テラーノベル
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自動ドアが開いて、入ってきたのは見慣れねぇ女の子だった。黒い髪が顎まであって、飾りっけはないけど真面目そうな子。見慣れねぇから、最初は懸賞金をかけられた坂本さんを狙った殺し屋かと疑ったが、どうもそんなんじゃねぇ。思考を読むと、ただの買い物客だ。買おうとしてる物を読むに、一人暮らしか。最近近くに引っ越して来たのかもしれねぇ。
「っらっしゃっせ〜」
挨拶をすると、女の子は会釈をして商品を探し出した。すると聞こえて来たのは、俺に対してのベタ褒めだった。
おいおい、初対面だろ、俺ら。そんなに褒めてもなんも出ねぇし、惚れやすいのかアンタ!気をつけろ!
ったく。この店のことも全然知らねぇだろうし、ルーに商品の陳列の場所を教えたあと、教えてやろっと。
パンコーナーにスープコーナー。いや、何せ思考の読みやすいこと読みやすいこと。
さすがに2回目教えた時、
「うるさかったですかね?」
って聞かれた時は焦った。俺のエスパーがバレたのかってギクッてしたけど、独り言を心配してたらしい。いや、聞こえてはいるんだけどさ。
女の子はカゴに調味料を入れ出して、しまいにゃ米まで連れてくらしい。無理無理。小柄なあんたじゃ、そもそもそのパンパンなカゴをレジ台に乗せんのも無理!
女の子からカゴを受け取って、俺が台に乗せた。米もそう。この子、この後持って帰れねぇよ、絶対。俺の今月の給料賭けてもいい!
「7,980円になります」
「はぁい」
水色の財布を取り出して、女の子は1万円を取り出した。その時、俺の名札と顔を見て、またかっこいいとか言いやがった。いや、言ってない。思考で読んだだけだけど。….正直、悪口じゃねぇし、嫌な気もしねぇ。けど、お、落ち着かね〜!!
釣りを渡す時、レシート、上に二千円、上に二十円を乗せて、その子の小さい右手の下に俺の左手を添えた。色の白い、可愛い手だった。女の子は、ふ、と伏せて、財布に釣りを仕舞う。…..意外と、まつ毛なげぇ。つか、目、若干紫っぽい?カラコン?
じゃなくて!
「ルーは今トイレなんで…坂本さん、俺、ちょっと出てきてもいいですか?」
坂本さんは、” あぁ “ と頭で頷いた。
「良ければ、近くまで持っていきますよ」
「えっ」
「で、でも迷惑ですよ、」
「どうせ買い出しがあるので。だって、アンタじゃ運べないでしょ」
軽く馬鹿にしてみた。” はぁ?!何コイツ!! “ って思うと予想したら、” たしかに “ って思考が返ってきた。外見通り穏やかなんだな。ルーに同じこと言ったら絶対突っかかってくるだろうし。
「それも貰うけど」
「や、ですが…..いいんですか….?」
つか、警戒しろよ。男が家の近くまで持ってくって、下心かもしれねぇだろ?って思ったら、” そういう展開でもいいけど “ って言ってる。….い、意外と…遊んでるのか?
「ありがとうございます。助かります」
「おう…..」
坂本商店を出て、隣を歩く女の子。鈴が弾むような声で、俺を見上げて言うもんだから、なんか照れくさい。
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