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井野匠
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#すとぷり
るぃ@BL好き 🎀♡
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公安特殊犯罪対策任務課『 P.R.V.L.M.』。
エージェント7th、作戦地域に接近中。
0316に観測された仮面波動は未だ健在。確認位置から座標移動なし。
ブリーフィング通り、接触予定地点へ急行し、対象を回収せよ。生死は問わない。
ただし記憶情報抜き取りが困難となるため、頭部の破損は必ず回避されたし。
「……糞。 この惨状は何だ?」
7thが現場に到着してその目で見たものは、血肉の散らかった真っ赤な路地裏だった。
「あぁぁああぁあああああああああ!」
閑静を切り裂く悲痛な叫びは上方からのものだった。
7thは首を振り上げ、自動調整機能にF値を任せてメインカメラを絞る。
ビルの最上に、それはいた。
満身創痍になった仮面持ちの首を掴み、空に持ち上げる黒い機械の鎧を着込んだ謎の人物。
7thの機械装甲のデザインと、ほとんど同じものだった。
「私以外の機甲兵、だと……?」
月光を反射するメタルボディーは、そのまま叫びをあげる男の首を握り潰してしまった。
大量の出血が局所豪雨のように降り落ち、最後には皮一枚で繋がる男の遺体も地面に潰れた。
謎の機械兵士は何の躊躇いもなく屋上から飛び降り、何度か途中階のベランダや非常階段をクッション代わりに経由して地上へ降り立った。
「所属と機体ナンバーを言え。 特務課以外の機甲シリーズ機を兵装した実戦投入は禁止されている。 自動操縦使用の報告も聞いていない。 事情のない場合は処罰の対象に――――、」
「……ほう、機甲シリーズ。 この衣装はそう呼ぶのだな!」
謎の兵士はギリリ、ギリリッと握力測定するように装甲された手を開け閉めする。
細かなところまで観察すると、7thのそれとは微妙に形状に違いがある。ほとんどは旧型の未最適化パーツばかりだが、改造された手作り感の溢れる付属品も見受けられる。
特に気になるのは、頭部。
黒い装甲から生える錆びた金の角に、赤い模様付きのバイザーを取り付けた玩具のようなヘッドギア。
首には黒い血が染み込むレッドマフラー、背からたなびくレッドマント。
凶悪で幼稚な機械兵士の姿が、そこにはあった。
「君も我と似た衣装を着ているなッ! それも機甲シリーズと言うものか?」
「……所属コードを言え」
「所属? コード?」
「最終警告だ、所属コードを答えろ。 さもなくば規定に則り、攻撃行動を開始する」
「ああ! 所属! 所属かッ!」
男は赤マントをバサリと靡かせて、
「我は『廃棄物』の……、おおっと間違えた。もう帰籍したのだったな! 我はッ、『少数派』所属の英雄、ヒーローを目指す者、ディオッッ!! 御山翔太郎であるッッ!!」
「……発射」
前腕に取り付けられた装置から空気を貫く静かな射撃が実行された。
放たれた特殊弾は男に着弾し、甲高い衝突音が十六も連続した。
しかし、男は倒れず。
装甲にいくつかの擦り傷、赤マントを穴だらけにした程度でほとんど効果は無し。
転がる空薬莢、白煙。
ディオはバサリと払ったマントの風圧でそれらを除けた。
「ウム、無傷無血! フハハハハハッ! すんばらしーィパワーだッ!! どうだ、見たかこの強靭ッッ!! 私の十数年の下積み時代が報われているぞーッ!」
「……勘違いしているようだが、それはお前が着ている装甲の性能だ、仮面犯罪者ディオ。 集中治療を受けた病棟から逃亡後……、やはり『少数派』に保護されていたか」
腰にロックしていたフックを解錠し、ダブルバレルのような横長の口を備えた銃器をディオに向ける。
「ほう、低殺傷電流銃! 本物を見るのは初めてだッ! ソイツをこの我の肉体にぶつけてくれるというのかッッ!!」
「私の前で、機甲を肉体と称するとは」
直後、空間が破けるような音が弾け、一本の白いワイヤーがディオに両手を広げるようにして飛びこんでいった。
7thが撃ったのはただの電流銃ではない。拘束用の粘着性投擲縄を発射し、束縛と電撃による鎮圧を同時に行うものだ。
ディオの受け身や回避行動よりも早く膝上にワイヤーが直撃し、伸びた両端で抱きしめる。
そのまま何重にもグルグルと膝周りに巻き付き、拘束と同時に痛烈な電流を与える……、はずだった。
「『悲劇の誕生』ッッ!! 我は雷電に血肉を焼かれるような凡庸生物では無い! 強靭無敵、半神半人のヘラクレスであるぞーーッ!!」
英雄ヘラクレスの肉体には、人すら殺せぬ雷電など落葉の擽り程度にしかならない!
