一瞬モブの女性が出てきます。ご了承頂ける方のみお進み下さい。
「」葛葉
『』叶
葛葉side
・・・最悪。
なんで俺はあんなもん見ちゃったんだろ。
さっきみた光景を忘れようとすればするほど脳裏に焼き付く。
(数分前)
『またね、ありがとういつも』
笑顔でそう言う叶。そんな叶の前には、俺は見たこともない女がいた。女も何か言っているようだが内容は聞こえない。
『違うよ、葛葉はそういうんじゃないから。』
たまたまコンビニに行こうと歩いていた俺は道ばたで知らない女と仲良く話す叶を見かけた。それだけならいいんだけど、、
『またね、ありがとういつも』
そう叶は言っていた。またね?、、ありがとういつも??
・・どう考えても日常的に会ってるってことだよな。考えたくない方向にばかり頭が働く。・・なんでこんな時ばっかり俺の頭は動くんだよ、、それに、、、
『違うよ、葛葉はそういうんじゃないから。』
それって、、つまり、、
俺はいてもたってもいられなくて小走りで去る。もうコンビニなんかどうでもいい、家に戻りサッと貴重品を持ってまた家を出る。
・・終わった。叶は俺となんて遊びだったんだ。葛葉はそういうんじゃないって言ってた、あの叶が。
・・たぶんあの女が本命なんだろう、俺はたかがお遊び、それかスキャンダル予防のかませ犬ってとこか、、
くそっ、、、心の底からむかつくはずなのになぜか溢れてくるのは涙だった。
俺は・・こんなにあいつのこと、好きなのに、、、
咄嗟に家出まがいのことをしたが、仕方ない。もうあの家には戻れない。かといって、泊まらせてと気軽に言える奴もいない、叶以外は、、、
ぐしゃぐしゃの思考回路のままふらふらと人混みの多い通りを避けるように人気のない方に歩く。
ザー
気づいたら川辺まで来ていた。
ここどこだ、、?見たこともない川が流れており俺は惹かれるように川沿いをまた歩く。電灯ひとつ無い暗闇を川の音だけを頼りに歩く。・・もうどれくらい歩いただろう。
ポツポツ
雨が降ってきた、最悪だ。俺は思わずガード下に避難ししゃがみこむ。しゃがむと途端に疲労がどっと押し寄せる。本当はネカフェでも泊まろうと思ったけど、この雨じゃ動けない。仕方ない、ここで少し時間を潰すか、、、
ザーザー
雨音は俺をあざ笑うようにどんどん強くなる。さっきまでは気になりもしなかったが、雨のせいか少し寒い。半袖で来てしまったことを後悔する。
・・叶今頃何してんだろ
嫌でも頭はすぐにあいつのことを考えてしまう。
『葛葉はそういうんじゃないから。』
そのセリフが頭の中をこだまする。俺が帰ってこないから、あの女とまた会ってるんだろうか、、
そう考えるとまた涙が溢れ出し嗚咽も出てくる。
ビショビショの顔をTシャツでぬぐいながらひたすら考える。
あいつが言った好きとかも全部嘘だったのかよ、、
俺バカみてー、、アホみたいにすぐ信じちゃって勝手に落ち込んで、、
?「サーシャ、人間なんかと仲良くするんじゃありません、人間は嘘つきだからね」
急に思い出される小さい時に言われた魔界の母上の言葉。あの言葉は本当だったんだ、、俺、見事に引っかかっちまった。
魔界に帰ろうにも血を飲んでいないから魔力が足りず帰れない、、どうしたもんか、、
ザーザー
そうしている間にも一段と強くなる雨音。ぱっと見ると携帯の充電が切れている、そりゃそーだよ充電してこなかったもんな。。
もう仕方ない、ここで今日は一晩明かすしかないか、、
叶side
葛葉がいない。今日はどこにも行くって言ってなかったのに、僕が帰ってきたらいなくなってた。置き手紙もなんもなし、携帯にも連絡ひとつない。もちろん電話も何回もしたが、電源が入っておらず繋がらない。
・・あいつどうした?どこにいった?
