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「透子?入っていい?」
そしてドアの外から樹の声が聞こえる。
いつも聴き慣れたその声なのに、今この瞬間聞くその声は、感じたことない愛しさで。
そんな切なさと愛しさが胸いっぱいに広がる。
そしてまた胸の高鳴りも大きくなっていく。
「どうぞ・・」
そう返事をした後、樹がドアを開ける。
そして樹が私の姿を見て、そのまま動きを止める。
そこに立っている樹は、やっぱりいつも以上にカッコよくて素敵で。
その樹を見つめながら照れくさいけど微笑んでみる。
「どう・・かな・・?」
そのまま固まって茫然として何も言わない樹に、どう感じているのか気になって私から声をかけてみる。
樹の目に私はどう映ってる?
樹が思い描いていた私になれている?
「あ・・あぁ・・」
だけど、樹はようやく声をかけると、どっちつかずの反応をする。
「樹・・・?」
そんな樹に不安を覚えてしまう。
やっぱり想像と違った?
何か言ってよ・・樹・・。
「ごめん・・あんまり透子が綺麗すぎたから。ちょっと想像以上すぎてビックリして見惚れてた・・」
すると、逆の言葉を静かに呟く樹。
なんだ・・・ちゃんとそんな風に感じてくれてたんだ・・。
よかった。
いつも言葉にしてくれる樹が、言葉にしてくれないと不安になる。
だけど、それはそれだけ樹が私にその気持ちを伝えてくれていたということで。
それだけ私はその樹の言葉をずっと求め続けていて、その言葉に安心していたのだとわかる。
そんな当たり前のことを、樹はずっと私にしてくれていた。
そんな当たり前のことを、私は樹にずっと出来なかった。
こんなにも当たり前のことで樹は幸せにしてくれてたんだね。
こんなにも何気ない気付かないような幸せを、樹はずっと与え続けてくれていたんだね。
「よかった」
「え?何が?」
「樹が何も言ってくれないから、ちょっと不安になった」
「あぁ・・いや、うん。これくらい綺麗なんだろうなって想像してたつもりだったんだけどさ。いざ目の前の透子見たら、全然思ってたより数百倍綺麗だったから、ちょっと言葉にならなかった」
「そんなに・・?嬉しい・・。樹もすごい素敵で私もドキドキしてる」
「ホントに?オレも透子ドキドキさせられるんだ?」
「もちろん。私はどんな樹にもいつでもずっとドキドキしてるよ。私は樹が思っているよりずっとずっと樹のことが好き」
きっと樹は知らないよね。
私がどれだけ樹のことが好きか。
どれだけ樹にいつもドキドキしてるか。
樹みたいにいつも言葉にしなくても、私はいつも樹のことでいっぱいなんだよ?
だから、ちゃんと知っていてほしい。
樹のことをこんなにも好きで仕方ないことを。
きっとホントは出会った時からずっとドキドキしてた。
あの日、ドキドキさせられると言った樹に。
きっとホントは出会った時から惹かれていた。
嘘か本気かわからなかった樹に。
だけど、あの瞬間からきっとホントは感じていた。
他の人とは違うって。
今まで感じたことない気持ちになったって。
きっと好きになる予感がした。
きっとどうしようもなく好きになってしまう予感しかなかった。
ハマったら抜け出せなくなるほど、きっとあの瞬間から、それほど好きになってしまう自分が、ホントは想像出来たから。
何気なく交わした言葉にすでにドキドキしていて。
何気なく絡んだ視線に胸が高鳴って。
きっとその瞬間から、もうこの想いは始まっていた。
その視線を、その気持ちを、この人を独り占めしたいと、きっとどこかで思ってた。
だから好きになって当然だった。
こんなにも好きになることに理由はなかった。
ただ最初からずっと樹だった。
私の運命を変えてくれる人は、この人なのかもしれないって、きっとそう感じていた。
樹だから、こんなにもドキドキして、こんなにも夢中になって、こんなにもこの胸は切なくなる。
出会った時から、ずっと私は、樹を、ただ一人樹だけを求めていた。
最初から樹をこんなにも好きだったことを、きっと樹は知らない。