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メルク(ハーフエルフ)が窓の外を見ている。
いったい何を見ているんだろう。
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)が彼女の元に行くと彼女は彼を抱き上げた。
「おい、これはいったい何のつもりだ?」
「いや、まあ、ナオトさんは今日も可愛いなーと思いまして」
「なんだよ、それ。というか、早く離してくれ」
「嫌《いや》です! 離したくありません!」
「それは勘弁してほしいなー。あー、それと、窓の外に何かあるのか? ずっと見てただろ?」
「あー、それですか」
彼女はそう言いながら、俺を解放した。
「まあ、その……なんというか……寂しがり屋のモンスターが誰かの気を引くために雨を降らせているみたいなんですよねー」
「何? それは本当か?」
「はい、本当です。どんなモンスターなのかは分かりませんけど」
「そうか。ということは、そいつをどうにかしないとこの雨は止まないってことだな?」
彼女はコクリと頷《うなず》く。
「まあ、そういうことになりますねー」
「よし、じゃあ、ちょっと行ってくる」
「それはダメです」
彼女は彼の行く手を阻《はば》んだ。
「どうしてだよ。ちょっと話をしに行くだけだぞ?」
「話が通じない相手だったら、どうするんですか? 戦うんですか?」
「まあ、そうなるな」
「それはいけませんね。いくらナオトさんでも戦う相手のことを何も知らない状態で挑んだら、ほぼ確実に負けてしまいます」
「そんなことやってみなくちゃ分からな……」
「分かりますよ。例の大会での一件がありますからね」
例の大会。
『ケンカ戦国チャンピオンシップ』。
俺は無茶に無茶を重ねて、ようやく勝利を得ることができた。
『オメガ・レジェンド』との戦いで俺は初めて暴走してしまった。
あんなことは二度と起こしてはならない。
みんなが悲しむから。
「そう……だな。えっと、その……ありがとな。止めてくれて」
「礼には及びませんよ。私もナオトさんと同じことをしようとしていましたから」
「そうなのか?」
「はい、そうです。でも、ナオトさんの顔を見たら、その気は失せました」
「どうしてだ?」
「それは私がいなくなったら、少なくともナオトさんが悲しんでしまうからです」
「そりゃそうだろ。俺の体は化け物でも心はまだ人間なんだから」
「その言葉が聞けて良かったです。えっと、例のモンスターはもうすぐおとなしくなると思いますので、もう少し待ってください」
「分かった」
彼がその場を離れようとした時、彼女は後ろから彼を抱きしめた。
「なんだよ」
「いえ、ただこうしたかっただけです」
「そうか」
「はい」
あなたに名付けてもらった時から、私はずっとあなたのことが大好きです。
なので、せめて私の命が尽きるまで、そばにいてくださいね。
彼女の願いが叶うかどうかは分からない。
しかし、それは絶対に叶わない願いではない。
叶うといいな、その願い。