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6月の夢路
風が静かに吹き抜けた。
7人は、長い旅の果てに、元の場所――あの古びた校舎の屋上に戻ってきていた。
けれど、もう何もかもが以前とは違って見えた。
そこにあったのは、ただの景色ではない。
繋がった絆、乗り越えた試練、そして――忘れられていた真実。
Akiraはゆっくりと目を閉じ、語り始めた。
「思い出したんだ。全部」
かつて、7人は“もうひとつの現実”に触れていた。
忘れ去られた記憶。
それは、幼い頃に一緒に過ごしたある夏の記憶だった。
ある事故をきっかけに、Akiraだけが姿を消し、6人の中からその存在がごっそりと抜け落ちた。
まるで最初からいなかったように。
けれど、心のどこかでは皆が違和感を抱えていた。
「何かを、誰かを、忘れている」
その欠けたピースを埋めるための旅が、今回の“夢路”だったのだ。
「僕の名前を、思い出してくれてありがとう」
Akiraは穏やかな声で言った。
「それが、僕の願いだった」
nakamuが静かに言う。
「忘れたのは俺たちのせいじゃない。けど……忘れたままでいなくてよかった」
broooockもゆっくりとうなずく。
「俺たちは、ずっと探してたんだ。お前がいない理由を、心の中でずっと」
きりやんの言葉が続く。
「記憶は薄れても、想いは消えなかった」
「だから、俺たちはここに来られたんだ」
静かに陽が昇っていく。
7人は、ようやく完全な形になった。
失われていた時間も、傷ついた記憶も、すべてを受け入れて――今ここに立っている。
「この世界は、俺たちの現実だ」
スマイルの声が、風に乗って消えていった。
「ねえ、気づいてましたか?」
「この世界、全部僕が作ったんですよ、」
「彼らには言いませんでした。
言わない方が、美しいと思ったからです。」
「でも、君には教えておきます。」
「彼らが流した涙も、交わした言葉も、
全部本物でした。」
「世界が作り物でも、
心は本物になれるんです。」
「君の世界も、きっと――そうであるように。」
「じゃあ、またどこかで。 」
fin
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