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驚いたな……。まさかスキュラがルティを助けて、そのうえ反撃する意思を見せて来るなんて。てっきり非協力的だとばかり思っていたのに。一緒に行動して心境に変化でも芽生えたか。
「あうぅ、スキュラさん~」
「らしくありませんわね。後ろを取られて攻撃されるだなんて、あなたの強さを見誤っていたのかしら?」
「変なんですよ~! わたしの動きを最初から分かっていたような感じで~……」
「……見たところ悪魔の騎士といった感じですけれど、剣を持たずにあなたと拳の勝負をするなんて随分と律儀な悪魔ですのね」
スキュラが出て来たとなると魔法が主体の攻撃になるな。彼女が得意なのは弱体と相手を蝕《むしば》む魔法だったか。スキュラと勝負する機会はあまり無いことだし、戦ってみるのも面白そうだ。
「そこのあなた! あたくしの言葉が通じるかは存じませんけれど、こんな小さな町を単独で襲うことに何の意味がありますの? ここで引かないようなら今度はあたくしがお相手しますわ!」
「おぉぉ~! スキュラさん格好いいですね~」
「う、うるさいですわ。さぁ、何とか言ったらいかが?」
レアガチャで仲間になったわけでもない彼女はあやふやな関係だったが、ここまで言うようになるとは。ルティといることでずる賢い部分が消えたのだろうか。
おれが声を出した時点でスキュラにはすぐ気付かれそうな気もする。
そうなると先制攻撃を仕掛け、いち早く本気を出させるか――?
「……アイスストーム《着氷性暴風雨》」
手の平でイメージを浮かべるとあっさりと発動出来た。魔法の標的を特に指定しなかったが、冷気そのものを中心に広範囲で展開した。
威力がどうなるか怪しかったが、
「フン、無粋な悪魔ですこと。言葉が分からないのか、それとも……? よりにもよってあたくしに氷属性なんて! どうにも気に入りませんわね」
「ひゃー!? スキュラさんっ、地面もお家も凍っていますよ~!!」
「あなたは少し下がっていて! ルティ」
「はい~」
ルティがちょいちょい話に割り込んでくるせいで、緊張感が全く感じられない。しかしスキュラからは冷気に負けない殺気をひしひしと感じる。
「フフ……、あたくしもお返しをして差し上げますわ!!」
「――!」
詠唱を必要としないスキュラから魔法が発動。おれが放った冷気を地面にかき集めたかと思えば、大量の水を混ぜて流し込んでいる。水はすぐさま氷と変化し、おれの足下にまで影響が及ぶ。
足下は凍り付き、身動きが封じられた形となった。スキュラは間髪入れず違う種類の魔法を唱えているようだ。おれの両足には氷の固まりがこびりつき、次の攻撃は避けられそうにない。素直に攻撃を受け止めるしか無いみたいだな。
「フフフッ! 魔法を返された上に足下を封じられる気分はどうです? 言葉が通じなくても痛みは感じられるはずですわ」
氷属性の攻撃を受けたとしてもスキュラは相手の魔法を利用出来るようだ。蝕み魔法と氷の塊をおれに命中させるなんて、スキュラの強さは本物らしい。
しかしレアガチャで出したデーモン装備の優秀さの方が若干ながら優れていたようで、ルティの一撃も吸収して逃がし、弱体含みの魔法も効果なし。デーモンテイムで防御力ごと底上げ出来た――といった感じだ。物理と魔法、そのどちらも効かない事実は裏を返せば、デーモン相手には相当苦戦することを意味する。
そんなことを思っていたら目の前にスキュラが迫っていた。おれが瀕死状態だと思っての油断のようだ。
「……《バーニングウェーブ》!」
油断大敵と言わんばかりに炎属性を放つ。
「――いやぁっ!? ぎぁっ、あぁぁ……な、なに、こ、これは――」
「ああっ! スキュラさんっっ!? だ、大丈夫ですか!!」
「く、ぐぐぐ……炎魔法をこのあたしに、グゥゥ……!」
足下の氷はとっくに溶かして動けるが、油断を上手く誘えたようだ。
「……《ミストラルウィンド》」
真空の風が霧となり、覆われたスキュラもろとも全身を切り刻む。
「グィァァァァ……!! あ、悪魔の分際でっっ……!!」
「スキュラさん、落ち着いて~! 交代ですっ!!」
「……な、何てこと……! 何故どうして、こんなっっ」
大した威力にしたつもりも無くダメージを負うほど威力はない。スキュラならば冷静に対応出来たと思ったが、どうやら感情的になっているようだ。
「悪魔さんっ!! 次はわたしがお相手します! 今度こそは容赦しませんからね!」
戦いたそうにしていたルティが拳をぶん回しながら前に出たので、
「《エクスプロジオン》……」
即席の爆発魔法になるが炎に強いとされるルティへ発動。スキュラにも影響を及ぼしかねない周囲を巻き込み、半径方向に爆炎を展開した。
「ひぃえぇぇぇ!? ウワチャチャチャチャチャチャ!!」
さすが火口渓谷出身だ。大して効いてないようにも見える。ここで決めゼリフを放てば降参するはず。
「くくく、降参しろ……貴様らに勝ち目は生まれぬ」
ここまでやれば言葉を発した方が言うことを聞くだろう。
そうかと思えば、
「あれぇ~? その声どこかで?」
「――フフ、あたくしの攻撃が全く通じないどころか、いやらしいやり方……やはりそうでしたのね」
いやらしいって……。スキュラの奴、まさか気付いていたのか?
「この熱さを感じる魔法は、以前にもどこかで体験しているんですよね~。え~と、え~と……」
「ハァ……いい加減、あたくしたちに隠したお顔……真のお姿をお見せ頂けませんか?」
ルティはおれの名前が簡単に出てこない。漆黒のヘルムを外せば顔は出せるが、どうしたものなのか。そう思っていたのもつかの間、ルティが急に騒ぎ出す。
「あわわわわ!? スキュラさんスキュラさん!! 悪魔さんがたくさん降りて来ましたよ、どどどど、どうすればいいんですか~!!」
「――あら、この期に及んであなた様が使役した悪魔なのです?」
黒焦げにはなっているがルティは全くの無傷。それはともかく、ようやく残りのデーモン族が到着したか。地上に降り立った格下デーモンに気を取られていると、脇の方から唸り声が聞こえてきた。
「ウーウウウウー!! 許さないのだ……!」