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寺島あおいです🤍 第26話、読ませていただきました。 ロボットたちに読経し、引導を渡す正源さんの姿がとても印象的でした。作業員さんたちのこわばった表情が少しずつ和らいでいく様子に、私もほっとしました。そして何より、浄源さんが「お布施は気持ちの問題」と語ったあの場面、胸がじんと温かくなりました。決して裕福ではない方たちが身銭を切って供養を願う——その気持ちの尊さをきちんと伝えた浄源さんの言葉に、作品の優しさが凝縮されているように感じました。
六体の女性型ロボットを頭を北の方角に向けて横一列に並べさせた。ロボットたちの頭の傍に、事務机を運んで来させてその上に鉦と携帯線香入れを置き、即席の祭壇にした。
念のため多めに用意してきた、引導の紙の枚数が足りている事を確認し、正源は立ったまま、鉦を鳴らし読経を始めた。浄源が正源の傍らに立ち、声をそろえてお経を詠み始めた。
作業監督を含む十人の作業員には、ロボットたちの横に立ってもらった。いつもは略式で行う読経だが、正源は経本を左手に持ち、全章を読み上げた。
そして向かって右からロボットの頭の傍にしゃがみ、その額の部分に引導の紙を置き、その度に一際大きく「南無阿弥陀仏」と音声を張り上げた。
正源はその動作を繰り返しながら、横目で作業員たちの顔をこっそり観察していた。一体また一体と、正源が引導を渡していくにつれ、作業員たちのこわばっていた表情が、ほんの少しずつ和らいでいくのが分かった。
最後の六体目の額に引導の紙を置くと、正源は祭壇の脇に戻り、鉦を十回、出来るだけ大きく鳴らし、そして腹の底から最後の音声を振り絞るように発した。
「南無阿弥陀仏!」
正源は浄源と共に数珠をかけた右手を胸の前で立て、深く頭を下げた。見守っていた作業員たちもつられて頭を垂れた。心の中で数を十まで数え、正源は上体を上げた作業監督の男に顔を向けた。
「これにて、ご供養とさせていただきます」
男は顔中をほころばせて安心しきった笑みを浮かべ、正源に深々と一礼した。
「ありがとうございました」
そして作業員たちにてきぱきと指示を出す。
「さあ、みんな。これで気が済んだだろ? 残業したくねえなら、今日の内に片づけるぞ」
作業員たちも迷いが吹っ切れたという表情で、二人一組になって一体ずつロボットを抱え上げ、破断処理施設の建物に向かって運び始めた。
作業監督の男は正源と浄源をプレハブの事務棟に案内し、安っぽい会議用の机を挟んで向い合せにパイプ椅子に座り、おずおずと白い封筒を差し出した。
「ご供養してもらった後になって、こういう事を言うのもなんなんですが、実はお布施は私らが出し合って用意するもんで、今日のところはこれだけなんです。足りない分は、金額をおっしゃっていただければ、後日私の方で……」
正源が封筒の中身を確かめると、よれよれの千円札が二万円分入っていた。正源は心の中で「たったこれだけか」と思ったが、浄源が横にいるので何も言い出せないでいた。すると浄源がいきなり作業監督の男に言った。
「いえ、これで充分でございます。後日の追加などは必要ありません」
「えっ!」
作業監督の男は心底驚いた様子で訊き返した。
「それでいいと、おっしゃったんですか? いえ、いくらなんでも、たった二万円てわけには……」
浄源は封筒を正源に封筒を手渡しながら、ゆっくりと言った。
「本来お布施というのは、気持ちの問題なのです。金額に相場など、本当はないのですよ。それに、このお布施は、どれほどの大金よりも尊いと、私は思いますよ」
作業監督の男は目をぱちぱちさせた。
「は? あの、意味がよく分かりませんが」
浄源は、隣で呆気に取られている正源に構わず、言葉を続けた。
「大金持ちが自分の事で、例えば百万円の札束をポンと出すのはたやすい事です。しかし、こう言っては失礼ですが、あの作業員の皆さんはお金が有り余っている方たちではございませんでしょう?」
「あはは、いや、そりゃ確かに。お世辞にも金持ちとは……」
「ですからなおさら尊いのですよ。あのロボットたちは、こちらの皆さんには縁もゆかりもない代物でしかないでしょう。決して裕福ではない方たちが、自分の身銭を切ってまで供養して欲しいと願われた。その気持ちのこもった、このお布施は、どんな大金のお布施より、そういう意味で尊いのです」