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あの「事件」は解決した。
ワタシは無咎と共に証拠を集め、暴行を受けたという証言が嘘であることを告発、証明した。
そしてその後、ワタシ達は自ら役人仕事を辞退し、商売屋を始めた。
初めは小さな骨董品店から。店は繁盛し、骨董品から薬品、小物なんかも売り始めて、巷では「何でも屋」と呼ばれた。
ワタシは、何時しか無咎に恋をしていた。
真面目な顔をして作業をする姿も、にこやかな顔で接客する姿も、売上を見ては喜ばしげに報告しに来る姿も。全てが全て愛おしくなっていた。
それでも、人生はそう甘くない。
無咎は、何時の頃からか店に来るとある人物に恋焦がれるようになった。
何処かの令嬢のようなファー生地のマフラー、真っ黒な髪、それに見合った翠のチャイナドレス。彼女は「十三娘(しんさいめい)」。
無咎は彼女が来る度に笑顔で駆け寄り接客をしていたり世間話をしていたりした。
そして、それから2年。無咎と十三娘は結ばれ、子供も出来た。「雀舌(じゃくぜつ)」、「プーアル」、「無明」…たくさんの子宝に恵まれ、親族としてワタシも幸せだった。
でも、愛する無咎の心を奪えず、ただ見守るだけの存在となったワタシが、醜く、情けなく、嫌気が差した。
「白のオトン!おチュンがプーアルのおやつ取ったヨ!!」
「馬鹿言え!元はオマエがオレの取っといた揚げ饅頭食ったのが悪いネ!」
「まぁまぁ2人とも落ち着くヨ、おやつならまだあるからサ。」
子供たちの前で不幸な話はできない。悪態を着く訳にも行かない。
だから毎日ワタシは愛想と作り笑顔を振りまいた。
そしてその約10年後、ワタシはとうとう気疲れにやられ、滅入って、狂って、泣き叫び。
自ら首を吊った。
無咎と十三娘はどうやらその後心中したらしい。こうしてワタシと無咎、十三娘は荘園に来た。
息子娘達は、後を追いかけるように荘園に来てくれた。
今日も文句や悪態は付けず。
振り撒くのは愛想と作り笑いのみ。
その首を刈り取られるのはいつだろうか。
無咎を奪おうとするならば、容赦はしない。
「血滴子」の名にかけて、皆の首を刈り取るまで。