ましてや、細い鉄糸で束縛しようなど以ての外!
「ウオオオオオオオッ!!」
ワイヤーを片手で掴み、蜘蛛の巣を壊すように甚も簡単にそれを引きちぎった。
「……強化外骨格の出力に仮面の力が上乗せされ、人間離れした怪力を発揮しているのか。 柔な銃弾ほどなら超硬殻の機械装甲で弾き返し、鉄線程度なら巨人のような怪力で容易に引きちぎる。 DBに載っている情報より厄介な奴だ。 ……その機甲、どこで手に入れた?」
「この衣装のことか? 当然、衣装係が用意してくれたモノだッ! 演者を引き立たせるための裏方役がなッ!」
「……クソが。 技術班に離反者が……、いや、洗脳を受け旧型機甲をテロリストに明け渡した大馬鹿がいるな。 お前のおかけで特務課は、明日から魔女狩りイベントの始まりだ。 お前の仮面を使って絵踏みでもさせるとしよう」
「ハァーッハッハッハ!! ロボットちゃん、面白い冗句を言うな! この現代に魔女狩りに絵踏みとはッ! その首を腰から提げて携帯ラジオにしたいところだが……、いかんな、私は正義の使徒! 悪しか討たん! そう決めているのだッ!」
そう言って、アスファルトに転がる辛うじて原型の残っていた仮面持ちの頭部を、思い切り踏み潰した。
脳漿と鮮血が辺りに八散し、ディオの脚部にへばりついた。
「こやつらは悪だ。 風が吹けば飛ぶような弱さだというのに、己を正しいと信じて止まない! 正義とは圧倒的な武力から成るもの! 核武装せぬ国が平和至上主義を唱えたところで、何の役にも立たぬ! 核には核を! 力には力を! 正義には同等の正義を持たねば、横並びになることすら許されない。 そう、我の様に! 力を得た者だけが正義を誇る権利を得られる! 力こそが、我を英雄たらしめる裏付けなのだッッ!!」
「……先週から、関東を中心に仮面周波の検知した現場で特務課の戦果に数えられていない謎の遺体が見つかっていた。 共通点は、その全員が仮面の破片と共に頭部が潰れていたことだ。 お前の仕業か、ディオ」
「あやつらの弱さが原因で追跡者に脳を読み込まれ『少数派』の情報を抜かれては堪らんのでな、先に潰させてもらったぞッ! 確かそういう能力を持った仮面の捜査官がそちらにいるのだろう? いない? いる? まあいいッ! 弱き者が我が後ろ以外に立つことは許されないのだッッ!!」
「理解不能……、弱いから殺すだと? それらは仲間なのにか?」
ディオは一点の曇りもなく、突き抜けて笑う。
「弱い者は、弱いなりに守られていればいいのだ。 自衛のために刃物を持った弱者は、その時点から混乱の種となりうるッ! 種が芽を出し極悪となる前に潰さなければならない。 街に暴力が蔓延らぬようにッ! ……それに、こうして夜な夜な街にくりだし悪と闘うのにはもうひとつ理由があるぞ。 ……我は気付いたのだ。 我は英雄となるため計画を練り、劇場をおさえ、客を呼び、立派な大立者となるために何度も稽古をした。 これで多くの者から認められると、讃えられると信じて疑いもしなかった。 そしていざ幕開けして分かったッ! 人気のない無名の助演俳優が主役級の演技を魅せた時、何より輝くということをッ!! 痺れたよ、これはやられたと思った! 初めから英雄の素質に溢れた男の覚醒譚より、どこにでもいる普通の学生が危機一髪で現状一変する展開の方が現代では求められているということを知ったッ! 我は平凡な英雄に……、端役だったはずのあの男は特別な主役となった。 英雄たる我を……、超えた。 ……認めよう、我の敗北だ。 そして憧れた。 我もヒーローになりたァアいッ!! ヒーローになるためには街中に認められるまで悪を潰し続けなければ! 反暴力の暴力装置として君臨しなければッ! そうしていつか功績が認められ、平凡な英雄たる我が特別なヒーローになれる好機を願い続けるのだ!!」
