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眩しい朝の光が、カーテンの隙間から差し込む。
隣で眠る真司の穏やかな寝顔を見て、私はそっと指先で彼の頬に触れた。
「……ん、起きたのか」
眼鏡のない、少し眠たげな瞳が私を捉える。
彼は私の腰を引き寄せ、もう一度シーツの中に閉じ込めた。
「もう行かなきゃ。今日、大事な会議でしょ」
「わかってる。……でも、あと五分だけ…いいだろ?」
そう言って私の首筋に顔を埋める彼は、会社で見せる鉄面の同期とは似ても似つかない。
私たちはあの日、雨の中で全てをさらけ出し、改めて「恋人」になった。
会社にはまだ内緒。
でも、自分たちの心の中にある境界線は、もうはっきりと引き直されている。
一時間後
私はいつものように、完璧に整えたオフィスカジュアルに身を包み、職場のフロアに足を踏み入れた。
「佐藤さん、おはよう。……あれ、なんか今日、雰囲気変わった?」
デスクに座るなり、後輩の恵麻が鋭い視線を投げかけてくる。
「そう? ちゃんと寝たからじゃないかな」
私は平静を装い、PCを立ち上げた。
恵麻はまだ疑わしそうな顔をしていたけれど、そこへ「おはよう」と真司がやってくる。
彼はいつも通り、隙のないスーツ姿で、冷徹なエリート同期の顔をしていた。
「佐藤、昨日の報告書。……ここ、少し修正しておいたから確認してくれ」
「……ありがと、助かるわ」
差し出された資料を受け取る。
指先がほんの一瞬、重なった。
周りからは見えない角度で、真司が私の薬指を、自分の親指でそっとなぞる。
それは、昨夜彼が私の指に贈ってくれた、目には見えない約束の証だった。
「……真司さん、佐藤さんにだけ厳しくないですか?」
恵麻が不満げに口を尖らせる。
真司は眼鏡をクイと押し上げ、無表情に答えた。
「優秀なライバルだからな。甘やかして追い抜かれたら困るだろ」
その言葉の裏にある、彼なりの深い愛と信頼。
私は、口元が綻ぶのを必死に堪えながら、キーボードを叩き始めた。
仕事は真剣勝負。
でも、このフロアの誰一人として知らない。
この冷静な同期・真司が、夜になればどれほど熱く、独占欲を露わにして私を愛してくれるのかを。
29歳の誕生日に始まった、一夜の過ち。
それは、私たちが本当の愛を見つけるための
最高に刺激的な大人の恋の始まりだった。