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正体がばれかけているんじゃデーモン装備を外すしかないか。
……などと思っていたら、ルティとスキュラは何故かおれではなく別の方に気を取られていた。
二人とも戦闘態勢を取っているが相手は――
「ウー!! よくもよくもー!」
シーニャだった。
「待てっ、シーニャ!」
「ウウウウー!!」
どうやらおれが一方的にやられているように見えて怒ってるみたいだ。しかも矛先をルティだけにさだめている。
「――えぇっ!? わ、わたしですか!?」
どうしてわたしがといった感じで驚きまくっているが、防御はきちんと取っているようだ。
そんな彼女たちの様子を眺めていたところで、
「フフッ。あなたさまも意地が悪いことですわね? ねぇ、アックさま……」
「……とっくに気付いていたか。で、最初からなのか?」
「本当の悪魔ならもっと容赦なく襲って来るはず。もっとも、あんないやらしい攻撃をしてくるのはアックさまだけですけれど」
何がいやらしかったんだろうか。
「真面目に痛かったってことだよな?」
「アックさまのお仕置きだと思えば痛みなど……むしろ悦《よろこ》びに値しますわ!」
スキュラの冷笑は色んな意味で危なっかしいな。
「ここにはいつ頃来たんだ?」
「……その前に色々と関わりのあるお話をしなければなりませんわ。ですけれど、まずはドワーフ娘と獣人を何とかしなければいけないのでは?」
どうやらかなり前に町に到着していたようだ。何か含みのある言い方に聞こえるが、他にも誰かいて気にしているようにも思える。
「うわわわっ! 危なっ!?」
「ウウッ!! 避けるな、人間!!」
「わたしはこんなことしてる場合じゃなくて~! 早くあの方の元に……あーー!!」
「ウガゥッ!!」
シーニャの容赦ない攻撃に対しルティは苦戦しているようだ。
「ひぃえっ!? 鋭いツメは苦手です~」
「ウウニャッ!」
「えっ!? 光ってる~!? それに何だか視界がぼんやりしてる気が……」
シーニャは今まで見せたことのない鋭い爪を出し、ルティに対し連続攻撃を繰り出している。さらには白い光を見せながら敵《ルティ》を上手く振り回している。
ルティと同じ回復系が使える彼女だが、攻撃魔法も使えるってことだろうか?
「ぐるぐると目が回って~あれぇ?」
「ウニャ! 参ったか、人間!! シーニャのアック、いじめるな!」
「アック……アック様!?」
一体何をやっているんだあの二人は。
激しい戦いを繰り広げると思っていたのに、どう見てもじゃれ合っているとしか見えないぞ。
「アックさま。そろそろ身構えては?」
「……ん?」
「あたしはこの場から離れさせて頂きますわ」
「何が?」
スキュラが急におれから距離を取りはじめた。
まさか知らぬ間に機嫌でも損ねたのか?
「スキュラ、話の続きは?」
「後でゆっくりと別の部屋で……ですわ。その前にあたくしはそこで目を覚ました不貞腐れの宝剣をなだめておきますわ」
「宝剣……? え、どこに」
「フフフッ。目に見える範囲にいましたわ。様子を見るに、宝剣も大変でしたのね」
スキュラの言うところを見てみると、町の入り口付近で人化フィーサがしゃがみ込んでいる。それもかなり不機嫌な様子で。不貞腐れた彼女を見ている限りデーモンの群れはフィーサを放置し、そのまま退散した模様。
「では、アックさま。強烈な衝撃に耐えられますよう祈っていますわ」
「へ?」
フィーサに近づいたスキュラは、フィーサを連れて目に見えない場所に退避したようだ。身構えろとか衝撃だとか、一体何を言っているのやら。
――って。
「アック様ぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ウニャ~~!!」
気付いた時にはもう遅く、あとはデーモン装備が衝撃に耐えてくれるか祈るだけだった。