投稿ペースやけに早い気がするフジミヤです!
病院の待ち時間に書いてましたw
また次回からはいつものペースに戻ると思われます…
そしてグレゾ待っててくださったみなさん、本当にお待たせしました…!今回のはかなり不穏ですよ…
こちらの次回からは、3章に突入します!YouTubeのコミュニティを見てくださってる方なら、15話で何が起こるかお分かりですよね…?
それではまた次回!
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