テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
涼ちゃんは、ソファにゆっくりと背を預けた。首筋までほんのり赤く染めて、少し息を弾ませている。
目の前には、まだ半分以上残ったホールケーキ。
けれどもう、それを口にする理由なんて、どこにもなかった。
元貴がナイフで、小さな三角を切り取る。
スポンジの柔らかさと、
とろりとしたホイップがナイフに絡みつく。
「……動かないで」
そう言って、元貴はそのケーキを直接手に持ったまま、
涼ちゃんのほうへゆっくり膝をついた。
シャツの前を、ボタンひとつ分外す。
さらりと開いた鎖骨のラインに、
小さくカットしたケーキを、そっとつけた。
「え……ちょ、元貴……そこに……?」
「んふふ、さっき言ったでしょ?
“このまま、身体の上にクリームのせて舐めたらどうなるか”って」
そして、そのまま。
舌を出し、涼ちゃんの鎖骨をなぞるように――
ケーキのクリームと果汁、
肌の塩気、甘さと温度。
全てを絡め取るように、ゆっくりと、ねっとりと舐めとっていく。
「っ……あ、元貴、それ……くすぐった……っ」
涼ちゃんは小さく震えながらも、逃げなかった。
目を伏せて、ただ、唇を結び、
身体の奥で何かが熱を帯びていくのを感じていた。
「次は……ここ、ね」
元貴の指が、涼ちゃんの胸元をゆっくり撫でる。
シャツの間から、うっすら見えた突起の上に、
クリームをすくって、ちょんとのせた。
「っ、元貴……それ、やば――」
「しーっ……喋んないで。
涼ちゃんは今、ケーキのお皿だから」
そのまま、舌を近づける。
ぷるりと震えた突起の上に、
温かな舌が触れた瞬間――
涼ちゃんの背がびくりと反った。
「っ……く……あ……」
「ほら、甘い。
涼ちゃんの肌にのったクリーム……
俺、毎年これ食べたいかも」
言葉が終わる前に、
元貴の舌は、右胸から左胸へ、
クリームをなぞりながら、何度も執拗に円を描く。
舌の裏、先端、唇――
あらゆる感触が、突起を起点に身体中を震わせていく。
「ん、ぁ……もとき、やばい……
ずっと、ぞくぞくして……っ、息が……」
「ねぇ、涼ちゃん。
このクリーム、もっと下にのせたら……どんな声、出す?」
――その問いに、涼ちゃんは返事をしなかった。
ただ、視線の先で、
元貴がケーキをもうひとすくいして、
自分の下腹部に指を伸ばしてくるのを、
目を逸らせずに、見ていた。