テラーノベル
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ドサッ
現在
僕は今、絶賛片思いの人に押し倒されている
「な、にして…?」
「んー~?押し倒した。」
「…せやから‼なんで‼押し倒したのかって聞いてんですよ⁉」
「…うまそ…、」
「ッ~~~ー…//💢」
あかん…日本語が伝わらへん
なんでこうなった⁇
数時間前まで一緒に何故か二人で飲み会的なことをしていたはず…
それもなぜかわからないが
今。
ラブホテル。通称ラブホにいる。
いや…なんで?
・・・数時間前・・・
「チッ」
保科は小さく舌打ちをした。
今日は鳴海と一緒に飲むことになり、先に来て、「行くぞ」
とかいってくれへんかな~。とか抜かしていた
自分が馬鹿だった5分過ぎても来ない。
と、道に目をやると少し背の高いイケメンが走ってくる
「はぁ…6分25秒遅刻です。」
「いやッ、細かいなっ⁉⁉」
「誘っておいて遅刻とはさすがですね鳴海た・い・ちょ・う」
「ええい‼セーフだセーフ!!さっさと入るぞっ」
暖簾をくぐり、油と煙で茶色く燻された木製の引き戸を開けると、威勢のいい店主の声が響いた。
案内されたのは、店の最奥にある狭い座敷席。
鳴海はだぼっとした私服のパーカーの袖を捲り上げながら、不満げに足を崩して座った。
対する保科は、仕立ての良い黒のシャツ。休日であっても崩れないその佇まいは、鳴海と対照的にどこか育ちの良さを感じさせた。
「はい、メニューです。何飲みます? 生ビールでよろしいですぅ?」
「ふん!ボクはレモンサワー。一番でっかいやつ」
「……はいはい。すみません‼生一つと、メガレモンサワー一つ!」
保科が手慣れた様子で店員に注文を通す。
「おい保科。これ、お前が頼んだお通しのポテトサラダ、ボクが半分食っていいか」
「いや勝手にもう食うてますやんww箸つけた後に聞くのやめてもらえます?」
「ん、美味い。この店、意外とやるな✨」
「えらそうやなぁww」
「生とレモンサワーです‼」
運ばれてきたジョッキを合わせる。
「お疲れ」という鳴海の低い声と、「乾杯」という保科の少し高めの声が重なった。
冷たい酒が喉を潤していく。鳴海はメガジョッキの半分近くを一気に飲み干し、ぷはあ、と品のない息を吐いた。
「生き返るぅ……。今週はマジで地獄だったんだぞ。上のジジイどもが、新しいナンバーズ1の予算案でグチグチ言ってきて…ボク様の戦績見ろってんだよ、全部10秒で片付けてやるっ!!!」
むすっとした顔で酒を入れ、ゴンっとジョッキを置く
「あんたの素行が悪いから目をつけられるんです。だいたい、先月の報告書の提出締切、何日遅れました? 四ノ宮長官が生きてはったら、今頃大目玉どころか独房行きですよ」
「うるさいッ‼あれはゲームのイベント期間と重なったから不可抗力だっ‼」
「もー。どこが不可抗力ですか!!」
と保科は呆れ果てたように笑い、焼き鳥の盛り合わせを注文した。
保科は、鳴海弦という男が嫌いではなかった。むしろ、その圧倒的な強さと、それに見合わない私生活のクズさのギャップに、妙な居心地の良さを感じてすらいる。
「……保科」
「ん? なんです」
「お前、最近また強くなっただろ…」
鳴海が、レモンサワーのグラスの縁を指でなぞりながら、ふとトーンを落とした。
その目は、いつもの気の抜けたものではなく、なんだか虚ろだった
「そうです? ほんのちょっとは、まあ、?」
「ふん。そうか」
少し沈黙
だが、それも次の瞬間には、運ばれてきた焼き鳥の盛り合わせの匂いによって霧散した。
「あ、美味そう。保科、これくれ」
「どうぞ。って…あっ!!ネギ串は僕のもんですッ!!」
「やだねー‼」パクッ
「んもー」
>>>
「すみません、レモンサワー、おかわり。今度はもっと濃いめで」
「ちょお、鳴海隊長。あんた明日非番やからって調子乗ったらあかんですよ…。セーブしなはれ…」
「うるせー。今日は飲むって決めてんだよっ。」
「なんでやねん‼」
鳴海のペースは、そこから目に見えて加速していった。
鳴海は酒に強くないわけではないと思う
今の鳴海は、完全にオフ モード。脳のスイッチを切り、ただひたすらに酒を胃袋に流し込んでいる。
メガジョッキが二つ、三つと空になり、代わりに空の皿がテーブルに積み重なっていく。
「…あー…//」
不意に、鳴海が短い声を漏らし、そのままテーブルに突っ伏した。
