テラーノベル
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文化祭も試験も過ぎ、季節は冬。
あのざわつきも、嫉妬も、不安も
――すべてを乗り越えて、
今はただ隣にいる若井の温もりが心を支えていた。
ある日の放課後、俺と若井は校舎裏に座って、
吐く息の白さを見上げていた。
「なあ、元貴」
「ん?」
「俺……お前と
こうしていられるのが、本当に幸せ」
不意打ちみたいな言葉に、胸がじんわり熱くなる。
これまでずっと自分の気持ちを
飲み込んで、泣いて、迷って、やっと掴んだ今。
俺も勇気を出して言葉を重ねた。
「俺もだよ。……若井のこと、大好き」
そう告げると、若井が
子どもみたいに笑って抱きしめてきた。
強く、でも優しく。
俺がもう泣かなくていいように。
そこへ、ふいに金色の髪が視界に揺れた。
「やれやれ、やっと素直になったみたいだね」
藤澤先輩――いや、涼ちゃんが柔らかく笑っていた。
「元貴、若井。僕はふたりを応援してるから」
「涼ちゃん……」
「……ありがとな」
寂しさを含んだ微笑みなのに、不思議と温かい。
俺たちの背中を押してくれるような優しさだった。
その日の帰り道。
手を繋いだまま、誰もいない道を歩く。
少し冷たい風の中で、繋いだ手だけは熱かった。
「なあ、若井」
「ん?」
「俺たち、これからもずっと一緒にいよう」
「……当たり前だろ」
若井はその場で立ち止まって、
真っ直ぐに俺を見つめる。
そしてためらわず、唇を重ねてきた。
世界のざわめきなんて、もうどうでもよかった。
涙も、嫉妬も、不安も。
ぜんぶ抱えたうえで、俺たちは選んだ。
――大切な人と、大切な日々を。
金色の光に見守られながら、
俺と若井は笑い合い、
ただ「幸せ」を信じて歩き出した。
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