onkn / rchnk
学パロ??
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「ふあ、…だる」
誰も居ない空き教室。
外は風が吹いていて、木々が大きく揺れていた。
身体が凍りそうな気温なのに、もう五時過ぎ。
辺りは暗く、どんどん温度も下がっていき、吐き出された息だけが暖を取る方法だった。
家に帰ってもやることないし、暇。
特技というものは無いし、趣味もない。
クラスメイトの前で繕ったナルシストキャラだけが自分の 個性と言えるものだった。
でも一人でいればそんなものは出ない。
気を使わなくていいと言えばそうだけど、何も無くなるのも少し心地が悪い。
自分のことが嫌いな訳ではないんだけど。
最初は課題でも終わらせようと思ったが、気が出なくてすぐ辞めた。
提出日まだまだ先だし。
机に座ったり、椅子に立ったり色々したけど、疲れ果てて最終的には床に寝っ転がった。
埃だとか、汚いとかどうでもよかった。
「は、…え?」
もう寝てやろうかな、と考えた矢先。
ドアがガラガラ、と音を立てて開いた。
古い教室。
「失礼しまーす」
聞いた事のない声。
多少気だるげな、でも幼い声だった。
慌てて上半身を起こして、ドアの方に目線を向けた。
「あ、こんにちは」
「ああ、…どうも、」
目が合うと少し驚いたような顔で、挨拶を投げ出してきた。
急な出来事すぎて、返しがたどたどしくなってしまう。
「こんなとこで何してんの?」
「暇つぶし。君は?」
「絵の具置きに来た」
成程。
ここは元々美術室。
今は他の新しい教室が用意され、
生徒の絵の具や授業で使う小物が並べられている。 簡単に言えば物置。
初対面でタメ口か?と一瞬よぎったけど、学年ごとに色で分けられている校章で同学年だと理解した。
人数が多い学校だから、同学年でも顔すら知らない奴なんて腐るほどいる。
その一人がこいつって事。
今更絵の具置きに来たってことはもしかして授業バックれたな?
新学期になって一ヶ月はたった。その中に美術の授業が一回もないなんて馬鹿げた話。
授業に使うものは内容関係なくすぐ持ってくるように言われているから、あまり人の言うこととか聞くタイプじゃないんだろうな。
挨拶からして悪いやつじゃないけど、
結構問題児なのかも。
「授業バックれたの?」
「え、あー、笑…まあね」
言葉を選ばず直接的に聞くと、苦笑いしながら軽く肯定してきた。
悪気なさそうだな。少しも。
「てか初めて会ったね、何組?」
「一組」
「へえ、生徒指導クラスじゃん」
「担任が生徒指導担当なだけだけどな」
「もしかして問題児?」
こいつだけには言われたくない。
提出日は一応守ってはいる。
答え写す写さないは別としてだけれど。
「君は?何組なの?」
まあこの辺りで聞き返しとくのがいいだろう。
社交辞令…とまでいかないけど。
「俺五組」
「へえー、…そうなんだ」
いや地味に返し方困るな。
「部活は?行ってないの?」
気まずさに耐えられずそう零した。
でも普通に気になりはした。
今日は文化部は文化祭の準備で、とてもじゃないけれど抜け出せる環境じゃない。
運動部だって大抵は大会が近い。
って皆教室で騒いでた。
「ないよ、転校してきたばっかだもん」
「え?」
「お?」
確かに転校生が来た、とは騒いでいた。
でも階が違うし、あんまりそういうのには興味が無いから、スルーしていた。
今まで見てこなかったのも当然だ。
というか、転校生で授業バックれるの強すぎだろ。
「うっ…、んー、」
「っ…笑、」
絵の具をしまうはずなのだが、どうやら身長が足りないようだった。
背伸びした姿がなんだか可愛かった。
「…はい、」
横まで行って、絵の具を手に取り、代わりにしまってやった。
見捨てるほどクズじゃないし。
