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「どう、そっちは?」

「大丈夫ですけど、、これ私よりあなた方の方がいいのでは?」

今私はチャイナ服を見に纏い、中華街に潜入任務をしている最中だ。イヤホンから聞こえる彼たちの声に少し気持ちはいつも通りに戻るがあまりにも環境が通常でないため緊張とまでは言わないが違和感を覚える。それは、格好も含めだ。

「考えてみて、凪ちゃん。奏斗と雲雀は中華服着たことないよ。でも凪ちゃんはあるし一応そういうお店で働いてたこともあるでしょ?」

私は考える。

「そしてたとえば俺がそっちに行ったとしても、身長186cmの男がチャイナ服着てたら普通は身長が高すぎておかしいって思われるんよ」

「私が確かに間違ってました」

「まぁとは言ってもこっちもこっちで仕事してるから安心してね」

これはとあるお偉いさんからの任務。中華街にあるいくつかの店が隠し持っている情報を引き抜いて欲しいとのこと。しかしそのためには原始的な鍵を開けなければならないのだが、窓もなく入れる扉は店の中からの1つの扉だけ。しかもパソコンでハッキングできる類ではなく、鍵穴なのでややこしいのだ。しかも鍵穴は鍵穴で解除がしにくいやつで鍵があればいいのだが、、と言った感じだ。

「とりあえず鍵ゲット頼んだ〜」

「待て、そこに関してはマジでたらいの方が良くないか、私本職が諜報員だって知ってる?怪盗じゃないって」

「でもその鍵は結構厳重なんだって。お店の人の中でもお偉いさんだけしか入れないようなところに閉まってるんだって。だから、ね?」

「うげぇ、めんどくせぇ」

私は心の底からこんな任務受けなきゃよかったと感じた。

「頼んだよ、凪ちゃん」

「お前に頼られたらなんも言えねえわ。任せとけってセラ夫」


数十分後

「報告。バレた」

「何バカやってんの?は?」

侵入して辺りの様子を伺っているとイヤホンからそんな声がした。

「あの、普通に鍵取ろうとしたらね私思った、今右目見えないんだって」

「何?お前ってそんなミスる諜報員だったっけ?お前元・凄腕諜報員名乗んな」

「いやーミスったミスった」

「はぁ、で大丈夫そ?」

「この状態で大丈夫だと思うんだったらお前の価値観バグってる」

焦っている状態のはずなのに、それでもいつもの声でいつもの口調でいつもみたいに会話するのはなんとなく心地よかった。

「動く任務にしては相性最悪の服着てるんだよ今」

そうだ、凪ちゃんは今チャイナ服を着ている。しかもダボっとしたタイプのやつ。俺的には動きが見えないので好きだが、凪ちゃんはピタッとしたやつの方が動きやすいらしい。

「何かあったら呼ぶんだよぉ。傷つく前にね」

俺とて何も仕事をしてないわけではない。凪ちゃんの隣の店で同じく情報を引き抜いている最中だが、凪ちゃんの身に危険があるのならすぐに飛び出せる。ちなみにだが俺は和服を着ている。サイズの中華服がなかったもんで。

「ん?大丈夫だ、お前ならイヤホンが壊されて音信不通になったって、私の身に何かあったら駆けつけてくれるんだろう?」

この男はどれほどまでに俺という人間を信用してるのだろうか。俺は超能力者でもない、彼の危険を察知できる機械でもない、ただの人間であることを忘れてでもいるのだろうか。でも、なんでだか俺は嬉しくて微笑んだ。

「ふふっ」

「何笑ってんだこの野郎」

俺は彼の期待に応えられるかは不明だが、謎に俺は思ってしまった。凪ちゃんの危険はなんでかわかってしまうんだなと。


「くっそ、人多くないですかね?」

今私は囲まれている。黒服を着たTHE護衛みたいな人たち。全員180は超えてそうな大男だが、常に186cmの大男を見てるためそこまで怖くはなかった。しかし、彼らが持っている銃たちに目がいってしまう。今セラ夫に連絡できる状態ではない、先ほど何も言わなくてもセラ夫は私の危険に察して駆けつけてくれると言っていたがあれは半分冗談で半分真実だ。実際彼が何度か私の身の危険の際に駆けつけてくれたことはあったが毎回ではない。今回はそうかもしれないしそうじゃないかもしれない。

「とりあえず。粘ってやんよ」

セラフ・ダズルガーデンという男のせいで私は貧弱で小さく弱く見られがちだが勘違いしないでいただきたい。これでも諜報員、裏社会出身。ある程度の護身術は習ってきた。その護身術だけでは暗殺を生業にしていたセラフに勝てなかったわけだが。

しかしこの多さは難しい。しかも全員ガタイがよく、セラフを少しだけ弱体化して人数多くした感じだ、わかりやすくすると。

どうしようか、そう頭を動かしていると窓から赤い光が差し込んできた。私は窓に背中を向けた。男たちは窓の正面、私の正面に立ち私に殴りかかろうとしていた。その瞬間私は下に避けた。普通の護衛なら下に殴り込んできそうだが私の頭に手がぶつかることはなかった。

「大きなワンコちゃんでしょう?」

悪役かのように私が上を向けば私の目の前には男たちを蹴り倒しているセラ夫の姿があった。

「わん」

彼が私の言葉に乗りわんと喋るが男たちからするとかわいくもなくただの恐怖の対象だろう。そして瞬殺という言葉がとても似合うほどにすぐに彼以外立っていない状態になった。

「さすが私のエージェント」

「あのねぇ、俺が来なかったらどうするつもりだったわけ」

「でも、あなたがきたから大丈夫でしょう?」

セラ夫は飽きれるようにため息をついた。

「そうだけど、俺はいつまでも君の危険を察知して駆けつけられるわけじゃないの。少しは自分の身を守って。俺、君を失いたくないんだよ」

私の右側にある右目を隠している髪を拾い上げて彼は言った。そうだ、彼の言っていることは正しい。私は何も言えなかった。

「俺は君に怪我してほしくない、死んでほしくない。ねぇ、自分を守れるようになって」

彼のその瞳は私の心が痛むくらいに悲しそうで寂しそうだった。

「大丈夫ですよ、私はあなたを一人にしないから」

そう私は彼の左の頬を触れた。彼は私のことを想ってくれているという事実に口角が上がりそうだった。

「、、約束ね」

彼の目は長い前髪で見えない。でも見えなくてよかった、と思った。きっと彼は泣いている。私は彼の頬に伝っている涙を拭き取る。

そんなに心配をしなくたって、私は彼から離れない。一生物の、相棒だから。

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