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第三話 気づいてしまった
その日も、いつもの時間にサイトを開いた。
けれど、今日は少し違った。
いつもなら、すぐに届くメッセージが来ない。
彼女は画面を閉じた。
少しして、また開く。
まだ来ていない。
「……別に待ってないし」
誰に言うでもなく呟いた。
そう思っていると、通知が鳴った。
『ごめん、遅くなった』
いつもの相手だった。
『どうしたの?』
『ちょっと色々』
それだけ。
いつもなら、もう少し話してくれる。
彼女は少し迷った。
『大丈夫?』
しばらく既読がつかなかった。
やっぱり聞かない方がよかったかな。
そう思った頃、
『大丈夫』
と返ってきた。
短い。
いつもより、明らかに短かった。
『そっか』
それ以上は聞かなかった。
無理に聞き出すのも違う気がした。
そのまま、いつものように話そうとする。
『今日の数学やばかった』
『何点?』
『聞かないで』
『じゃあ聞く(笑)』
『絶対言わない』
少しずつ、いつもの会話に戻っていく。
でも、彼女は気づいていた。
相手が笑っているように見せていることに。
『ねえ』
『ん?』
『今日、何かあった?』
また、少し間が空いた。
『なんで?』
『なんとなく』
『……分かる?』
『ちょっとだけ』
#溺愛
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#百合
それから、しばらく返事がなかった。
やっぱり聞かなければよかった。
そう思ったとき、
『嫌なことがあった』
と届いた。
それだけだった。
詳しいことは書かれていない。
彼女も、聞かなかった。
『そっか』
『うん』
『じゃあ今日は、嫌なこと忘れるまで話そ』
送ったあと、自分でも少し恥ずかしくなった。
重かったかな。
そう思っていると、
『それ、いいかも』
と返ってきた。
それから二人は、いつも以上にくだらない話をした。
授業中に先生が言った変な一言。
友達の話。
最近見たもの。
好きな食べ物。
どうでもいい話ばかり。
でも、その夜はそれでよかった。
しばらくして、
『ありがとう』
と届いた。
『何が?』
『話してくれて』
『こっちこそ』
『なんか、楽になった』
彼女は、その言葉を見つめた。
たった一言。
でも、胸の奥に残った。
自分が何か特別なことをしたわけじゃない。
ただ話しただけ。
それなのに、
相手の役に立てたことが少し嬉しかった。
『じゃあ、また明日ね』
『うん』
『明日はちゃんと早く来てよ』
『努力します』
『努力じゃなくて来て(笑)』
『分かった』
その夜、彼女はいつもより
少し遅くまで画面を見ていた。
相手のことを考えていた。
どんな顔で笑うんだろう。
どんな声なんだろう。
学校では、どんなふうに過ごしているんだろう。
知らないことばかりだった。
でも、不思議ともっと知りたいと思った。
翌日。
放課後になって、
彼女はスマートフォンを取り出した。
通知はない。
まだ時間も早い。
それでも、昨日より少しだけ気になった。
そして夜。
いつもの時間。
サイトを開く。
すぐにメッセージが届いた。
『今日もいる』
彼女は笑って返信する。
『いるよ』
ほんの数日前までは、知らない人だった。
今も、まだ知らないことの方が多い。
それでも――
少しずつ、その存在が日常の中に入り始めていた。
コメント
4件
そうなんですよ! 相手の気持ちをしっかり考えてるんですよね! 自分もそうして欲しいからこそ、できることでもあると思いますしねー! ほんとですか!ありがとうございます! 嬉しいです!
みぅです🤍 第3話、読み終わりました。 「嫌なことがあった」って相手が素直に見せた瞬間に、無理に聞かずに「忘れるまで話そ」って返せるの、すごく優しいなって思いました。重くなりすぎない距離感、それでいてちゃんと寄り添ってる感じが伝わってくる…。 「なんか、楽になった」の一言、胸にくるものがあったよ。 まだお互いの顔も声も知らないのに、存在が日常になっていく感覚、すごく丁寧に描かれてて好きです。続きも静かに読ませてもらいますね🌙