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#年の差
水無月 京
836
鷹槻れん

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鷹槻れん

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#強引
遊園地までは高速を使って一時間程の道のりだった。
大人にとってはさほど長くない距離でも、子供にとっては退屈してしまうかもしれない。
そこで希海が車内で飽きてしまわないよう、あらかじめ用意しておいたアニメのDVDを流すことにした。
DVDが再生されて後部座席のモニターに見慣れたアニメが映し出される。
「あ、これ、ぼくのすきなやつ!」
「よかったな」
昴がバックミラー越しに振り返って笑いかけると希海は画面から目を離さず嬉しそうに頷いた。
「うん!」
それから車内にはアニメの楽しげな音声と時折聞こえてくる希海の笑い声が響き始める。
暫くして昴は隣に座る羽衣子へと視線を向けた。
「悪かったな。勝手に遊園地行きを決めちまって」
突然の誘いになったことを気にしているのか昴が少し申し訳なさそうに言うと羽衣子は、後部座席で楽しそうにアニメを見ている希海を振り返りながら微笑んだ。
「いえ。希海くん、すごく嬉しそうですし、広瀬さんや春川さんも一緒なので、すごく楽しくなりそうで私もワクワクしてますよ」
「そりゃ良かったよ」
羽衣子の言葉に昴は安心したように笑う。
車内は終始穏やかな空気に包まれていた。
やがて一行を乗せた車は高速道路を降り、目的地である遊園地へと到着する。
今日は平日だというのに人気の遊園地なだけあって人は多い。
駐車場から入り口へ向かうと、そこには既に大勢の人が並んでおり、入場口付近はかなり混雑していた。
「はやくはいりたい!!」
遊園地が見えたことで気持ちが一気に高まった希海は待ちきれない様子でその場で足を動かすけれど列はまだ進みそうにない。
「順番だから、もう少し待とうな」
見兼ねた乙哉がしゃがんで希海と目線を合わせ、優しく宥める。
「でも、はやくあそびたい……」
「分かる分かる。でも、もうちょっとだけ我慢しろって。な?」
乙哉がそう言い聞かせながら抱き上げると、皐月も声を掛けた。
「それじゃあ、待っている間に何から乗るか決めましょうか」
そう言いながらスマートフォンを取り出して遊園地の公式アプリを開くと、画面には園内のアトラクションが一覧で表示された。
「ほら、こんなにありますよ。希海くんは何に乗りたいですか?」
「えっと……これ!」
希海は画面を覗き込み、目についたアトラクションを指差す。
「これ? いいですね。それじゃあ次はどれにします?」
「うーんとねぇ、これ!」
「それじゃあ、これも候補に入れておきましょうね」
皐月が笑いながら次々と候補を選んでいく。
すると先程まで、「早く入りたい」とぐずっていた希海はすっかり機嫌を直し夢中になって画面に集中し、そんな微笑ましい光景を昴と羽衣子は後ろから眺めていた。
ようやく中へ入ることが出来ると、希海は満面の笑みを浮かべながら辺りをきょろきょろと見回した。
「あれいいな! あっちのなに?」
目に入るものすべてが珍しいのか希海は次々と指を差しては乙哉や皐月に尋ねていく。
そんな中、ふと希海の視線がある家族のところで止まった。
その家族はキャラクターの耳が付いた帽子やカチューシャを身に着けていて、それを見た瞬間希海の瞳がぱっと輝いた。
「あれ! ぼくもあれつける!」
自分も同じものを身に着けたいと嬉しそうに言い出す。
「ああ、ああいうの流行ってるんだよな」
乙哉がそう言うと皐月が昴を見上げた。
「どうします?」
「好きなの買ってやれ」
昴があっさりと許可を出したことで一行はまず園内のショップへ向かうことになった。
店内に入ると希海は並べられた帽子やカチューシャを夢中になって見て回る。
そして暫く悩んだ末に一つの帽子を手に取った。
「これ! ぼく、これがいい!」
それは犬の耳が付いた帽子だった。
希海自身のものが決まりこれで終わりかと思ったのだが、
「おとくんはこれで、さっくんはこっち! パパはこれでういちゃんはこれね!」
希海は次々と商品を指差して全員分を選び始めたのだ。
どうやら自分だけが身に着けるつもりは最初からなかったらしい。
予想外の展開に昴が思わず眉を寄せる。
「希海、お前だけ付ければいいだろ?」
「やだ! みんなでつけるの!」
「いや、俺は……」
希海の言葉に昴が困ったように言葉を濁す。
昴がこういうものを身に着ける柄ではないことは皆もよく分かっていたので乙哉が希海をなだめるように声を掛ける。
「希海、パパはこういうの苦手なんだよ。代わりに俺たちが付けるからさ。な?」
「やだ!」
しかし希海は首を横に振る。
「パパも!」
自分の思い通りにならないことが悲しくなってきたのか次第に目が潤み始め、今にも泣き出してしまいそうな希海を見た羽衣子は昴へ視線を向けて、
「昴さん、駄目ですか? 折角希海くんがお揃いの物を選んでくれたので……私も付けたいです」
そう言って希海が選んだクマの耳が付いた帽子を手に取った。
そして、少しだけ照れながら昴を見る。
「昴さんと一緒に……」
その言葉に昴は何も言えなくなってしまった。
コメント
1件
うわあ、今回すごく温かい気持ちになりましたね。希海くんが「みんなでつけるの!」って譲らなかったところ、子どもの純粋な想いが伝わって胸がほっこりしました。昴さんが最初は「俺は…」と渋ってたのに、羽衣子さんの「昴さんと一緒に…」の一言で何も言えなくなるところ、恋愛としても家族としてもグッときました。遊園地の空気感も鮮やかで、次の展開が楽しみです!