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るあ
本当にただ怖いだけの行為
近づかれるだけで息が浅くなるし
触れられれば今までのことを思い出して反射みたいに体が強張る。
勇ちゃんにはずっと、大切な弟のように扱われてきたから
こんなふうに身体の隅々まで触れてくる人だなんて、知らなかった。
最初は自分のほんの出来心からだった
酒に頼って、そのままの勢いで
それからはやめることもなく、進むこともなくただの“処理する相手”という関係になって。
「やだ」
「無理」
「やめて」
そう、声は出るのに身体にうまく力は入らない
押し返した手首は簡単に掴まれて、そのまま動きを封じられる。
怖い と思う
でも、同時に離れたくないと思ってしまう
どれだけ逃げようとしても結局また距離を詰めてくるから
だったらどうすればいいのか、分からなくなる
何度もこの行為を繰り返して気づいたのは
抵抗すると余計に苦しくなる、ということ。
息が詰まる時間が長くなって
逃げようとするほど強く押さえられて
“怖い”がどんどん濃くなっていく
だからやめた
全部じゃないけど、少しだけ
力を抜く
目を逸らす
声を押し殺す
息を浅く整える
それだけで、終わるまでの時間が少し短くなる気がした。
「ん、いい子」
そう言われた気がして、気を逸らそうと別のことを考えていた思考を止める
いい子って、何に対してだろうか
ただ身体を貸すこと以外していない無防備な自分に対してなのだろうか。
分からないままただ頷く。
そうすると勇ちゃんの圧が少しだけ弱くなる
ほんの、少しだけ。
この人はこんなふうにしか触れてこない。
恋人でもないし、女性の体でもないからなのか、 優しくされることはない
でも、完全に壊されるわけではない。
いつもぎりぎりのところで止めてくる。
まるで様子を見ながら噛みついてくるみたいに。
だからたぶん
これはこの人なりの愛し方なんだと思う
そう思った方が楽な関係
相変わらず怖さは消えない
触れられるたびに身体は強ばるし
息を整えないとすぐに崩れそうになる
ただ、前よりは
どうすればいいか分かってきた。
力を抜いて受け入れる
決して逆らわない
変に声を出さない
そうしていれば、自分の消化不良な欲求も身を引いてくれるのだ。
「舜太、そんな顔覆うなって」
そう言われた時、ほんの一瞬だけ目が合った
普段なら行為中に目を合わせてくることなんてない
初めてのその視線は、思っていたより静かで
なぜか少しだけ息がしやすくなる。
これも勘違いかもしれない
でもそれでいいと思った。
たぶん逃げられないんじゃなくて
逃げない方を自分で選んでるだけだから
その方が、自分にとって怖くないから。
気が付けば、しだいに抵抗することはほとんどなくなっていた
代わりに上手くやり過ごす方法だけが増えていく
それを受け入れていると言うのかは分からない
ただ
この距離で、この形でしか触れてこないなら、
それに合わせるしかないだけだから
まるで少しずつ食べられていくみたいだと、ふと思う。
毎度全部は持っていかれない。
だからいつまでもずるずるとした関係は終わらない。
きっと、次もまた。
他に食べる物がないから
食べる量を決めて
そして、毎回食べ残すように行為を終える。
「…大丈夫だからな」
また何に対してなのか分からないままそう言われて 小さく頷く。
別に意味なんか無いのだろう
ただ口にしたかっただけだろう
でも考えてしまう、
自分の身体は
この先、この人以外に抱かれることがあるのだろうか。
他の人では物足りなくて狂ってしまうのではないか
大丈夫なんかじゃないのかも
なんて思考は止まらなくて、意識は遠のくようでゆらゆらと頭の上で残り続ける
ただただこの人に愛されたいだけの身体
それを拒む気持ち
どちらにもつかない意識
そして無抵抗で無防備なこの身体は
彼の動きに合わせてただ揺れるだけ
これから先もきっと
コメント
1件

いやめっちゃ好きです……