ドサリ、と鈍い音がして、空のジョッキが危うく倒れそうになるのを、保科が目にも留まらぬ速さで静かに支える。
「……鳴海隊長?」
「んー……」
パーカーのフードから覗く髪が、テーブルの木目に擦れている。
保科が覗き込むと、鳴海の耳の裏から首筋にかけて、ほんのりと赤みが差していた。普段の比較的白い肌からは想像もつかない、熱を持った皮膚の色。
「嘘でしょう。安レモンサワー4杯で出来上がってもうたんですか」
「……うっさい。酔ってない……。ボクは、いちゅでも、かんぺき、だ……」
ろれつが回っていない。
鳴海はテーブルに顔を伏せたまま、もぞもぞと動いて、今度は保科の方を向いた。片方の頬を木目に押し付けているため、整った顔が少し歪んでいる。
その目が、ゆっくりと開いた。
いつもなら、あらゆる動きを見切る冷徹な赤。だが今のその瞳は、酒の熱でトロンと潤み、どこか焦焦とした、無防備な光を湛えている。
「ほしなぁ……」
「はいはい、何ですか」
「お前、なんでそんな……細いんだよ」
「はあ? 骨格の話ですか?」
鳴海はのそりと手を伸ばした。
大きな、戦いで無数の傷が刻まれた手が、保科の黒いシャツの袖を掴む。そして、そのままぐい、と自分の方へ引き寄せた。
「わっ、ちょっと、危ないですて!」
体勢を崩した保科の顔が、鳴海の顔と、わずか数十センチの距離まで近づく。
鳴海の吐息から、レモンと、微かなアルコールの熱い匂いがした。男の匂い、けれどどこか甘い匂い。
「お前さぁ……いっつも、すました顔してさ……。俺のこと、クズだの何だの言うけど……」
「事実でしょうが。離してください、服がシワになります」
「嫌だね……。お前、俺が他の奴と飯食いに行ったら、怒る?」
「……え?」
保科の動きが、ピタリと止まった。
居酒屋の喧騒が一瞬で耳から消え去る。心臓が、ドクン、と大きく脈打った。
鳴海の潤んだ目が、じっと保科を見つめている。そこに計算や、いつもの不敵なからかいの色は一切ない。ただ、酔った頭で本能のままに紡がれた、あまりにも純粋で、傲慢な問い。
「……何、言うてますの」
保科は、自分の声が少しだけ震えたのを自覚した。
鳴海のその一言が、保科の胸の奥にある、鍵をかけた引き出しを容赦なくこじ開けてくる。
「怒るよな……? お前、僕の『一番』になりたいんだろ……? 知ってんだからな……」
「な、何を確認してるんですかあんたは……!」
保科の顔が一気に赤くなる。それが酒のせいではないことは、自分が一番よく分かっていた。
この男は、酔っていてもなお、人の本質を見抜く『目』を持っているのだろうか。それとも、単なるタチの悪い酔っ払いの戯言か。
「……鳴海隊長、もうお開きです。帰りますよ」
「やだ。まだ飲む。保科の奢りで、もっと高い酒飲む……」
「これ以上飲んだらあかん!てか、勝手に僕の奢りにすな‼」
いいツッコミ
這いつくばるようにして保科の腕に縋り付いてくる鳴海を、保科は必死で引き剥がそうとした。だが、酔っているとはいえ防衛隊最強の筋力だ。びくともしない。
むしろ、鳴海はさらに力を込め、保科の手首を掴んで、自分の額を保科の胸元に押し当ててきた。
「……ん、保科、あったかい……」
「ちょ、どこに頭埋めてますねん! 離れんかいッ!」
胸に押し当てられた鳴海の頭から、彼の髪の、お気に入りのシャンプーの匂いが微かに香る。
鳴海の大きな体が、まるで子供のように自分に甘えてきているという事実に、保科の理性は限界を迎えつつあった。
付き合っていない。
けれど、この夜の、この狭い空間の中だけで交わされる熱だけは、どんな公式な関係よりも深く、二人の輪郭を融解させていく。
「……ほんま、タチの悪い男やわ、あんたは」
保科は諦めたようにため息をつき、空いた方の手で、鳴海のボサボサの頭を、少しだけ乱暴に、けれど拒絶せずに撫でた。
鳴海は満足したように、喉の奥で小さく笑うと、そのまま本格的に寝息を立て始めた。
支払いをどうしようか、この男をどうやって第一部隊の宿舎まで運ぼうか。山積みの問題を前にしながらも、保科の口元には、どうしても隠しきれない苦笑いが浮かんでしまった
コメント
1件
わあ、もう冒頭の「ドサッ」から一気に引き込まれました!押し倒しから始まるインパクト、その後に回想で「なんで僕なん?絶賛片思いこじらせてるんですけど」って主人公のツッコミがめちゃくちゃ可愛くて思わず笑っちゃいました。関西弁のリズムが軽快で、鳴海隊長と主人公の距離感が絶妙ですね。今後の展開が気になりすぎます…!