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この話は私の人生と共にあります。
家も、学校にも不自由さを感じるようになったのはいつからだろうか。窮屈な生活から抜け出したい。と頭の中でずっと考えている。
放課後、家に帰るのも億劫に思えたので、少し寄り道をすることにした。キラキラと木漏れ日の溢れた森に入ると、見覚えの無い神社を見つけた。廃れていて読みにくいが、鳥居の真ん中には「御上神社」と書かれているように見える。なぜかは分からないが、すごく惹かれた。吸い込まれるように鳥居を潜り、長い階段を登った。階段を登り切った後、長椅子に腰掛けて休憩していると、ザッザッ、という箒を履くような音が聞こえた。振り向くと、1人の少女が掃除をしていた。身長は低めで巫女装束を纏い、ふわふわと揺らいでいる白髪をひとつに結っている。その髪の白さに驚いた。染めているのだろうか。彼女を凝視していると、彼女はこちらを振り向き、目を見開いた。小さな口はぽかんと開き、手に持っていた箒は音を立てて手から離れた。美形な子だな、なんて呑気なことを思っていると、こちらに来て話しかけてくれた。「……あの…」声がとても震えていた。もしかしてここは立ち入り禁止の場所なのだろうかなんて思ったが、流石に違うだろう。「こんにちは…?」そう言うのがやっとだった。挨拶をしただけなのに、彼女の目には涙が浮かんでいた。「えっ」と、思わず口に出してしまった。両目から大粒の涙がぽろぽろと落ちる。その姿はとても綺麗だったけれど、そんなことを言っている場合じゃ無い。泣かせてしまった。
「ご、ごめんなさい!泣かせるつもりじゃなくて…!」
「ちがうの…ずびっ」
…どうしよう。
彼女の左目は琥珀色というのだろうか。とても透き通っていて美しかった。右目は、事故にでも合ったのか、赤黒かった。
そんなことを思っていると彼女は泣き止み、こちらに話を振ってくれた。
「ごめんなさい。急に泣いてびっくりしたよね。」
「いや、全然。びっくりはしましたけど。」
彼女はなぜか懐かしそうにこちらを見つめる。なんだかいたたまれない。この気まずい空気を壊したくて、私は自己紹介をした。
「私は雨宮椛(あまみやもみじ)っていいます。」そう言うと、彼女はまた泣きそうにならながらも言葉を発した。
「私は、麗(れい)。」麗…と復唱する。名前まで綺麗だ。
「えっと、よろしくね。麗ちゃん…?」向こうはタメ口だったので、私もタメ口で行かせてもらう。そうすると、麗ちゃんは嬉しそうに、それでも悲しそうに、「うん、よろしく、椛。」と言った。
ここから、私の人生は大きく変わるのである。