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井野匠
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#すとぷり
るぃ@BL好き 🎀♡
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妹の名前まで出された以上、『いつもの場所』の皆には相談できなかった。
野崎にも自分なりにギリギリまで抗う旨を伝え、これ以上はという場面まで来たら自分から伝えると約束をして、口を封じた。
しかし、オレの浅知恵だけではこの事態をどう仕様もないことも事実。
残る相談相手といえば、新しいクラスメイト達だけだった。
「えーーっ!? 煌さん退学されちゃうんですかーっ! まだ転入してきて間もないのにーっ!」
「おい押金さん!? 声がちっとばかしデカすぎかな!?」
「なになにーー?? キラリン退学なのー?」
「神無月君。 今の話、本当か?」
「ほうら大騒ぎになったじゃねえか!!」
「あぁーっごめんなさい! 空気読めなくてごめんなさいー! ぶたないで〜!!」
「ぶたねえよ、人聞き悪いこと言うんじゃねえ!!」
こうして、ほとんど一人で悩みこんでいたハズの退学問題は、一瞬でクラスの話題をかっさらった。
仲間想いな奴もいれば好奇心むき出しの奴もいて、混乱するほどに注目が集中する。
それを捌いてくれたのは、まさかの流星だった。
実際に退学推薦を宣告されたあの場所にいたこともあり、事情を第三者視点から説明してくれたのだ。
「ええーー‼️ それ酷すぎない? だってキラリンまだ転校してきたばっかでさ、校則とかほとんど知らないのに違反ーって」
「オーノー。 でもホントに確かに、キラさんは部活クラブ入ってないですカラ、ルール違反してることになっちゃいマスネ?」
「とは言え、霧山先生にも責任があるのでは。 神無月君は説明を受けていなかったのだろう?」
「まぁ、そうなんだけど……、遅刻して来て後から内容聞きにいかなかったオレにも問題あるしな。 ってか、野崎が教えてくれれば良かったんじゃねえのかよ!? お前は部活のことなんも言われてなかったけど、どっか入ってんのか?」
「私だってここまで大事になるとは思っていなかったのさ。 一応のため、美術部の幽霊部員にはなったけどね」
「はぁ……。 まあ、それも遅刻してきたオレの方から聞きにいけって話だよなあ…………」
遅刻、部活動無所属の規則違反に、暴力沙汰。
過剰処罰とはいえ、理由だけは正当であるが故に反発しきれないところもあるが憎たらしい。
特に理紗の不登校に関しては今のところ、悪化の一途を辿っている状況。このままでは抗うどころか土下座謝罪で許しを乞うルート一直線だ。
「……あたしのせいだ」
「鮫島さん、オレが勝手なことしたのが悪ぃんだ。 あんま責任感じないでくれよ」
「そうはいかないよ、あたしに出来ることはやらせてもらう。 それが義理ってもんでしょうよ。 ……にしても、面倒な奴に目えつけられたね」
生徒会長兼風紀委員長、一条大亞。
純白の学蘭に袖を通す正義の大男。
オレと妹に退学処分の警告を突きつけてきた張本人だ。
そういえば……、どうして鮫島は処罰の対象じゃないんだ?
彼女も日常的に遅刻をしていて、暴力事件の場にもいた。あの様子が見られていたって言うなら、花柄の改造制服なんて目立つ服装をしていた鮫島が一番に名前が挙がりそうなものだが……
「マジやっべーしょ? 俺ちゃんビックリしてさー、しかも相手は一条じゃん? どうすりゃいいんだーって感じよ」
「……オレは日継高来て浅いから分かんねえんだけど、一条ってなんでそんな噂高えんだ? 聞いてる感じ、ただ頼りになる皆大好き生徒会長ってワケじゃねえっぽいが」
「……アイツはさー、真面目なんだよ。 真面目すぎ」
屋上で言っていたが、確か流星は一条と中学からの繋がりだったか。
「一条は常に正しいんだ。 それはアイツが法令を遵守してるとかよー、問題に対して一貫した判断力を示すとか、そうゆーのじゃない。 あいつは正しいサイドにしか立てないんだ」
「正しいサイドにしか立てないって、どういう意味だ……?」
「あー、ウーン、なんて言えばいーんかな。 実はオレもそこまでアイツのこと知らねえんだけどさ。 ……あいつ中学の頃から達者でよー、俺っちとは対照的で先生とかからも褒められてサ、色んなことで表彰されたり、壇上立ったりしてたのよ。 スゲー大人っぽいし、先生とか保護者会が喜びそうなことばっか言うからそりゃあ持て囃されるわな。 でも……、生徒からの人気は全くなかった。 友達って友達がいるのを見たことはないし、誰かと仲良いとか聞いたこともねー。 理由は明白、正しい故に空気が読めねーのよ。 ほら、話の弾みの悪ノリとか、ちょっちあんだろ? あーゆーのに本気で叱りを入れるようなヤツだったんよ。 天然の正義感? みたいなの、めっちゃ強いのよ。 目上からは褒められ、本当はそーゆーの指摘してくれるはずの友達は寄ってこない。 結果出来たのが、あの”正義の一条”ってわけよ。 一部からはガチで嫌われすぎて、先公の操り人形って意味で”お人形の一条”とか嫌味言われてるけどな」
鮫島の件でぶん殴ってきたザキとかいう不良ピアスも、一条をそう呼んでいた。
