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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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美猿王が捕まった事は天界中に知れ渡った。

そして、毘沙門天から報告を受けた天帝は、神々達に霊霄殿(レイショウデン)に集まるようにと毘沙門天に文を送らせた。

美猿王は霊霄殿の地下牢獄に投獄されていた。

天界の近衛兵達が交代で鎖に繋がれて眠ったままの美猿王の監視をしていた。

「しっかし、須菩提祖師殿を殺し不老不死の術を奪ったとはな…。美猿王の悪い噂は本当だったか。」

「ただのガキにしか見えないけどな…。」

監視役の2人が眠っている美猿王を見て話していた。

カツカツカツ。

地下牢に繋がる階段から誰かが降りて来る足音が地下に響き渡った。

監視役の2人は現れた人物を見て驚いた。

鮮やかな長めの青髪は左サイドに流されていて、長めの前髪から見える綺麗な緑色の瞳は色白な肌をより一層白く見せていた。

左の目の下には魚の鱗が付いている。

監視役の2人は男を見て敬礼をした。

「「捲簾大将(ケンレンタイショウ)!!お疲れ様です!!」」

捲簾大将と呼ばれた男は天帝の御側役であり、天帝の守護を任せれている。

近衛兵の中でも最も上の位の人物である。

「ご苦労。」

そう言って捲簾は寝ている美猿王に視線を向けた。

「捲簾大将。ここには何か用事があって来られたのですか?」

「あぁ。天帝の命令で美猿王の顔を見に来たんだ。」

監視役の1人に投げ掛けられた質問に捲簾は答えた。


ここに来る少し前ー


天帝の前には、御簾(スダレ)が垂れていて捲簾は御簾の側でいつも待機している。

毘沙門天が天帝に美猿王を捕獲したと言う報告をしている姿を捲簾はジッと見ていた。

毘沙門天の服に返り血がかなり付いていた。

「毘沙門天の服に付いている血はどうした?」

天帝が毘沙門天の服の血について尋ねた。

毘沙門天は一瞬だけ眉をピクッと動かした。

「あぁ。これは美猿王の暴走を止めた時に付いた血ですね…。すみません、着替えてから天帝の前に出るべきでした。」

「いや、此方が早く呼んでしまったから謝る事はないよ。もう下がって構わないよ。」

「はい。失礼します。」

毘沙門天は捲簾に一瞬だけ視線を向けてから出て行った。

「捲簾。」

天帝が捲簾の名を呼ぶと、捲簾は御簾の前で跪いた。

「毘沙門天の行動を監視して下さい。それとお前の目で一度、美猿王の顔を見て来なさい。」

「分かりました。美猿王の顔を…ですか?」

「あぁ。お前の目に美猿王がどう見えるのか見て来なさい。」

「はい…。分かりました。」

捲簾が地下牢獄に来た経緯はこのような理由だった。

眠っている美猿王の目元は泣き腫らした痕があった。

捲簾は、須菩提祖師から不老不死の巻き物を奪い、弟子達を殺した後には思えなかった。

あんな酷い事をした後に泣くものなのか…と。

「捲簾大将?どうかなさいましたか?」

監視役の2人が捲簾の顔を覗いた。

「いや、用はもう済んだ。しっかり監視をしておけよ。」

「「はい!!」」

捲簾は監視役の2人を背にし地下牢を後にした。そして、毘沙門天の文は各地の神々達に届き霊霄殿に集まって来ていた。

霊霄殿の警備をしている近衛兵だけでは足りず、海の宮殿を警備している近衛兵隊も霊霄殿に駆り出されてた。

霊霄殿の入り口の警備をしていた捲簾にある人物が声を掛けた。

「こんな所にいるなんて珍しいじゃん?捲簾。」

そう声を掛けて来たのは天蓬元帥だった。

天蓬と捲簾は古い友人であった。

「人手が足りねーんだよ。だからお前も呼ばれたんだろ。」

「そうそう。美猿王の裁判を見に文が届いてない奴等も見に来てんぞ。」

天蓬はそう言って門の外を指差した。

捲簾も門の外に視線を向けると、沢山の神々達がこちらを見ていた。

「牛魔王が兄弟である美猿王を売るとは思わなかったよな?」

捲簾にとってこの言葉は初耳だった。

「兄弟?どう言う事だ?」

「え?何、知らないの?牛魔王と美猿王は兄弟盃を交わした仲で六大魔王達とも行動を共にしてたんだよ。俺の宮殿から武器や盾を奪いに来た話をしたろ?アレは牛魔王と美猿王の2人の仕業なわけ。」

