夜分遅くに失礼します、かんおです。
前回宣言した通り、今回は完全に妄想です。
死ネタですのでご注意ください。
注意書き、一話はじめに書いてます。必読。
…
教祖さまが、昨晩亡くなった。
ご自分で命を絶たれたそうだ。
自分が願う事によって人が消えていく事への罪悪感が祟ってのことらしい。
現場となった浴場はそれは悲惨なものだった。
真っ赤に染まった湯と教祖さまの真っ白だった服、ゆるやかに流れ続けるクラシック、悲哀に満ちた教祖さまの表情に真っ白な肌。
元々白かったのに、血の気が失せてもはや青い。
左の手のひらにパックリと開いた大きな傷。
切って、それを湯につけてを繰り返したようで、大きな傷と言っても、元々つけた傷をさらに大きく広げていったような、雑な切り口だった。
現場検証するまでもなく、死因は出血多量であると判明した。
無造作に床に転がっていたナイフが鈍く光を反射した。
教祖さまの部屋にあった遺書には、以下の文が書かれてあった。
『私は死のうと思う。もう、これ以上は私の心が耐えられない。
相談者の幸せを思い、神に願うたびに、人がひとり消えていく。私が願うから人が消える。
人に唯一与えられた自由とは、死を選ぶ事だ。私はそれを徒に侵してしまった。
幾たびも奪ってしまったその自由を行使して私がこれから死ぬのはとても自分勝手な事はわかっている。しかし、これ以上私はいてはならないのだ。
私のせいで人がこれ以上間違わないように願う。』
・
パタリと乾いた音が鳴って扉が閉まる。
呆然と自室のベッドに倒れ込み、目を閉じた。
脳裏にフラッシュバックするのは初めて教祖さまに救われた時のこと。
あの日から私の神は教祖さま…エーミールさまだった。
何があってもお役に立つと誓ったのに、あっけなく亡くなってしまった。
人とは、こんなに脆いものだったのだ。
教祖さまは強かった。こうなるまで、一切の異変を感じさせなかった。隠し通していた。
いったいそれはどれほどの苦痛だっただろうか。
辛い、苦しい、もうやりたくない、と言えていれば彼はもっと、もっと長く…。
1番近くにいた私が気づかなきゃいけなかった。
…いや、私がいたから……?
教祖さまを1番崇拝していたのは私だと言えるほどに、私は教祖さましか見ていなかった。
過度な期待。
プレッシャーを与え続けていたのは…私だ。
目を開けば視界が揺れる。
いけない、私が泣いては。
「…あれ?なんだコレ」
ふと机に目をやると、紙が置いてある事に気づく。
あの遺書と同じ紙だ。
転げるようにベッドから降りて急いで紙を取る。
やはり、教祖さまからのものだった。
『親愛なるゾムくん
本日をもってここは解体する。
ゾムくんも、これからは自由を奪うだなんて愚かな事はしないこと。
今までありがとう。
エーミール』
気になっていたんだ。
遺書の最後の一文。
『人がこれ以上間違わないように願う』
これはいったい何を指した文なのだろう、と。
気づいていたんだ。
私が人を殺している事に。
もしかしたら、それに罪悪感を感じて、心労が何倍にも膨れ上がってしまっていたのかもしれない。
教祖さまは聡明な方だ。
やはり、気づかないわけがなかった。
知ってなお、隠し通していた。
2人分の罪悪感を背負い続けていた。
彼が死んだのは私のせいだ。
それなのに、なんだ。ありがとうって。
なんなんだ。なんなんだよ。
恨み言を吐けばよかった。嫌だったら止めればよかった。投げ出せばよかった。
それなのに、相手が悪意あっての行動じゃないからとあなたは、ずっと押し殺してきたんですね。
手首に水滴が落ちた。
涙か。
いけない、手紙が汚れてしまう。
それに、私に教祖さまを想って泣く資格など無い。
止まらない。
後悔と申し訳なさと喪失感が一気に押し寄せてきて、もう止まらなかった。
膝から崩れ落ちる。
ぼたぼたと落ちる大粒の涙。
1人の部屋に響く嗚咽が無様で仕方がない。
どれくらい泣いただろう。
もうすっかり日は落ちていて、部屋はスタンドの光のみで真っ暗だった。
電気をつけようと立ち上がり、手紙を机に置けば、気づいた。
裏に書いてある短い文章。
「…これは……。ふ、…っ、なんて身勝手な方だ」
また一筋の涙が流れた。
しかし、不思議と先ほどよりは気分は軽くなった。
やはり、彼は強い。
私はそんな彼を、崇拝してやまない。
『PS.最後にもう一度だけ自由を奪うことが許されるのなら、どうか君がこれからの人生をまっとうしますように』
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願うたびにSUN値マイナス1D3っていう事は、きっとこういう世界線も存在したと思ってる。
個人的に自分は、ゾムさんはエミさんのことを「教祖さま」「エーミールさま」としか呼ばせないようにしていて、エミさんの本当の性格を見た時初めて「彼」っていう距離の近い二人称を使うようにしています。
小話。
コメント
2件
好きです‼(突然の告白)よんるまじ神…
うわすき、なんかもうすき、四流最高!!