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これは、とんでもない連中と出会った僕の話。
彼らに人生を変えられた僕の話。
現在進行系の僕の話だ。
位置情報∶日本国 首都•央京某所
時間情報∶200X年 9月第3週某日 午後7時過ぎ
白銀の月が見下ろす中、無慈悲な遊戯が始まった。
人が絶えた夜の公園で、夏服姿の大柄な柔道部員が、線が細い小柄なイジメラレっ子を投げ飛ばしている。この投げ飛ばされているのが、かつての僕−−根岸博康−−だった。
目の前の景色が歪む。一瞬後、背中に凄まじい衝撃が加わる。内臓が搖さぶられ、胃液が喉元まで込み上げてくる。
「ううっ、うぷっ」
思わず嘔吐しそうになるのを、根岸は必死に堪えた。
「あはは、ネギっち苦しそ〜」
どこかでサラサラヘアーの馬鹿女が囃し立てる声がする。南川レオナ−−高校生にもなって、一人称が自分の名前で、それが可愛いと思い込んでいるパープリン女だ。根岸が苦しむ姿を、手にしたスマホで撮影している。
「流石はリュウイチ君。見事な一本背負いッス」
軽薄そうな男の声。小野トシヒコ−−チビでヒョロガリの眼鏡猿。コイツは強い者にヘコヘコすることで、生き延びているコバンザメだ。
「コイツ軽過ぎるからよぉ。投げた時の手応えがないんだよなぁ。なんつーか、虚無だわ」
小野にヨイショされた巨漢が、ゆっくりとした口調で答える。白井リュウイチ−−身長179cm、体重82kgの歩く重戦車。イジメ・グループの実行隊長。高校1年生にして柔道の全国大会に出場できる程の猛者だが、「心技体」のうち、心だけがスッポリ抜け落ちている。
背負投げをした後も掴み続けている根岸の腕に力を込めると、白井は倒れたままの根岸に声を掛けた。
「さっさと立て。それとも顔面にサッカーボール・キック食らいたいか?」
顔面を潰されるくらいなら、まだ投げ飛ばされる方がマシだ。打算と不本意の二択で、根岸はヨロヨロと立ち上がった。
神様、仏様、助けて下さい。
いつものように心の中でお祈りをする。
でも、何も起きない。いつもそうだ。
夜、ウォーキングやランニングをしている近所の人が通りかかってもいい。巡回中のお巡りさんが、たまたま見付けてくれてもいい。
そして……学校や警察に通報してくれたなら……イジメを止めに入ってくれたなら……
ほんの少しでも、現状が変わってくれるのに……
……奇跡は起きない……