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「何それ。今その姿でそんなこと言うとかズルいでしょ」
だけど、ようやく伝えたその言葉を樹はそんな言葉で誤魔化す。
「ちゃんと今まで伝えられてなかったから。樹のことどれだけ好きかちゃんと樹にも知っていてほしい。もっと私を好きになってほしい」
今日は私が主役の日でしょ?
だからどんな私の気持ちも樹はちゃんと受け止めてくれるよね?
「いや・・結婚式する前にそんなの言われたら困る・・」
今、樹がどんな言葉を言ってもこの気持ちは貫き通す。
結婚式を挙げるからこそ、今ちゃんと樹に伝えておきたい。
「いいよ。困って。どんどん私のことで頭いっぱいにして?ずっと私のこと考えてて。ずっと私を好きでいて」
いざ伝え始めたら、どんどん止まらない。
樹に今のこの気持ちを伝えたくて仕方ない。
今の私の気持ちを全部知ってほしい。
私の気持ちを全部受け取ってほしい。
「ちょっ、透子。どしたの?いつもとなんか違う・・」
樹はいつもと様子が違うのを気にして、少し戸惑いながら私の側まで近づいて来る。
「違わないよ。いつもただ素直になれなかっただけ。ホントは樹が好きで好きで仕方ない」
「うん。わかった」
私をなだめるように樹は返事をする。
「今までずっとちゃんと伝えられなくてごめんね。樹はずっとたくさん気持ち伝えてくれてたのに」
「そんなことは全然いいよ。オレが伝えたくて伝えてるんだから。オレは透子を目の前にしたら好きな気持ち全部伝えたくなるだけ」
そう。そんな簡単なことが私は今まで出来なかった。
ただこうやって樹がしてくれたように、その時感じた想いを口にすればいいだけなのに。
今なら樹の気持ちもわかる。
口に出すと、その気持ちは止まらなくなって、どんどん伝えたくなってしまう。
そうじゃないと、きっと自分でこの溢れる気持ちを止められないから。
この気持ちを受け止めてほしくて、この気持ちを知ってほしくて、その気持ちが欲しくて、どんどん伝えたくなるんだ。
「好き。ホントに好き。大好き」
だから今は素直にこの気持ちを伝えたい。
どうしようもなくとめどなく溢れて来る樹へのこの好きな気持ちは、もう止まらないから。
「わかった。わかったから。もうちゃんと伝わってるから」
だけど樹はやっぱり動揺しているのかただ私をなだめる。
「ホントに伝わってる?」
「伝わってる」
ただ繰り返すその言葉だけど、優しく穏やかにちゃんと重みを感じる。
私のその言葉をちゃんと受け止めてくれているかのように、ただ一言その言葉だけを伝えてくれる。
「ありがとう。透子。ちゃんと伝えてくれて」
樹はそう言いながら穏やかに優しく微笑んでくれる。
「私の方こそ。いつもたくさん気持ち伝えてくれてありがとう。今日も、こんなに幸せなプレゼント用意してくれて」
私は樹に”ありがとう”をきっとどれだけ伝えても伝えきれない。
今まで樹が私にしてくれたすべてのことに、ホントは”ありがとう”を伝えたい。
どんな時も私を信じてくれて、どんな時も私を想ってくれて、どんな時も幸せを贈り続けてくれていた。
きっとほんの小さなことで私が気付かないようなことも、きっと樹は贈り続けてくれていた。
「ホントはもっと早く結婚式したかったんだけど、どうしてもこれだけの時間が必要だった」
「まさかしてくれるなんて思ってなかったから。してくれるだけで嬉しい」
もしかしたらどこかで本当は望んでいたのかもしれない。
ただ当たり前の幸せを、ただ当たり前の憧れを。
女性として一度は夢見るその素敵な状況を、やっぱりきっと願っていたのかもしれない。
ホントに好きになった樹と、その幸せな憧れを叶えられたらと、きっと一瞬でも思ってた。
だけど、きっとその気持ちに気付かないフリして。
ただ樹と一緒にいられるならそれでいいと思ってた。
樹との年齢差だとか、自分の年齢だとか、樹の家庭環境や仕事での立場だったりとか。
実際気にしてしまうこと、だから納得せざるを得なかったこと。
きっとそれを理由にして、その憧れは憧れだけにしようと思った。
だけど今新しくブライダルの仕事をするようになって、少しずつまた意識してしまう自分がいたのも事実。
大好きな人と幸せな結婚式を挙げるという幸せ。
それを一緒に感じられるからこそ、また実感出来る新たな幸せ。
それを出来るからこそ、どんどん女性として綺麗になって。
その幸せを感じられて、お互いの絆や愛しさは更に強くなって。
ずっとその人の隣でいられる幸せを皆の前で誓える幸せを、きっとホントは憧れていた。
こんな自分だからこそ、きっと皆の前でこの気持ちを誓いたかったのかもしれない。
ホントはその幸せを誰よりも噛みしめたかったのかもしれない。
その幸せをその想いを、誰より樹に伝えたかったのかもしれない。
どんな時よりも綺麗になれるその瞬間を、きっとホントは樹に見てもらいたかった。
もっとお互いを愛しく想い合えるその瞬間を、ホントは感じたかった。
「樹。ホントは気付いてたんだよね?」
きっと樹はずっと気付いてた。
多分ずっと前から。きっと最初から。
そんな私の想いを。
言葉に出来ないそんな私の想いを。
「全部オレが無理させてたことだから。ただオレが透子好きになって結婚したくて。だけど、透子にはきっといろんなこと我慢させてた」
「そんなことないよ。私は樹と一緒にいられるだけで・・」
「ほら。またそんなこと言う」
「でも・・それもホントの気持ちだし・・」
「うん。それもちゃんとわかってる。オレだって同じ気持ちだし。透子がいてくれたらそれだけで幸せ。だけど、オレはそれだけじゃなく、もっと透子を幸せにしたい。一緒にいるからこそ、もっと透子を笑顔にしたいって思うし、もっとオレといることで幸せだと思ってほしい」
「それなら私だって同じだよ」
「うん。だからだよ。透子も同じように思ってても、周りのことを考えたりしてそれを言葉にしない」
やっぱり樹は全部わかってる。
私がどうしたいか、何を考えてるのか。
「だったらオレが透子が言葉にしない分幸せにするしかないでしょ?」
そう言って優しく微笑んでくれる樹。
「オレならどれだけ時間がかかってもその願いを叶えられる。きっと透子が諦めちゃうようなことでも、オレはそれを諦めたりしない」
そうだね。
樹はこうやって、どれだけ時間がかかってもその願いを叶えてくれる。
「その時実現出来なくても、それはその状況が整ってないからで。いつかすべてがちゃんと整った時、その願いは叶えられる。オレなら絶対」
そう力強く言い切る樹。
ホントにそうだね。
樹はヒーローみたいに、いつだって私を守ってくれて、願いを叶えてくれる。
いつだって私を幸せにしてくれる。