天蓬は牛魔王と美猿王の兄弟盃を交わした話と宮殿の話を捲簾に話した。

捲簾は話を聞いて驚いた。

牛魔王と共にあらゆる悪さをして来た美猿王なら、須菩提祖師を殺し不老不死の巻き物を奪い弟子達を殺すのは有り得る話に変わって来た。

やはり、美猿王は本当に殺したのだろうかと捲簾は思った。

同時に、兄弟である美猿王を売るのかとも疑問に思った。

「だとしら、牛魔王は美猿王を売る理由が分からん。」

「それは俺も同感。ほら、噂をすれば…だ。」

「?」

門の外から妖気を天蓬と捲簾は感じた。

牛魔王が混世以外の六大魔王を連れ、霊霄殿の敷地内に繋がる門を潜り抜けて来ていた。

「どうやら、美猿王を捕まえた牛魔王を毘沙門天様が呼んだみたいだぞ。あ、毘沙門天様が牛魔王を迎えに来た。」

そう言って天蓬は捲簾に小声で話した。

牛魔王と毘沙門天が話している姿を天蓬は捲簾は見ていた。

「俺、毘沙門天様が牛魔王と仲良かったなんて知らなかったんだけど。」

捲簾はそう言って天蓬に質問した。

「捲簾が思っている事はここにいる皆が思ってると思うぞ。それを口にしたら駄目な雰囲気をあの2人が作り出してんのに気付いてるか?」

天蓬の放った言葉の意味を理解していた。

毘沙門天と牛魔王が顔を合わせた瞬間から、誰も口を出させないような雰囲気を一瞬で作り出した。

天蓬と捲簾だけは口をあえて開いていたのだ。

牛魔王率いる六大魔王と毘沙門天が天蓬と捲簾がいる霊霄殿の扉の前まで歩いて来た。

「牛魔王。此方が天帝の御側役の捲簾大将です。そして、宮殿の近衛兵隊長の天蓬元帥です。」

毘沙門天が牛魔王に2人の名前を教えていた。

「あぁ、貴方が天帝の…。天蓬元帥とは一度手合わせした事がありますよ。」

牛魔王の丁寧な言葉に捲簾は驚いていた。

妖が人のように丁寧な言葉を使えるのか…と。

「そろそろ宮殿の武器や盾を返して欲しいんだけど?毘沙門天様も言って下さいよ。そうじゃないと俺が上から愚痴を言われるんですから。」

「それは貴方の責任でしょう?宮殿の警備をするのが天蓬元帥の仕事でしょう。」

「あー。そう言う事を言っちゃいます?」

「さ、牛魔王御一行。席に御案内します。」

毘沙門天は天蓬との会話を切り上げ霊霄殿の扉を開け中に入って行った。 中に入る際に牛魔王は捲簾に視線を向けた。

捲簾は牛魔王の冷たい視線を感じ、去り行く牛魔王一行の背中を見つめた。

「何だよあの言い方。牛魔王の言いなりかよ毘沙門天様は。」

天蓬はそう言って毘沙門天の背中を睨み付けた。

「この美猿王の裁判…。何か裏がありそうだな。」

「裏?」

「俺の考え過ぎかもしれんがな…。」

「捲簾の考えは当たるからな。普通の裁判ではないだろうな。」

捲簾は再び、天帝の言葉と美猿王の姿を思い出していた。 須菩提祖師は美猿王の事をかなり可愛がっていたと天帝から捲簾は聞いた事があった。

この、霊霄殿に法事で訪れた際に美猿王は門の外で須菩提祖師の帰りを待っている姿を一度だけ捲簾は見ていた。

その姿は本当に殺気など無く、須菩提祖師の帰りをただ黙って待っている子供のようだった。

須菩提祖師と美猿王が話している姿は本当に微笑ましかった。

だからこそ、今回の裁判はおかしいと捲簾は思っていた。

「捲簾大将!!招待客の確認が終わりました!!」

近衛兵の1人が捲簾に報告をしに来た。

どうやら捲簾が1人で考えている間に文を貰った

神々達が霊霄殿の中に入ったらしい。

「ご苦労さん。お前は下がって良いよ。」

「ハッ!!失礼します!!」

捲簾の代わりに天蓬が答えていた。

天蓬の言葉を聞いてた近衛兵は走り去って行った。

「さ、そろそろ始まるみたいだし行くか。」

「あ、あぁ…。」

捲簾は心にモヤモヤを残したまま天蓬と共に霊霄殿の中に入った。


孫悟空 十八歳

頭がガンガンする…。

バシャァァ!!!

頭から冷たい水を思いっきり掛けられた。

「起きろ!!この罪人が!!」

ヒリヒリする瞼を開けると、目の前に武装をした兵士が筒を持っていた。

ここは…どこだ?

カチャッ。

鎖の音が耳に届いた。

俺は視線を下に向けると、両手足を手錠で拘束され首輪を巻かれていた。

「何だよ…コレ。」

「さっさと立て!!」

「ここはどこだよ。」

「ここは霊霄殿の地下牢だ。今からお前の裁判が始まる。」

霊霄殿?

あぁ…、爺さんの法事に付いて来た事あったな。

俺は妖だったから中には入れなかったけど。

裁判って言ったかコイツ?

「は?裁判だと?」

「お前は須菩提祖師殺しと罪の無い人間を殺し不老不死の巻き物を奪った罪が重なっている。神々達がお前の処罰を決めるんだよ。」

グイッ!!

兵士はそう言って首輪に繋がっている鎖を引っ張った。

「ヴッ!?」

いきなり首を絞められ付けられ息が出来なくなった。

無理矢理立たされた俺は息を整える事に必死だった。

「ゴホッゴホッ!!俺は殺してねぇよ!!」

「お前の言う事を誰が信じるか。さっさと来い。」

兵士は俺の言葉に耳を傾ける事は無く、首輪に繋がっている鎖を引っ張り俺を地下牢から引っ張り出した。

俺は何度も兵士に爺さんを殺してない事を話したが、一言も言葉を発しずに階段を登り続けた。

何なんだよ!!

爺さんを殺したのは牛魔王だろ!?

何で誰も俺の話を聞いてくれないんだよ!!

そんな事を考えていると、兵士が1つの扉の前で足を止めた。

「お前は罪人で死ぬべき存在なんだよ。」

兵士は冷たい言葉を放ち扉を開けた。

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