7thは、機械ながらに口を海月とさせていた。
驚くべきことに、ディオの言っていることが何ひとつとして理解できなかったからである。
言葉足らずであることは勿論、独善思想の極地のような発言からは何が正義で何が悪かを定める定義があるのかどうかすら読み取れない。
恐らく、全てはディオの勝手。
勝手で身勝手で、自分勝手で手前勝手。
法とか他人の気持ちだとか、ルールやモラルを一切度外視した圧倒的な自分語りが彼の発言の全部だった。
「聞いた私が愚かだった。 お前の口を経由して言葉が発せられている時点で、狂った思想を理解出来るはずがなかった。 残りはお前の脳に電極を刺してモニター上で閲覧するとしよう」
「おおっと、済まない! 無線がきた、静かにしてくれ!!」
ディオの胸に括り付けられていた十数もの血濡れの無線機のひとつからザーザーと砂嵐が発せられ、途切れ途切れの音声が路地裏に響く。
「…………応援を……請する! ……は、Aの南ブロック…………、三人の……が…………、発砲を……!」
「ウオオオオオオオッ!! また何処かで我を呼ぶ声が聞こえるぞッ! 悪いなロボットちゃん、同じ衣装を着ている者同士、また正義について語り合おうぞ!」
「待て、私がお前を逃がすと思っているのか?」
「いいやッ、君は我を逃がすのではない! 今夜も悪を挫くために街を飛ぶ、この我を見届けることしかできんのだッ!!」
直後、ディオは屈伸をして脚をバネのように扱い、轟音を乗せて足場のアスファルトに亀裂が入るほどの大跳躍をした。
7thのジェット噴射による飛翔ではない。
紛れもない跳躍だけで、ビルを壁キックして飛んでいってしまった。
「馬鹿な……!」
7thが背と両足裏のジェットで屋上に到着した時には、ディオは夜の闇でシルエットとなったビルディングの狭間を飛び交う影のヒーローとなっていた。
「……旧型機甲の耐衝撃、耐G性能に脚力増強を利用した大跳躍。 普通の人間の肉体であれば忽ち脚が折れてしまうことを連続で成功させる仮面の力。 ……最悪の組み合わせだ」
建物を蹴り、電信柱を飛び台に、ビルの谷間を駆け巡る。
ボロボロで穴だらけになった烈火のマントとマフラーが、突風を正面から受けて尾のように伸びる。
左の手甲、緩衝用の接合部から血が溢れ、風に乗って街に舞い散っていく。
「くッ、代償が……!! しかアし、それでも我は……ッ、ヒーローになるのだーッ! ヒーローになるまでは、老衰する訳にはいかんのだッ! 『悲劇の誕生』ッッ!!」
コメント
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うわあああこのディオってヤバすぎる!!😭💦 機械鎧に身を包んだ“ヒーローを目指す者”って言いながら、仲間の仮面持ちを平気で頭潰してるの本当に狂ってるよ…。でも「弱い者は守られてればいい」「反暴力の暴力装置」って台詞、めっちゃ考えさせられるというか、なんだかリアルな闇を感じた…。7thのクールな対応もかっこよかったけど、ディオの跳躍力とテンションに圧倒されてもうドキドキが止まらん!! 次どうなるのこれ!!