テラーノベル
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呆然とした表情を浮かべて自らの愛剣の刃だった物を見つめ続けるズィナミの耳に、レイブの素っ頓狂な声が届く。
「やっべぇ、危なかったぁ! 首に来るっ、思った瞬間にそこだけ固めて良かったぁっ! 普通なら死んじゃうでしょ? あれぇっ!」
「っ! ? ? え、えええぇ?」
「ん?」
自分が無意識の内に何をしたか全く理解していないレイブの短過ぎる疑問の声に答えた訳では無いだろうが、次の瞬間ズィナミは血走った目で彼を捉えながら瞬時に間合いを詰めて叫んだのである。
「く、コイツで終いだぁっ! ほれっ! 死んじゃいなぁっ!」
言いながら、崩れ落ちた刀身の『それ専用』の刀を投げ捨てたズィナミは新たに握り込んだ二本の短剣を両手にしながらレイブに対して錐揉(きりも)み状に回転しながら突撃してきたのだった。
これまでの横の動きではなく、突如として襲い掛かって来た縦回転であったが、レイブは本当ギリギリ、顔を斜めにずらす事で何とか紙一重、避け切ったのである。
「プハァッ! 何ですか、今のぉ! ヤバイでしょぉ! ってか、ヤバッ! くっ、くっ!」
レイブの言葉を待たずに襲い掛かったズィナミの両手に握られた短刀の刃を粉々に砕いた後でレイブは再び声に出す。
「も、もう! 何なんですかぁ伯母さんっ! 殺す気なんですかぁ? ほらほら、高そうな剣もナイフもボロボロじゃないですかぁ! もうっ! 止めてくださいよぉ! 仲良くしてくださいよぉっ!」
だそうだ。
一方、自らの師匠から受け継いだ、と言うか生まれた里に伝えられてきた『それ専用』の剣と、これまで鬼王として戦い倒した相手から引き継いだ『それ専用』の短剣、ナイフ二振りを粉々に砕かれてしまったズィナミ・ヴァーズは呆然としながら、屈託無さそうに佇むレイブに声を掛けた。
意外にも満面の笑みを浮かべてその声音も喜びに溢れていたのである。
「はっ、はははは! 凄いじゃないかレイブっ! 驚いたよ、お前ってば本当に凄いんだなっ! はははは、あははははぁっ!」
「え? そうなんです? んで、結局僕ってぇ、どうなるんですかね? ここに置いて貰えるんでしょうか? あの、ギレスラとペトラも、ですけど?」
「隙ありぃ!」
ドゴドゴドゴドゴバキバキバキゴンッ!
「ぐ、ぐはぁっ! げふげふ、ごふんごふんっ!」
「どうだい? 参ったかい?」
「かぁっ、は、はい…… 参りました…… ま、まさかこんな卑怯な不意打ちを受けるとは、夢にも思いませんでした…… か、かはっ! 貴女伯母さんの勝ちで、もう、それでも良いですぅ、貴女がそれで良いのなら、ですけどぉ~、く、くはっぁ! どうですか?」
オドオドしながら問いかけたレイブに鋼体術を解いたズィナミは答える、満面の笑みでである。
「勿論です! 私の勝ちなのですっ! なははは、我最強、なのですっ! とは言え…… うーん、只の負け犬の貴方の処遇は一体どうしましょうかねぇ? 私の大切な剣やナイフも壊してくれた訳ですから、当然、宿舎や校舎で暮らさせる訳には行かないけどおぉ~、おっ! そうだっ! 学院の敷地内にこのスリーマンセルが惨めに暮らせる場所を作ってあげれば良いんじゃ無いのっ! でしょ? カゲト、エンペラ、それにパリーグっ! すぐに準備してあげて頂戴な! レイブ、ギレスラ、ペトラ、貴方達がそこで暮らす事を許可しますっ! 今まで通り良く働いてここでの居場所を確保なさいなっ! あははは、楽しくなってきたわね、良しっ、これからはもっと鍛えなくちゃだわぁっ!」
酷い言い様であった、ステゴロに刃物を持ち込んだくせにご都合主義が凄いな。
まあ、勝てば官軍、そう言う事なんだろうか?
素直なレイブは抗議の声ではなくいつも通りの風情でぶっ倒れたまま答えた。
「は、はあぁ、ありがとうございます、かな?」
取り敢えずお礼の言葉を口にしたレイブの後ろで、名指しで面倒事を指示されてしまったデスマンとライオン、グリーンドラゴンの溜息が深く吐かれた中で、ウキウキした声で自分達の兄であると認めた少年に駆け寄る稚竜と幼い豚猪(とんちょ)の嬌声が響いたのであった。
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