5月19日、午後10時過ぎ。
新曲の収録を終え、そのあと滉斗やスタッフに誕生日をお祝いしてもらった涼ちゃん。
打ち上げもほどほどに切り上げて、
ふたりきりで帰ってきたのは、元貴の部屋だった。
「誕生日、おめでとう。涼ちゃん」
元貴が冷蔵庫から取り出したのは、
直径15cmほどの小さなホールケーキ。
真っ白な生クリームにいちごが乗っていて、
チョコレートプレートには、
「Ryouka Happy Birthday」の文字。
「……わざわざ、用意してくれてたの?」
「当たり前じゃん」
テーブルにキャンドルを灯して、ふたりで並んで座る。
どちらからともなく笑い合い、
静かにグラスを合わせたあと、元貴が言った。
「ね、せっかくだから……俺が食べさせていい?」
「え、いいの? 逆じゃない? 俺が食べさせるんじゃ――」
「誕生日くらい、甘えてよ。
今日は涼ちゃんが“される”日なんだから」
その“される”という言い方に、
涼ちゃんは一瞬だけ目を伏せた。
けれど、頷いてスプーンを差し出す。
元貴が小さくカットしたケーキをすくって、
涼ちゃんの口元へ運ぶ。
「……あーん」
「……はい」
スプーンを咥える涼ちゃんの唇に、
クリームが、ほんのすこしだけ残った。
それを見た瞬間――
元貴の目が、ゆっくりと、艶を帯びる。
「……ん、涼ちゃん」
「ん?」
「……ちょっと、ついてる」
そう言って、元貴が身を乗り出した。
涼ちゃんが反応する前に、
その唇の端に残っていた生クリームを、
ぬるりと、舌で舐めとった。
「ん……、甘い」
一瞬、涼ちゃんの目が見開かれる。
けれど、元貴はそのまま――
舌を引かず、唇をなぞり、
そして――そのまま唇を重ねた。
深く、熱く、甘く。
ケーキの甘さと、涼ちゃんの体温が溶け合っていく。
「……ん、っ……もとき……」
涼ちゃんが小さく呼吸を震わせる。
それを合図にするように、
元貴はさらに深く舌を滑り込ませた。
舌先が絡まり、喉の奥にまで熱が流れ込む。
ソファのクッションが軋むほど、身を寄せ合いながら――
「……ねぇ、涼ちゃん」
キスの合間に、唇が離れた瞬間。
元貴が、耳元で囁いた。
「このまま、身体の上にクリームのせて舐めたら……どうなるんだろうね」
涼ちゃんの頬が、ろうそくの灯りより赤く染まった。
コメント
2件
どうなるんだァァァァァァ←