「お、イケメンじゃんありがと」
「え、あ…はい、」
何故か身体が固まった。
普段なら肯定するのが自分の流れなのに。
「…、」
…。流れる沈黙。
なんでこいつまだここにいるんだよ。
え?何怖い。
「帰んないの?」
「帰って欲しいの?」
途端に発した言葉が、上手く利用されてしまう。
いやいやいや。
返し方くっそ困るんだけど。
相手が自分より身長が低い為、上目遣いになってちょっと焦った。
落ち着け、相手は男だ。
しかも距離が近い。
少し動けば身体の何処かは当たってしまいそうなレベル。
「帰ってほし…い訳では無いけど、」
「じゃあまだここ居ようかなー」
「あ、はい…」
そう言った後、転校生はくるくると身体を遠心力を使って回し、やがて机に腰かけた。
自由なやつだなあ。
「ねね、」
「ん?…うおっ、」
転校生は風に揺られている木々を退屈そうに眺めた後、俺を呼び止めた。
深く考えずに顔を向けると、首元に何かを巻き付けられた。
マフラー。
ふわふわとしていて、温かい。
「え、あの…、」
温かさに浸っていると、手に感触があった。
視線を向けるとそこには彼の手。
来たばかりだから温かい。
優しく両手で包むかのように握られる。
「あはは、冷た」
相手の目線は俺の手。
伏し目になった綺麗な顔と、その状況。
顔が赤くなっていくのがわかった。
無意識なのか…?
こいつならこれから先いくらでもモテそうだ。
なんか悔しいな。
悔しい感情に二つあったのは無視した。
「ねえ連絡先教えて?」
「え、…あ、いいよ」
スマホのQRコードを画面に映す。
相手はそれを読みとり、よろしく、と文面を送ってきた。
既読で返し、スマホを閉じた。
「ニキくんって言うんだねよろしく!」
教室は暗い。
けどその笑顔が眩しくて、目が痛い。
彼の名前は、イニシャルのみになっていて、名前がわからなかった。
「あ、俺そろそろ行こうかな」
「あ、っ…と、」
言葉が詰まる。寂しい。
「じゃあね、また明日」
「う…ええ、!?」
別れを伝えた瞬間に抱きついてきた。
彼はぐりぐり、と顔を沈めた後、手を大きく振って外に消えていった。
ガラガラと音を立てたドアが静まる。
俺も帰ろうかな。
立ち上がると、忘れていったのだろうか。
生徒手帳が落ちていた。
明日届けに行くか、と拾って、興味本位で中身を見た。
やっぱ転校してきてすぐだから、何も書いていない。
「ん?」
後ろのカードホルダーに、一枚写真が入っていた。
好奇心に勝てず、引き抜いて写真を見た。
そこに写ってたのは、幼い彼。
そして、幼かった頃の俺。
二人マフラーを巻いて、雪遊びをしていた。
衝撃の現実に固まっていると、再びドアが音を立てて開いた。
「生徒手帳落ちてないー?」
さっきの彼。
急に雪が降ったのか、少し氷の粒が身体についていた。
「え、あ」
「あ!これ!ありがとう!」
そうして俺の手から生徒手帳と写真を引き抜いた。
丁寧にしまって、俺の目を見る。
そして、 俺の首に巻かれたマフラーに触れ、 優しく笑った。
「久しぶり」
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私がonknと出会った時も、教室で一人暇つぶしてたら初対面の子が教えてくれました。
多分寒い時期だった。多分。
コメント
6件
初コメ失礼します! あの天才すぎませんか… りいちょくんの子供っぽいのに余裕ある感じの雰囲気好きです!! 今日作品全部見たんですけど神すぎました😇
投稿ありがとうこざいます、毎回ストーリーが素晴らしくて食い入るように見ちゃいますいつものように年齢差もいいけど同年代もいいですよね
タイトルってそういう意味なんですね…読んでる間はあれ?初対面??これ過去の話?ってなってたけど全てを理解しました🥹✨