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るあ/み!専門
終わったあとの部屋はやけに静かだった。
さっきまでの空気が嘘みたいに引いて、
残ってるのは自分の荒い呼吸だけ
それすら少しずつ整っていく。
シーツにくるまったまま動けないでいると
隣でスマホをちらりと確認し、小さく息を吐く音がした
「…ごめんな舜太、長くなりすぎた」
何気ない声
責めるでもなく、気にするでもなく、
ただ予定より伸びた作業の話みたいに。
「明日身体だるいだろ、あんま無理すんなよ」
淡々と続く言葉に、少しだけ瞬きをする
明日
その単語だけが、やけに浮いて聞こえた。
この人にとって自分はただそれだけなんだ
さっきまでのあれは、 自分が必死に耐えていたものは、この人の中では、
ただの“長くなった何か”でしかないんだ。
視線を向けるともうこっちは見ていなくて、外していた指輪をはめて身の回りを整えている。
終わったあとのいつもの動き
特別な意味なんてないみたいに。
少し前まで
ほんの少しだけ思っていたことがある
触れられる回数とか、 自分から離れようとしないこととか
全部、自分に向けられている気持ちがあるのではないかって。
こうやってわざわざ時間を使って自分に触れてくるのは
少なくとも、どうでもいい相手にはしないことなんじゃないかって。
この行為が怖くても、息が詰まっても、 これがこの人の愛し方ならって、
そう思えば少しは意味がある気がして
「いつもさ、付き合わせたみたいでごめんな舜太」
軽く落ちてきたその一言
付き合う、って
胸の奥が静かに冷えていく
期待していたわけじゃない
そんな大それたものじゃない
ただ
少しくらいは
自分に向けられているものだと思っていた
でも違った。
これは、この人の中で完結しているもので
自分はただそこに“いた”だけなんだ。
「……うん」
短く返すとそれで会話は終わった
それ以上何も続かない。
身体のなかでひんやりと恐怖心はまだ残っている
体の奥深くに、さっきまでの感覚がぬるく残っているのと同じように。
でもそれとは別に
さっきまでとは違う種類の何かが
ゆっくりと沈んでいく。
そっか、自分って そういうものなんだ。
そう理解した方が 次は楽かな
隣ではもう寝息が落ちている
さっきまでの気配が嘘みたいに静かで
ただ規則的な呼吸だけが近くにある
それをぼんやり見ながら少しだけ指先を動かした。
触れても起きない
本当に、何も気にしていないみたいに。
さっきの言葉がまだじんわりと残っている
付き合わせた、って
そっか、と何度も頷きながら
でもどこかで、納得しきれていない自分もいる
ゆっくりと距離を詰めてみる。
今度は押さえつけられることもなくて
拒まれることもなくて
ただそこにいるだけ
それが少しだけ不思議だった
このままじゃ全部勇ちゃんだけのものみたい
そう思ったのがきっかけ
胸のあたりにそっと
ほんの少しだけ、跡を残す。
強くはない
起きないくらいわずかなもの
それでも、確かに自分が触れた印。
この瞬間だけ彼を 自分のだけのものにするために。
これで、少しは同じになれるだろうか。
視線を落とすと自分の身体には もっとはっきりした痕が数え切れないほど残っている。
ヒリつく噛み跡から吸われた跡
少し古いもの、新しいもの関係なく
比べるまでもなく違う
でも、それでもいいと思った。
全部勇ちゃんばかりの欲望じゃない形で
少しは自分のものにできた気がする
「……これくらい、ええよな」
小さく呟いてシーツに頭から包まる。
本当にそう思っているのかは分からないまま目を閉じた。