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3章:ポポハスの青
25話:月夜の歌姫
朝日秀蘭
→痛覚 創造を具現化する能力
導奇秋
→視覚 生死を導く能力
加和夏希
→嗅覚 時の凍結能力
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〈注意〉
3章では暴力表現を扱うのシーンがあります。 原作より柔らかい表現にし、注意喚起をするのでセンシティブ設定を付けていませんが、苦手な方はお気をつけ下さい。
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メイ・クリップ…?と質問しようとした矢先、少女が指を鳴らす。
「…え?」
すると一気に景色が変わった。
いや、別の場所に連れてこられたっていう方が正しい気がする。
ステンドガラスがドーム型に貼られ、この空間には人形が吊るされている。
だが、そのステンドガラスは光を差し込むことなく、ただ無機質に色を反射するだけ…。
「…不気味。」
「あら?気に入ってくれましたか?今日のために新しく仕入れておいたのですよ。」
「相変わらずの悪趣味だな。」
ダインは私達にあの人形を傷つけないように忠告した。
「あらあら、ダインさんってば。この子達の味方をするんですか?連れないですね…。」
「…これが俺の償いだからな。」
「あら、また何かやらかしたんです?」
「罪状を述べる義理はない。」
声の調子は穏やかでも、二人の視線は剣のように鋭い。
「あ、そういえば挨拶がまだでしたね。」
と状況の飲み込めない私達に満足したように、軽やかに衣服を揺らしこちらを見る。
「私はメイ・クリップ。そこの裏切り者と同じ、主様に仕える五当主の一人です。」
それに続けてダインが補足する。
「…コイツが月夜の歌姫だ。あの人形もきっともとは人間だぞ。」
「え!?それって…!」
シュウも取り乱す。人を人形にしたってことは…そういうことだろう。
ダインがさっき焦った理由が分かった。
この人が死者に歌を捧げる残酷な歌姫さん…
きっと同情や迷い無しに殺しに来るだろう。
「…ふふ。どうやら私の異名はもう伺っているみたいですね。…なら話は早い。」
そう言うと瞬き一つの間で、夏希に細い何かを飛ばす。
「!?___陽光!!!」
どうやら火炎魔法を使ったことでギリギリ防いだようだ。
「…糸?」
焼き切れたものをみると、それは糸のようだった 。
「夏希さん!平気!?」
「う…うん。大丈夫よ。」
と、自分の魔法(?)を防がれたことに驚くようにメイは目を大きく開く。
___だが、すぐにその目を輝きに変える。
「ふ…ふふふ。良いですね、貴方。…夏希…さん?私、強い女は好きですよ。仲良くなれそうですね。」
「あなた…正気?どこに自分を狙った人と仲良くする人がいるのよ。」
「…!ふ、ふふ!やっぱり良い女の子ね!」
そういうと私達全員にさっきと同様の糸を放つ。 みんなは魔法で切ったり避けたりして躱す。 私も魔法でっ…!
「あっ…!!」
「ふふ、まずは一人ですね。」
雷電魔法を上手く扱えないのと、みんなを気にかけていたのが重なり、私は左足に糸が絡まってしまった。
「秀蘭ぁ!!」
「まて、シュウ!メイの糸は人や物体に付着すると、近くにいる別のものを捕らえようとする性質がある!」
そうダインが叫ぶ。どうやら付着した後に強度が増し、本来の力を発揮するらしい。
「…電流!」
私は夏希のように魔法で焼け切ろうとしたが…
「あら、獲物を捕らえた生物が空腹じゃないだなんて誰が決めたんです?」
「ゔ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「魔力を込めたら、それを吸い取るに決まってるでしょう?」
足に絡まった糸が分裂し、腹部や頭部を一気に締めてきた。
痛い という間もなく、とにかく逃げ…なきゃと、おも…うっが…。
「ふふ、もうギブアップですか?残念です。まぁこれで二人目ですが。」
秀蘭が力尽き、頭がガクッと下がったのを僕ら全員が確認した。
怒り、絶望、無力感、様々な感情が交差する中、 二人目 という発言にダインは目を逸らす。
「二人目って何…?」
夏希さんは秀蘭を取られた怒りと反抗心で聞き返す。
「…。ダインさんに聞いてませんか?私の組織の奴隷に感生の子が一人いるんですよ。」
「え…っ?」
何よ当たり前でしょ?と言わんばかりにメイ・クリップは首を傾げる。
「その様子だと知らないみたいですね。」
と、安心したような顔と同時に
「ふふ、ダインさん。貴方にまだ迷いがあるなら、戻るのは今のうちですよ?」
…するとこの異質な空間が挑発するような捨て台詞と共に崩れ始める。
「また、お会いしましょう。それまでにこの子をお人形さんにしないと。」
「まって!しゅらぁぁぁぁぁ!!!」
僕が叫んだ時にはもうメイ・クリップは去り、マーサル神社の前で立ち尽くしていた。