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ほんの三十分程の講習であったが、受講生達には存外の刺激を与えた様であった。
みんな揃って歴史好き、今聞いた話もどこかで聞いた話だったのだが、一つの口、それもその時代に近い頃から生き抜いてきた魔神の口から聞かされる事に少なくない感動を覚えていた様である。
ラマシュトゥとリョウコ、ルクスリアは女性らしく興奮の声を上げたのであった。
「なんか、アスタ先生って、思った倍、いや百倍格好良いんですけどぉ? ね、どう」
「う、うんそうだねぇ、なんか凄いよね、救世感が、救世感が凄い良いよねぇ?」
「うちの宿六(ヤドロク)と違って助けてくれる感、ってか余裕が大人ですわね、大人の安心感! 魅力あふれるぅぅ! ですわね!」
一方のコユキはホンの三十分で頭を使い過ぎて糖分不足に陥ってしまったメンバーの期待に応えるために頑張り続けていたのであった。
広げた茣蓙(ゴザ)に体を横たえ(寝る必要はないかもしれません)リクエストを聞いていたのである。
「はい、次の人! 甘いのが良いの? しょっぱいの? ああ、甘くてどこか辛味のあるやつが良いのね、はいはい、どうユキ姉、できるかな?」
「そうね…… からし饅頭とかで良いかな…… ねえ、ゴザさん? からし菜とアンコのコラボ、からし饅頭が怖いわぁー」
ぽんっ!
「はい、どうぞぉ~! お次の方ぁ~、えっ? 魚介系のしょっぱいヤツ? えっと、ユキ姉出来るの?」
「ああ、イカスミ饅とかでいいんじゃないかな~、ふうぅ~、にしても疲れたわね、アンタ大丈夫? リエ?」
「う、うん、大丈夫だよぉ、もうチョットだよ、頑張ろうね!」
「お、おう!」
こんな感じで休憩どころか、受講中より忙しくなってしまっていたコユキ&リエ、親切コンビであったのだ。
おっきいコユキにほっそりとしたリエが肩を貸して、十分の休憩終わりに合わせて何とか席に戻った二人は休憩前より疲れ果てていた……
とはいえ、関係無い事に集中していたお陰だろうか? 新たに気持ちもリフレッシュ! 気分も新たに再開された講義に集中していくのであった。
「さて、ウラヌスが到来した後の原生惑星地球はどんな変化を遂げたのか? 多分皆も知っている通り、いくつかのたんぱく質が形成された海の中で最初の命、アメーバ的な奴が産声を上げてな、そっからは一気の生命ブームが来た訳だな! 陸上も浅めの土中も海中も空中まで、初期の単細胞の命が溢れだし、生き残りをかけた命達は、挙って(こぞって)多細胞に移行し、程なく陸海空に多細胞でありながら単一な存在、プラナリアみたいな奴らを経て、無脊椎動物たちの世界が形成され、地を覆い尽くすほど繫栄していったんだな! 彼らの世界は主に海を中心として、世界のあらゆる場所に展開していったんだよ、あるいはウミウシのように、原初の貝やなめくじのように、または地を埋め尽くす苔としてな」
殆ど(ほとんど)のメンバーは聞いた事があった下りだったのであろう、イマイチ反応薄目で頷きつつ、無言で聞いていたのであった。
アスタロトの言葉は続く。
「そんな時代が三十億年も続いたある日、空一面が再び滅びの炎に埋め尽くされたんだ、お待たせ、暴君、巨人の王、クロノスが、アイツがこの星にやってきたんだよ……」
思わず身を乗り出す一同…… アスタの舌も乗ってきたようである。
チャームを使用した気配もないのに、受講しているメンバーはもれなく魅了されて行くのであった。
仲間たちの熱い視線を楽しむように見渡したアスタロトは満足そうに一つ頷くと話を続けるのであった。
「クロノスは小惑星、つまりウラヌスに比べると随分小さかったし、組成も単純なケイ素やアルミニウムやナトリウム、鉄やクロム微量のチタンで構成されていたんだが、問題は地球までの道のりの途中で大量の中性子線に晒されてケイ素がSi32に変化していた事なんだな。 大気圏に突入した際に耐熱性の高さから燃え尽きる事もなく、衝撃により粉々に砕け散った破片は世界中、特に赤道付近に大量に降り注いだんだな、摩擦によって磨きだされた色とりどりの宝玉が苔生(む)す大地に命の溢れかえる大海に新たな命の起爆剤として齎(もたら)された事になるな」
コユキが溜息と共に呟いた。
「奇麗だったでしょうね……」
アスタも肯定しつつ先を語ってくれる。
「ああ、ダイヤモンド以外の殆ど(ほとんど)の貴石、半貴石、輝石が降り続けてくるんだ、目にしたら奇麗だっただろうな、尤も(もっとも)その時には生きてはいないだろうが…… 恐らく当時も無数の生物が犠牲になっただろうが、当然絶滅なんて事にはならなかった、しかし、代わりに生き残った生物たちはここから生き残るために壮絶な生存競争へ身を投じる事になったんだ。 原因は環境の変化、地球上の重量バランスの変化はまたぞろマントルの活動を活発にさせ、一部の海中には分解できない硬度の宝玉が海底を埋め尽くして熱を放射し続け、大地のあちらこちらではストロンチウムが臨界爆発を繰り返していたんだ、大地の一部にはそれまで見た事もなかったジルコニアの六角柱が散見される様になり、どこか人工的ですらあった、現代の人間が発掘すれば大騒ぎになるだろうな! 古代の地層から人工の柱を発見、古代の宇宙人の遺物かっ! なんてな、ははは! まあ、そんな風に色々な変化はあったんだが、地球上の生命、生き物にとって一番の試練に直結したのは今まで自分たちを紫外線から守ってくれたオゾン層が、クロノスの突入時に殆ど破壊されてしまった事だったんだな」
「うわ、紫外線…… シミしわ、コワすぎ!」
「うむ、恐ろしいのぅ」
リョウコの言葉に良い年したトシ子が相槌を打つ。