アラームの音が部屋中に響し渡る。いつもだったら、1度だけで起きるくらいの寝起きの良さだが、今日は中々起きない。アクアは淡い青の布団を被り、アラームの音を遮断した。そのせいで綺麗な金髪が隠れて見えなくなってしまった。
ルビー)お兄ちゃん!そろそろ遅刻しちゃうよ!起きてー!
勢いよくドアが開き、ルビーが入ってきた。ドタドタと遠慮なくベットに近づき、ぐっと布団を引っ張るが、アクアも負けじと抵抗する。綱引き状態だ。
ルビー)んもう!いつもはもっと朝に強いじゃん!なんで今日に限って……
しゅんと顔に影を落とす。布団を引っ張っていた手も弱まる。シーンと部屋から音がなくなる。いや、アクアの心地よさそうな寝息だけが部屋に響いていた。
ルビー)……起きろアクアーーーーー!!!!!
アクア)ん゛ぅ……
もぞもぞと布団が動き、中から不機嫌そうなアクアが顔を覗く。
アクア)るびぃ……
ルビー)声ガラッガラじゃん!何、風邪?
アクア)ん゛ー
むくりと身体を上げるアクアに、ルビーは目をパチクリさせた。
ルビー)な…なに、その猫耳ーーーーー!?
アクア)ねこ、みみ……?
困惑しながらそう呟いたアクアの頭には、ぴょこんと動く白い猫耳があった。
なんやかんやで1人で学校まできたルビーは、友達のみなみとフリルちゃんに事情を説明した。
フリル)アクアさんの、猫耳……!?
みなみ)フリルちゃん、その嬉しそうな顔少しは隠そうな〜
サクサクとしたトーストを咀嚼しながら、ルビーは2人の会話を聞き流していた。
みなみ)それにしても、アクアさんも大変やなぁ
最後の1口を放り込み、ルビーは2人の会話に入る。
ルビー)まぁ、数日したら元に戻るらしいけどね
みなみ)えっ、そうなん?
いきなりの新情報に、みなみは目をパチパチと2、3度瞬きをする。
ルビー)うん。カミキヒカルから送られてきた手紙にそう書いてあった
フリル)カミキヒカル……
猫のような瞳を大きく見開き、驚いた表情をするフリル。
ルビー)絶対に愉快犯だよ…。アイツ、今は刑務所にいるんじゃないの?なんでアクアに手紙送れるの?しかも本名?ふざけてんのか……?
ブツブツと怨念を呟き始めたルビーを2人は複雑そうな表情で見ていた。
みなみ)フリルちゃん、カミキヒカルって、ルビーとアクアさんのお父さんなんやろ?
フリル)そうね。でも、ルビーの様子をみてたら分かると思うんだけど、あまり核心に触れないであげてね
みなみ)分かってる。そんなヘマはしないよ
そう言ってはいるが、明らかに不服そうな表情を隠そうともしないみなみに、フリルは少し困ったように笑った。
フリル)私とルビーがみなみに何も言わなかったの、気にしてる?
意地悪っぽくそう聞くと、ジッとした目を向けられる。
みなみ)当たり前やろ。友達なんやから
みなみ)…でも、どうしてもルビーが話したくないんなら、仕方ないけど
フリル)だったら、私にいい考えがあるよ
ルビー)それじゃ、お兄ちゃんをよろしくねー!
みなみ)は、はーい……
バタンと閉じられたドアを見つめながら、これからどうしようかと頭を抱えるみなみ。
みなみ)とりあえず、アクアさんの様子をみていかへんと……
アクアは2階で寝ているとルビーが聞いていたみなみは、恐る恐る階段を上った。
みなみ)アクアさん、寿ですけど……
部屋のドアをノックし、声を掛ける。中からの返事が来ないから、まだ寝ていると思い、1階に戻ろうとする。すると、ドアの向こうからアクアのくぐもった声が聞こえた。何かあったのかと思い、慌ててドアを開ける。
みなみ)えっ……?
目の前に広がる光景をみて、その場で立ち尽くした。
アクア)ことぶき、さん……?
弱々しいアクアの声に焦りを覚え、勢いよくドアを開ける。
みなみ)アクア──えっ!?
ルビーから話は聞いていたが、いざその光景を目の前にすると頭が追いつかなくなる。淡い青が少し多めにあって、ルビーとはまた違った雰囲気を感じる。
アクア)寿さん…いらっしゃい
白い猫耳とフサフサのしっぽを揺らしながら、顔をしながらも挨拶してくれた。
みなみ)あ、どうも。お邪魔してます……
ほとんど反射的に返してしまったが、ちゃんと返せて良かった。それにしても、綺麗だなと思いながら見ていると、アクアは少し気まずそうにする。
アクア)あの、そんなに見られると、恥ずかしいんだけど……
みなみ)あ、すんません。あまりにもアクアさんが可愛くて……
アクア)え?
みなみ)あっ
両手で口を覆った。つい本音が漏れてしまったことに気づき、少し気まずい雰囲気になる。どうしようと考えていると、ふと思い出したことがあった。
みなみ)アクアさん、さっき何か言ってました?ほら、さっきドアの向こうからアクアさんの聞こえてきたので、トラブルでもあったんかと思いました
アクア)あ、えっ、と……
何故かアクアはさらに顔を赤くして、俯いてしまった。
みなみ)言いづらかったら、無理せんでええですよ?
アクア)いや……
暫く口をもごもごさせていたが、意を決したのか、口を開く。
アクア)寿さんの声が、聞こえてきて…でも、こんな姿、みられたくなくて……そしたら、寿さんが出ていきそうになって………えっと、寂しかった、です……///
見ているこっちの方が恥ずかしくなるくらいにみるみると顔が真っ赤になったアクアに、みなみは口元が緩んでいくのを感じていた。
みなみ)アクアさん、何食べたい?
終
コメント
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もうまじで目の保養です…😇 ありがとうございます😭