数年後、その海辺の町の一角にある古びた平屋には、世間から隔絶された「過剰な生命」が満ち溢れていた。かつての秀才、出木杉は昼夜を問わず働き、泥に汚れ、手は節くれ立っていた。しかし、その瞳には寄る辺ない逃亡者の悲壮感はなく、むしろ自らの血肉を増殖させ続ける創造主のような、静かな狂気を孕んだ充実感が宿っている。
部屋の中では、幼い長男が這い回り、その傍らで静香が二体目の赤ん坊をあやしていた。彼女の体は、絶え間ない妊娠と出産を繰り返すことで、少女時代の面影を完全に脱ぎ捨て、豊穣な大地の女神のような、重厚で生々しい色香を放っている。
「出木杉さん、また……兆しがあるの」
静香が、授乳で露わになった胸元を整えながら、熱っぽい視線を出木杉に送る。彼女の腹部は、産後間もないというのに、再び新たな命を迎え入れる準備を整えているかのように、滑らかな曲線を描いていた。
出木杉は無言で彼女を引き寄せた。ゴムという障壁を捨てて久しい二人の間に、ためらいなど微塵もない。子供たちが眠りにつくのを待たずとも、彼らは互いの肌を求め、剥き出しの熱をぶつけ合う。
「僕たちの子供たちで、この家を、この世界を埋め尽くそう」
出木杉の低い声が、静香の耳元で響く。彼は彼女の胎内へと、己のすべてを、未来を、執着を、混じりけのないまま注ぎ込んだ。静香はそれを受け止めるたびに、歓喜に身を震わせ、さらに多くの命を欲した。
二人の間で行われるそれは、もはや単なる愛の営みではない。社会から抹消された二人が、自分たちの存在を証明するために繰り返す、終わりのない「増殖」の儀式だった。
一人、また一人と、家の中に小さな足音が増えていく。戸籍も、名前も、公的な記録も持たない子供たち。彼らは出木杉と静香の「純粋な結晶」として、外の世界を知らぬまま、この閉ざされた楽園で育っていく。
静香の腹部は、凹む暇もなく再び膨らみ始め、彼女はその重みを誇らしげに支えながら、出木杉との夜を待ちわびる。
「次は、女の子かしら。それとも、また男の子……?」
彼女の問いに、出木杉はただ深く、彼女の深淵を貫くことで答えた。
逃亡の果てに築き上げた、この密やかで多産な王国。彼らは世間の倫理を嘲笑うかのように、暗闇の中で重なり合い、絶えることのない生命の連鎖を紡ぎ続けていく。