心が押しつぶされそうな大きな不安が僕を襲う。どこかに行くなら必ず連絡があるはず、家を探したが携帯と財布だけ無くて他は今まで通り家にあった。
・・つまり、近所に出かけた時に事件に巻き込まれた、とか?
冷や汗が僕の背中を伝うのがわかる。
・・警察か?いや、こんなすぐ動いてくれるわけない、マネージャー?いや、マネージャーに言ったって朝まで待ちましょうって言われるだけだ、、どうしたらいい、どうすれば、、!
・・探すしかない。見当もつかないけど。
そう思い僕は傘を片手に家を走り出た。
葛葉side
・・さみぃ、本格的に寒くなってきた。秋だと言うのに雨のせいで気温がだいぶ低い。家を出てきた時は夕方だったが今はおそらくもう深夜。携帯も切れてるから時間すらわからない。
寒さで歯がガチガチとなり俺は膝を抱え込んで丸くなる。
・・叶に会いたい、嘘でもいいから、叶に、、、
叶side
・・いない、ここにもいない。僕ははぁはぁと息切れしながら走り回る。葛葉がよく行くコンビニ、駅前、たまに2人で散歩した公園と思い当たる場所は全て行った。だが、葛葉はどこにもいない。
・・帰るか?いや、帰ってもどうせ一睡もできないだろう、それなら納得するまで探そう、葛葉を。
そう思い、今度は行ったことのない方向へ走り出す。
パシャパシャ、、バシャバシャ、、
街灯ひとつない真っ暗闇に僕の足音だけが響く。・・こんなとこに葛葉がいるわけない、そう思いながらも僅かな希望を胸に足を進める。僕の足はもうビシャビシャだった。
ザーザー
雨音と違う音が聞こえる。・・川?こんなところに川なんてあったっけ、、
そういえば葛葉が前に、「川の音ってなんかよくね?」とか言ってたな、、あぁ、あの頃に戻りたい、、頼む、葛葉、、無事でいてくれ、、
僕は頭に広がろうとする嫌な不安をかき消そうと葛葉の名を呼びながら必死に川にそって走り続けた。
葛葉side
パシャパシャ、、、
・・誰か人きたか、?まずい、見つかったらまじでやべーやつだと思われる。
咄嗟に気配を消し、そいつが遠ざかるのを待つ。
『・・ずはーー?!くずはーーーっ?!』
半狂乱にも聞こえる知ってる声。
・・この声、叶だ。俺を探しに来たのか?わざわざ、こんなところまで?
暫く聞いているとまだ
『葛葉ーー?!葛葉ーー?!』
と俺を探す声が聞こえる。
ガード下からそっとのぞくと、あろうことか叶は傘を片手に目を見開いて狂ったような泣き顔で俺を探していた。
「・・かな、え、、、」
気づくと俺はガード下から出て叶の方に歩み寄っていた。
『っ!!!くずはっ!!!くずは!!よかったぁぁ!!良かったああああああ!!』
そう言いながら俺を抱きしめ号泣する叶。俺はこんなにも感情を剥き出しにする叶を見たことがない。
寒さもあり俺は無言で叶と歩き出す。叶も俺に何も聞こうとはしなかった。
家に着き、それぞれシャワーを浴びてリビングに座る。叶は俺のためにあたたかいココアをいれてくれた。
叶は俺と向き合うように座り、ようやく口を開く。
「葛葉、なにかあった?言いたくなければいいんだけど」
お前のせいだ、そう言いたかったが疲労からか咄嗟に喋れずなぜか目から涙が溢れた。
『葛葉っ!』
そんな俺を見て立ち上がり抱きしめる叶。
俺は叶の胸でひとしきり泣き、ようやく息が整ったところで口を開く。
「・・お前、俺の事遊びだったんだろ?なんで今更こんな本気で追っかけんだよ」
『葛葉、、なにいってるn』
『お前が女と会ってるのを見た』
そう告げるとはっとした顔をする叶。
・・ははっやっぱりな、図星じゃねーか、、
『葛葉っ、』
「もういい、お前なんか信用した俺がバカだった」
そういい俺は立ち上がる。
