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「お前らさぁ………」
いるまちゃん、こさめちゃん、ひまちゃんと着替えている時、ふいにひまちゃんがこちらをじっと見つめて口を開いた。
「…なんだよ」
「…なんかついてる?」
あまりにもジロジロ見られるものだから、さすがに心配になって尋ねる。
となりのいるまちゃんも着替える手を止めて不思議そうにひまちゃんを見ていた。
そしてふっとこちらを見たひまちゃんが真剣な顔で言う。
「いや、…まじでエロい体してるよなって」
「待って損したわ」
「えぇ…?」
「んははっ!笑笑すっちー引きすぎ笑笑」
予想の斜め上を行く言葉に、思わず間抜けな声が出た俺を見てこさめちゃんが大笑いする。
「すちもいるまもグループワンツーを争うくらい腹綺麗じゃね?」
「いや、でもね、それはわかるんよ」
相変わらず真剣な顔をしてこさめちゃんに話しかけるひまちゃんに、さっきまで笑いを引きずっていたこさめちゃんもうんうんと頷く。
「…こさめに言われたエグいワード思い出した。最悪や」
そんなふたりを見て、いつの間にか上の服も着替え終わって、シャツの襟を整えていたいるまちゃんが顔を顰めた。
「え、なにそれ」
「あー、性的な目で見れるわってやつ?」
「おい言うなよ」
「うわ………」
「こさめもすちに引かれてやんの」
男同士のノリとは言えたしかにいるまちゃんはそういうの嫌いそうだな〜と思っていると、
案の定、さっきよりもより一層眉間に皺を寄せたいるまちゃんがじと…っと2人を見る。
「いやでもめちゃくちゃ褒めよ?これ」
「えそうそう」
そう言って、2人はサササッとこちらに寄ってくる。
げっと顔をしかめたのもつかの間、逃げる前にがしっと腰をひまちゃんの両手でホールドされてしまった。
「めちゃくちゃ細いし」
「いるまくん食べてる?」
向かいではいるまちゃんがこさめちゃんにお腹をなぞられて、この世の終わりのような顔をしていた。
多分俺の顔も負けず劣らずで、ひまちゃんはさっきから腹筋を撫でたり腰をもんだり変な手つきばっかり。
しかも少しくすぐったい。
それに気づいたのか、後ろからにやついた声が聞こえてきた。
「もしかして、くすぐったい?笑」
ここでくすぐったいと認めれば確実にくすぐられるし、でも逆張りでくすぐったくないと言っても本当に?とかいわれて絶対くすぐられる。
どっち転んでも終わりだ…と悟った俺は、がしっとひまちゃんの腕を掴んで冷たくあしらう。
「着替えたいから、どいて」
「ええ〜すちの腹触り心地いいんだけど」
「なにそれ……」
意味のわからない不貞腐れ方をしたひまちゃんの言葉にこさめちゃんが食いつく。
「え!こさめもすっちーの腹触りたい!」
その言葉に、今までこさめちゃんにお腹を触られていたいるまちゃんがちらっとこちらを見て、そしてにやりと笑ってこさめちゃんの方を振り返る。
「こさめ、行け」
「おぉぃ仲間を売るなよ、!」
こさめちゃんから解放されたいるまちゃんは清々しい笑みを浮かべ、いるまちゃんの元から放たれたこさめちゃんは、ガバッと俺に抱きついた。
「くるしぃ…」
「すっちーってさ、自分でも言ってたけど首周りもエロいよね」
「おいいつからえろい部位の話になったんだよ」
「いやでもこさめの言うことわかるよ」
「…っくすぐったい、」
呆れるいるまちゃんをよそに、こさめちゃんもひまちゃんも細長い指で喉仏や首周りを撫でる。
そのくすぐったさから思わずきゅっと目を瞑ると、いたずらっ子のような笑い声が聞こえてきて、嫌な予感から目を開ける。
目の前には、にこーっと嫌な笑みを浮かべたこさめちゃん。
「じゃあ、こさめはいるまくんいくわ」
「おけ」
謎の確認が入った次の瞬間、
「わっ!?ちょっ、やめて、!やめて…っ笑」
「おい俺まで、!?、はなせ、っ笑」
嫌な予感は見事的中し、こさめちゃんはいるまちゃんを、ひまちゃんは俺を唐突にくすぐり始めた。
「すちの弱いとこどこだ〜?」
「ぁはっ、あはははっ、やめて!やめてやめて!笑」
「ほれまにき〜っ」
