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「パーティ戦?何ですか、それ?」

レビンは男達の言っている意味がわからなくて、隣にいた昨日の男性職員に聞いた。

「色んなモノがあるのですが、簡単にいうと決闘のようなものです」

この男性職員のお陰で、レビン達に有利な裁定が降されたのだった。職員同士の話し合いの時に、レビン達の事を他の職員に伝えただけだが、リチャードに信頼されているという事はそういう事だ。

「決闘ですか…内容は?」

レビンも決闘という言葉自体は知っている。貴族同士で揉めた時に代理人を出して戦わせるというくらいだが。

「パーティメンバーの総力戦です。武器ありや魔法なしなど取り決めはその時に決めます。

元々は単純な力比べや、冒険者達の能力の向上の為の制度だったのですが、いまではそれは形骸化されてしまっていて、貴族の決闘と同じ意味合いで使われます」

「僕達に全くメリットが感じられないのですが…」

「一応報酬というか、賭け金は挑まれた方に決定権があります」

そんなものかぁ。とレビンは思った。

しかし、それを聞いてやる気になっている人物がいた。

「受けるわよ」

「「は?」」

何故か職員と声がハモるレビンだった。



ここはギルドが管理している街中の空き地(資材置き場)である。

ここに10人ほどの人が集まっていた。

「では、これよりパーティ戦を始める。ルールは武器なし魔法なしである。勝敗は気を失うなど、戦闘不能とこちらが判断した場合と、降参の意思のみである。

又、勝った者に負けた者は謝罪と金貨100枚を渡す事。払えない場合は持っている物全てを売り払い、それでも足りない場合はこれからの報酬で支払う事。

以上。相違ないか?」

ギルド職員の言葉に

「ないわ」

「ねーよ」

双方が答えた。

(ミルキィが怒ってる…それも今までに見た事がないくらいに…)

レビンはビビっていた。仲間に。

レビンが冒険者になると言った時も怒ってはいたが、怒りよりも悲しみのほうが大きかった事をレビンは知っていた。

あの時より大きな怒りに、レビンは……

(頼むから殺さないでね…)

四人の安否を願った。

何故、レビンがここまで余裕かというと、相手の四人がそれぞれ自分達のレベル(強さ)を自慢して来ていたからだ。

レビン達を鉄ランクだと決めつけていて、萎縮させようとしたのかもしれないが、結果は反対であった。

通常銅ランクへはレベル10あれば間違いなくなれる。

銀ランクは今のところ不明だが、恐らく30以下だろう。

男達はそれぞれ14・13・13・12レベルだった。

ミルキィのレベルは33だが、ステータス(身体能力値)の伸びはおよそ半分。つまり16か17レベル相当である。

これだけあれば危うそうではあるが、レビンがそうはさせない。

させるつもりはない。

レビンの心配は、自分が抑えた相手をミルキィが必要以上に攻撃しないかだけである。

そして、戦いの火蓋は切って落とされた。

「始め!」

レビンは職員の声と共に走り出し、男達に肉薄した。

(まずは左の人から!)

レビンの拳が男の鳩尾に刺さる。

ボグッ

鈍い音と共に男が2メートルほど吹き飛び、そのまま動かなくなる。

レビンはそれを確認もせずに右方へと身体を向けて、その遠心力を利用しながらの蹴りを別の男に放つ。

レビンの身長より20センチは高い190cmくらいの男の脛付近に蹴りが当たった。

丁度足払いの様になり、大男はその巨体を宙に投げ出した。

(今だ!)

空中では、人はあまり動けない。

レビンは足払い後の中腰の状態から片足だけで飛び跳ねると、軸足を一回転させて男の腹部に突き立てる。

ドガッ

空中からレビンの蹴りにより地面に男が叩きつけられる。そして、その音が辺りに響いた。

(ミルキィが一人を無難に相手しているな…もう一人は……ミルキィの背後を取るつもりだな!)

どうやら向こうは最初から2対1になるように役割分担をしていたようだ。腐っても冒険者パーティ、ある程度の修羅場は潜って来ていたようだが…理不尽な暴力がその身に降り掛かろうとは今も思っていないだろう。

未だに仲間がやられたことに気付かない二人は、ミルキィを囲みに掛かった。

「後ろがガラぶへぇあっ!?」

ミルキィに後ろから襲い掛かろうとした男の顔に、高速で迫って来ていたレビンの飛び膝蹴りが刺さった。

「レビン。ありがとう」

「お、お前は!?アイツらをどうした!?」

ミルキィは満面の笑みを浮かべて迎え入れ、男は驚愕のあまり現実を迎え入れられなかった。

周りには無惨にも倒れている仲間。

「こ、こんなガキにやられるはずがねぇ!!おいっ!審判!このガキは何かズルをしているぞ!!」

「していない。この者の実力だ」

試合…決闘中にも関わらず、男は外野へと言葉を投げかけた。審判と呼ばれたギルド職員の男性は、男の嘆願をにべもなく切り捨てた。

「嘘だ!ありえるわけねーだろ!」

尚も男は信じられないと声を荒げる。

「銀ランクと銅ランクなら当然の結果だろう」

「銅ランクの俺達と鉄ランクのコイツらのことだよ!馬鹿か!?」

「だからいっているだろう?銅ランクのお前達と銀ランクの二人の事だ」

男は審判の言っている言葉の意味が理解できなかった。

「は…?銀?えっ…?どういうことだ?」

「続けても良いかしら?」

男が非現実的な現状を受け入れられずパニックになっているところに、ミルキィが銀色のタグをチラつかせながら話しかけた。

「えっ?ぎ、銀のタグ!?」

「そーいうことよ。えいっ!」

パニックになった男の股間に、ミルキィの蹴りが可愛らしい声と共に刺さった。行動は全く可愛げはないが……

ボコッ

「がっ…がはっ!?」

男は声も出せず、泡を吐き悶えた。

「勝負アリ!勝者、血の盟約!」

決闘は呆気なく終わりを迎えた。



ギルドに戻ってきた二人は時間が昼前になってしまった為、今日の依頼しごとは断念することにした。

勝者の報酬だが、スッキリしたミルキィが男達の謝罪は断った為、後は金貨のみだ。

その金貨は、トラブル防止の為にギルドが仲介してくれる事になっていた。

初めは不必要な仕事を増やして申し訳ないと二人は思っていたが、職員の男がこうした事も仕事の内で、自分達の給料は冒険者が依頼を達成したり成果物を納品したりしてくれているお陰で出せているのだから大いに利用してくれ。と伝えた為、二人は気兼ねなく利用させてもらった。

「お待たせしました。こちらへどうぞ」

いつもの如くカウンター前の長椅子に仲良く腰掛けていた二人は、職員に連れられて別室へと向かうことに。

その部屋は6畳程の広さで、椅子とテーブルがあるだけであった。

職員に促されて椅子へと腰を下ろした二人に、その職員の男性が話しを始めた。

「目覚めましたよ」

その言葉にホッとするレビン。ミルキィは自業自得だと思っている為、どうでもいいといった感じだ。

「お金ですが、丁度大きな買い物をする予定だったようで、金貨70枚ありました。残りは他の職員が装備などを売りに向かったので、暫くすれば集まると思います。とりあえず金貨70枚です。お確かめください」

そう伝えた後、袋を差し出してきた。

レビンは硬貨を袋から出して数えやすいようにテーブルへと並べながら尋ねる。

「高価な買い物ってなんだったんです?」

特に何の気もなく聞いただけだったが、二人には思いもよらなかったモノだったので、驚く事となった。




レベル

レビン:7(40)

ミルキィ:33

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