テラーノベル
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文化祭まで。
あと三日。
学校中が。
慌ただしくなっていた。
「黒瀬ー! これ運んでくれ!」
「ああ」
玲は。
クラスメイトに頼まれた荷物を運ぶ。
「玲くん」
「ん?」
星羅が。
段ボールを抱えてやってくる。
「これ、どこに置く?」
「窓側でいい」
「了解」
二人で荷物を運ぶ。
「……」
星羅は。
ちらちら玲を見る。
「どうした?」
「ううん」
「さっきから見てるだろ」
「……だって」
星羅は少し笑う。
「文化祭楽しみだなって」
「そうだな」
「玲くんと一緒に回れるし」
「……」
「楽しみ」
星羅は。
嬉しそうに笑った。
その日の放課後。
教室には。
二人だけ。
「……疲れた」
玲が机に突っ伏す。
「お疲れ様」
星羅が。
玲の隣に座る。
「今日頑張ってたね」
「普通だろ」
「普通じゃないよ」
星羅は。
玲の髪を撫でる。
「頑張りすぎ」
「……」
「少し休んで」
「……そうする」
玲は。
そのまま目を閉じる。
星羅の肩に。
頭を預ける。
「……」
星羅の顔が。
一気に赤くなる。
「玲くん……?」
「ん……」
「寝た?」
「……少し」
「……」
星羅は。
玲の髪を撫でる。
「……可愛い」
小さく呟く。
「こんな玲くん」
誰にも見せたくない。
「私だけが知ってればいいのに」
その言葉は。
誰にも届かなかった。
――文化祭前日。
放課後。
クラスメイトたちが帰っていく。
玲と星羅は。
最後まで残っていた。
「これで準備終わりだな」
「うん」
「明日、楽しみだな」
「……うん」
星羅は。
少し不安そうだった。
「どうした?」
「……昨日のこと」
「2017年?」
「うん」
「まだ気になる?」
「……」
「俺もだ」
「……」
玲は。
星羅の手を握る。
「でも」
「?」
「今は」
玲は笑う。
「明日のことだけ考えよう」
「……」
「文化祭」
「……うん」
「二人で楽しもう」
「……!」
星羅は笑う。
「約束?」
「約束」
「絶対一緒に回る?」
「ああ」
「途中で誰かに呼ばれても?」
「星羅と一緒にいる」
「……」
「どうした?」
「……嬉しい」
星羅は。
玲の手を強く握る。
「明日」
「ん?」
「絶対に離さないから」
「……ああ」
その夜。
星羅は。
文化祭用の衣装を準備していた。
そして。
机の上には。
もう一つ。
小さな箱。
「……」
箱の中には。
玲へのプレゼント。
手作りのブレスレット。
「……」
星羅は。
それを見つめる。
「これ」
「玲くんにつけてもらおう」
そして。
もう一つ。
小さな紙。
『ずっと一緒』
その言葉を。
ブレスレットの内側に刻んだ。
「……」
星羅は。
微笑む。
「これなら」
玲がどこにいても。
「私のことを思い出してくれるよね」
そのとき。
スマホが震えた。
『文化祭の日』
『玲くんに近づく人間がいる』
「……」
星羅の表情が変わる。
『その人物は』
『あなたたちの過去を知っている』
「……誰?」
『まだ教えられない』
『ただ』
次のメッセージ。
『その人が、玲くんをあなたから引き離そうとする』
星羅の指が止まる。
「……」
『あなたはどうする?』
星羅は。
しばらく画面を見つめる。
そして。
返信。
『何もしないよ』
数秒後。
『本当に?』
星羅は。
小さく笑う。
『玲くんが自分で選ぶから』
送信。
しかし。
その表情は。
どこか怖かった。
「……」
スマホを置く。
「でも」
星羅は。
ブレスレットを見る。
「玲くんが私を選ぶようにする」
「……」
「誰よりも」
「私を好きになってもらう」
そして。
「もし」
星羅は。
ゆっくり笑う。
「邪魔する人がいたら」
目を細める。
「……私が守る」
――文化祭当日。
朝。
「おはよう、玲くん!」
「おはよう」
星羅は。
いつもより少しだけお洒落をしていた。
「……似合ってる」
「……!」
「可愛い」
「……」
星羅は固まる。
「……朝からそれは反則」
「本当のこと」
「……」
星羅は顔を隠す。
「……大好き」
「俺も」
その瞬間。
学校の放送が流れる。
『文化祭、開幕します!』
歓声。
拍手。
人の波。
「行こう」
「うん!」
二人で。
手を繋ぐ。
その瞬間。
玲のスマホに。
一件の通知。
『始まった』
玲は。
足を止める。
「……」
「玲くん?」
「……何でもない」
「……」
星羅は。
玲のスマホを見る。
そして。
その通知を見つける。
「……」
星羅の表情が。
ほんの一瞬。
消える。
「……玲くん」
「ん?」
「今日」
星羅は。
玲の手を握り直す。
「絶対に私から離れないでね」
「ああ」
「絶対?」
「絶対」
「……約束」
星羅は笑った。
しかし。
その笑顔の奥では。
すでに。
何かが始まっていた。
――文化祭。
そして。
二人の過去を巡る最後の舞台が。
今。
幕を開けた。
#青春恋愛
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夏希(なつき)
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奇蹟あい
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コメント
1件
第42話、読み終えたよ……文化祭前の甘い時間と、星羅の心の奥に潜む冷たい温度が、すごく綺麗に描かれてた。 玲くんに頭を預けられて真っ赤になる星羅も、ブレスレットに『ずっと一緒』って刻むところも、全部「好き」の裏側にある執着がにじんでて、重くて苦しくて、それでいて美しかった…… 最後の「私が守る」って言葉、一見ヒロインっぽいけど、その目が笑ってないところが、この作品の真骨頂だよね。 文化祭、何が始まるんだろう……🌙