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#異世界転移
花月夜れん
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ユキ
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第七十一話 それぞれの未来
「未来は、突然見つかるものじゃない。小さな選択を重ねた先に、少しずつ見えてくる。」
八月。
夏休みの街は、
いつもよりゆっくり時間が流れているように見えた。
湊は朝からパソコンに向かっていた。
画面には、
先月のイベントで撮影した写真が並んでいる。
一枚。
また一枚。
撮った写真を見返していく。
笑顔。
会話。
真剣な表情。
文化も言葉も違う人たちが、
一緒に過ごしていた時間。
その中から、湊は数枚を選んだ。
イベントの担当者から、
写真を紹介するために
使わせてほしいと言われていた。
以前なら、それだけで嬉しかった。
けれど今は、それ以上に考えるようになっていた。
「どうしたら、もっと人の気持ちが伝わる写真を撮れるんだろう。」
写真を仕事にしたい。
そう思い始めてから、
写真を見る目も少し変わった。
午後。
湊は一人で写真館を訪れた。
以前から気になっていた場所だった。
店内には、
家族写真や成人式の写真、
記念写真などが飾られている。
そこに写っている人たちは、
みんな自然な表情をしていた。
店員が写真を整理している。
湊は少し迷ったあと、声をかけた。
「すみません。」
「はい?」
「写真の仕事について、少し聞きたいことがあるんですけど……。」
店員は笑顔で話を聞いてくれた。
どんな仕事があるのか。
撮影以外に何をするのか。
必要な技術は何なのか。
湊はノートを取りながら、一つずつ質問した。
知らなかったことばかりだった。
写真を撮るだけが仕事じゃない。
撮影の準備。
人とのコミュニケーション。
写真の選定。
編集。
そして、
相手が何を求めているのかを理解すること。
「写真って、思ってたよりずっといろんなことが必要なんですね。」
湊が言うと、店員は笑った。
「そうだね。でも、だから面白いんだと思うよ。」
その言葉が、湊の心に残った。
一方、紬も夏休みを使って、
将来について考えていた。
大学で参加した活動の資料を整理する。
海外から来た学生たちと話したこと。
イベントで感じたこと。
留学中に経験したこと。
ノートに書き出していく。
その中で、何度も出てくる言葉があった。
「人と人をつなぐ」
紬はその言葉を見つめた。
国が違う。
言葉が違う。
育った環境が違う。
それでも、話すことで分かり合えることがある。
自分は、そのきっかけを作れる人になりたい。
そう思うようになっていた。
夜。
いつものように、湊と紬は電話をしていた。
「今日は何してた?」
紬が聞く。
「写真館に行ってきた。」
「写真館?」
「うん。写真の仕事について話を聞いてきた。」
「どうだった?」
「知らないこといっぱいあった。」
湊は少し笑った。
「でも、もっと知りたくなった。」
「そっか。」
紬の声も嬉しそうだった。
「私も今日、将来のこと考えてた。」
「どんな?」
「まだちゃんとは決まってないけど……。」
紬は少し間を置いた。
「いろんな人が分かり合えるようなことがしたい。」
「国とか関係なく。」
湊は黙って聞いていた。
「それって、紬が留学してたときに感じたこと?」
「うん。」
「だったら、いいと思う。」
「ありがとう。」
しばらく話していると、紬が突然言った。
「ねえ。」
「ん?」
「私たち、昔よりちゃんと未来の話するようになったね。」
湊は少し笑った。
「確かに。」
高校生の頃は、
卒業したらどうするなんて、
あまり考えていなかった。
その時その時を大切にしていた。
でも今は違う。
自分たちの未来を、
自分たちで選ばなければならない。
「ちょっと怖いけどね。」
紬が言う。
「何が?」
「この先、今までみたいに会えなくなるかもしれないこと。」
湊は少し黙った。
大学。
仕事。
新しい友達。
新しい生活。
これから先、二人の生活が
今まで以上に変わっていく可能性はある。
「……でも。」
湊が口を開く。
「会えない時間が増えても、なくなるわけじゃないよ。」
「写真だって撮れるし。」
「それ、湊らしい。」
紬が笑った。
「じゃあ、これからも写真送ってね。」
「うん。」
電話を切ったあと。
湊は机の上のノートを見る。
今日聞いたこと。
これから学びたいこと。
そして、自分の夢。
まだ答えは出ていない。
でも、昨日より少しだけ前に進めた気がする。
カメラを手に取る。
窓の外には、夏の夜空。
湊は空を見上げた。
——カシャッ。
未来が写るわけじゃない。
でも、今日の自分を残すことはできる。
だから、一歩ずつでいい。
明日も写真を撮ろう。
明日も、自分の未来を考えよう。
そう思いながら、湊はカメラを机に置いた。
📷 Photo.071「それぞれの未来」
撮影日:8月8日
同じ未来を選ばなくてもいい。
それぞれが自分の道を見つけて、
その道を歩いていけばいい。
いつかまた振り返ったとき、
「この道を選んでよかった」と思えるように。
コメント
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みぅです🤍🥀 第71話、読み終えました。 湊が写真館で仕事のことを聞いて、紬が「人と人をつなぐ」って言葉を見つめ直す場面、すごく好きです。二人がそれぞれの道を選びながらも、電話越しで「会えなくてもなくなるわけじゃない」って言い合える関係、尊すぎる…。 最後の「未来が写るわけじゃない。でも、今日の自分を残すことはできる」ってフレーズ、胸にきました。一歩ずつ進んでいく二人を、これからも見守りたいです📷🌙