「お、いっ笑、やめろ、!って、笑」
何故か気づけば2人に馬乗りされながらくすぐられている。
もうそろそろ本当に限界だと言う所でぴたっと動きを止めたひまちゃんが、俺を見て目を弓なりに細めた。
「…お前、顔もえっろ」
「…はーっ……、」
突然止んだ攻撃に息を整えるのに精一杯な俺は、笑いすぎて目に溜まった涙を袖で拭って体を起こそうとする。
だけどそれは、なかなかどこうとしないひまちゃんに拒まれた。
「……どいてよ」
「なんで」
「いやこっちがなんで…?」
そして突然、再びバッと両手を掲げたひまちゃんに思わず身構える。
その右手がTシャツの中に入ってきたかと思うと…、
「…ぇっ、ちょ、なにして」
「ん〜?」
お腹にとどまらず、おへそから鎖骨に至るまで、なにか……まさぐるような手つきで俺の体を触り始めた。
先程同様くすぐったさももちろんあるが、そうじゃない、何か、別の変な感覚………
「……っちょ、いるまちゃんこさめちゃん助け、」
これ以上はまずいと自分の危機管理能力が察知して、先程まで俺たち同様じゃれあっていた2人に助けを求めにくるっと顔を横に向ける。
と、
「ほらーまにき、すっちーにバレちゃったんだから声出してもいいんじゃない?」
「…ふ、…っ♡」
そこには、
シャツがはだけ、声が出ないよう口元を両手で抑えるいるまちゃんと、あらわになった上半身をいやらしい手つきで触っているこさめちゃんがいた。
ちらりとこちらを見た涙目のいるまちゃんは、まるで助けてと訴えているよう。
生憎こっちも同じ状況で…と2人に助けを求めるのは諦めた瞬間、ぐいっと顔をひまちゃんに正面へ戻される。
「んじゃ、向こうも取り込み中なわけだし、」
そう言って不敵な笑みを見せるひまちゃんは、スリ…っと俺の頬を撫でる。
何をされるかわからないこの状況に、さっきとは違う種類の涙が浮かんでくる。
そんな俺の顔を見てぎょっと目を見開いたひまちゃんは、慌てて俺の上からどいてそのまま俺を抱きしめた。
「ごめんな?怖い思いさせたい訳じゃ無かった…」
思ったより沈んだひまちゃんの声に、慌てて俺も涙を拭う。
「ううん…俺も、なんか、変に、緊張しちゃって、…」
「…な、すちの同意があったら、いい?」
抱きついた腕を離してこちらを見上げたひまちゃんが、まるで子犬のように見えて…、この変な甘い雰囲気にも呑まれて思わずうんと頷いてしまった。
その言葉をきいたひまちゃんがにーっと笑ったことで、俺は自分が言ってしまったこのと重大さにはっと気づく。
だかもう時すでに遅く、同じ様な条件を呑んでしまったのか、隣ではいるまちゃんがこさめちゃんに向かって罵声を浴びせているのが聞こえる。
「いい運動にもなるし、お腹も痩せるよ?」
煽るようにそういうこさめちゃんの言葉に、俺といるまちゃんは2人して肩を落とした。
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ダンス練後、汗をかいたTシャツを着替えていると、ふとらんらんの視線が俺にとまる。
「すちってさ…細いけど、なんかしてる?運動?」
恐らくちょうど着替えていてあらわになっていた上半身に目がいったのだろう。
そんならんらんの言葉を受け、みこちゃんもいるまちゃんへ目を向ける。
「それでいうとまにきも細いんよな」
ぎくっと分かりやすく肩を揺らしたいるまちゃんを、こさめちゃんがにやにやしながら見ているのが見える。
「あー……まあ、運動かな」
「“運動”してるもんねまにき〜」
サササッといるまちゃんに寄って行ったこさめちゃんが笑み混じりの声でそういう。
小声で言い合う2人を不思議そうにみつめていたらんらんも、くるりとこちらを向いて尋ねた。
「じゃあすちは?」
「………俺も、運動してる、よ」
らんらんの背後でにやっと笑ったひまちゃんの圧に負け、俺は顔が熱くなるのを感じながらそう答えた。
コメント
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場面転換が急で読みずらくてごめんなさいーー😭😭