自室に入り鍵をかけ、椅子にこしかける。ゲーム用のヘッドホンをして音楽をかけ机につっぷした。俺はそのまま眠りに落ちてしまった。
・・ん。
目を覚まし、爆音で鳴り響くヘッドホンに驚き投げ捨てるように外す。
・・っくりしたぁ。えっと俺なんで、、あぁ、そうだ。
部屋の時計を見ると朝の4時。廊下から物音もしないので叶も自室か寝室で寝ているのだろう。
・・あいつ、否定もしなかったな。
ハハッと乾いた笑いが部屋に響く。あいつが起きる前にこの家を出ていこう。今度はある程度の荷物を持って。数日ならホテルでもなんとかなるだろう。
俺は出る前に部屋を見渡す。あのカーテンも、この壁にかけてある絵も全部叶が俺っぽいって言って選んでくれたやつだ、、
また涙がこぼれそうになるのを必死に抑え、俺は自室のドアを静かにゆっくりあける。
「・・っ?!」
声にならない悲鳴をあげてしまう。なぜならドアを開けた先には叶が壁によっかかりながら座って寝ていたのだ。
あいつ、、今までずっとここに、、
叶は眠りこけているが、その顔には無数の涙のあとがある。ふと下を見ると俺のドアと床の隙間に小さな紙が挟まっている。
叶を起こさないようにゆっくりその紙を拾い、開ける。
『葛葉へ
ごめん、僕が悪かった。
勘違いさせたんだと思う。口で言えなかったから、書いて伝えるね。
葛葉が言ってた女の人は僕の本当にただの友だち。彼女には葛葉のことをたまに相談してた。プレゼント選ぶ時とか、何かに誘いたい時とか。だから本当に彼女とはなにもない、ただの友だち。
葛葉が僕たちのどんな場面を見かけたのかわからないけど、家を出ていっちゃうくらいだから、相当勘違いさせちゃったんだと思う。本当にごめん。もし話を聞いてくれる気になったら、声かけてくれたら嬉しい。僕はそれまで待ってるから。
叶』
最後の方はずいぶんぐしゃぐしゃに書いてある。おそらくこの手紙を書きながら泣いてたんだろう。
「・・かなえ、、」
気づくと声に出していた。俺のその声ではっと起き、立ち上がる叶。
『葛葉ごめん!!!!』
そう言い、潰す勢いで俺を抱きしめる叶。
「・・ちがう、俺が悪かった」
なんとかそう言うと叶を引き剥がす。
俺は俺が見かけてしまった場面と、自分は遊びだったと思ったことをゆっくり話す。
叶は俺が話している間は口も挟まず黙って聞いてくれていた。
「だから、その・・俺こそごめん、叶。必死に走り回って探してくれたんだな。」
『ううん、、僕もびっくりした、葛葉のためならこんなにできるんだ、って』
そう言いながら叶はまた俺を抱きしめる。
俺は一度自室に戻り、荷物を起き、部屋着に着替えて部屋を出る。
「・・叶、寝よう」
そう言い手を差し出すと嬉しそうに俺の手を握り返す叶。
二人の寝室に行きベッドに寝転がる。
「・・やっぱ寝心地いいわ」
『・・そうだね』
叶はそう言いながら左手を横の俺に差し出す。
俺はいつもそうしていたように叶の腕に頭を乗せ、横をむく。
叶は俺の頭を包み込むように右手で俺の頭を抱き寄せ、俺は叶の香りに包まれる。
叶はちゅっと軽いキスを俺の頭に落とすと
『葛葉、おやすみ』
と言った。
俺は答えずに少しだけ叶の服を強くにぎる。叶はそれに気づいてこたえるように少しだけ強く俺の頭を抱き寄せる。俺は心の底から安心して眠りに落ちた。
おしまい
コメント
7件
まじで大号泣です 、、 ほんっっとに過去一大好きです 、 もうてぇてぇ過ぎるし言葉の選び方 、?好みすぎてもう大感謝です !!
テラーノベルで初めて泣いた😭素敵な作品をありがとうございます。
やばい 今まで見た夢小説の中で一番好きかもしれない🤦♀️ まじで好きすぎる🫶🏻️💓