一般生徒からは空気読めずと煙たがられ、不良からは恐れられる。
確かに一条の正義は正しいものなのかもしれない。だが……、もっとやりようがあるだろう。
嫌われ役でも、不満を湧かせない嫌われ方ってのがあるはずだ。
あんな方法を取るのが生徒会長なんて、間違っているように感じる。
「なんでそんな男が生徒会長になれたか分かんねって顔だな」
「生徒会長って投票で決まんだろ? 一条があの座にいられんのは、皆に投票されたからってことだ。 あいつ、どうやって票集めたんだ? 選挙期間中はあんなヤバい奴だって皆にバレなかったのかよ?」
「それが一条が怖がられてる理由、その2なんだよなーあ。 選挙って、複数の候補がいるから成り立つもんっしょ? じゃあ、候補が一人しかいなくて、投票先が一人しかいないってなったらどうなると思うよ?」
「そりゃあ、その一人が勝つだろうな。 ……まさか、一条って」
「そうなんよ。 あいつ、敵対の候補がいなくって一人勝ちしたんよなー。 厳密にはいなかったんじゃなくて、いなくなったんだけどサ」
「……候補が、いなくなった?」
「おうよ。 最初の頃は生徒会立候補者は四人くらいはいたんだぜ? でも、選挙期間中に順番に辞退表明してったんよ」
……急にキナ臭い話になってきた。
それじゃあまるで、辞退を申し出なきゃいけないように一条から裏で圧力をかけられたみたいじゃねえか。
「……それが、皆に怖がられてる理由ってわけよ。 でもよ、中学からの好みの俺っちが言うんだからこれは間違いねえ。 一条はよ、そーゆーことするタイプの奴じゃねえ! あんま絡んでこなかったけどよ、見てきた限りじゃ、アイツは常に背筋伸ばしてやがった。 卑怯なことできるような性格じゃねえ。 それだけは言えちゃうぜ」
「……にしてもデスヨ? 不思議デスネー、そのお話。 相手サンがみんなやめちゃうってレアケースデスカラ」
「……まあー、それもそうなんよな」
「何してる、席つけ、席」
いつの間にか教室に入ってきていた霧山先生の一声で、集合が散った。
そうだ、まずは先生に話を聞くのがいいかもしれない。
退学なんて大きな話、本当なら担任の耳には必ず入ってきているハズだ。
先日、理紗の件で職員室に呼び出されたばかりだし、我関せずって顔はされないはずだ。
――――――――――――――――――――
「……で、オレって何でいきなり校長室連れてこられてるんですか?」
「いや、お前が言ったんだろ。 一条生徒会長の他生徒への除籍推挙について妥当なものなのかどうか教えてくれって」
「霧山先生に聞いたんですよ! 校長じゃなくて! 担任だから流石に話くらい聞いてんじゃないかって思って!」
「ああ、聞いてる。 生徒会特権を持った一条は、教師陣からしても面倒な提案ばかり仕掛けてくる。 しかもそのどれも、しっかりお堅い長文付きの自作申請書セットでだ。 ったく、あんなフォーマットどっから探してくるんだか……」
「で、どうして校長室に!」
「……入りゃ分かる。 俺は職員室いるから、終わったら声かけろ。 十八時までな、一秒でも早く退勤したい」
そう言い残し、オレを放って行ってしまった。
わけも分からず連れてこられた校長室。
アポは取ってあると言っていたが……、
「……はぁ、まあ、行ってみっか」
コンコン、とノック。
あれ、扉叩く時って二回だっけ、三回が正しいんだっけという思考に、「どうぞ」という横殴りの声。
流石は校長室。 ドアひとつにおいても教室や職員室のものとはどこか違い、豪華に感じる。
失礼します、と扉を開くと……
「こんにちわ。 神無月、煌くん」
「……どうも、こんにちわ」
白髪の学校長が、ほんのりとした笑顔でオレを待っていた。
厳格って言葉からは程遠いゆったりとした温かなオーラに、扉を開いた時の緊張はすぐに雪解けた。
「生徒会長の一条君の件、じゃったか」
―――――――――――――――――――――
特務課 第一開発研究 一部
Aクラス職員フロアにて
「7th、これを見てください」
眼鏡をつけた青目でハーフ顔の職員がタブレットで指さしたのは、おびただしい分量のテキストファイルだった。
ほとんどが文字化けしているが、スクロールしていくと繋がっている単語や稚拙な短文、と思いきや急に達者な論文調のテキストも混じっている、おかしな一面だった。
「私が保持している仮面『墓荒らし』を使って、回収した仮面犯罪者の遺体脳海馬から算出した18TBの記憶データです。 これまで生きてきた人生経験、思い出などのメモリー関連は勿論、身体が憶えてしまった無意識な癖や反射的なものまで記録されています。 拒絶反応が強くほとんど文字化けの酷い状態ですが、『少数派』という単語に集中してデータ修復をしたところ、出てきた結果が……、これです」
読めもしない難解な漢字の海。
文字化けの悪鬼羅列。
その中に、確かに読める文章が挿入されていた。
”ラヴェンダーはいつも高圧的だ。
俺はEXEに願いを叶えてもらうために
このチームにいるってのに。
あんな奴がいつまでも上にいたら、
下っ端は士気が下がる一方だ。”
”噂じゃアイツはEXEの
『願いを叶える力』を使って、
先天性の病気で動かない下半身を
治してもらったらしいが……、
ありゃあ明らかにおかしい。”
”俺の『見えざる手』で見たが、
奴には大病や大怪我の前歴がなかった。
例えEXEの力で治療をしたとしても、
古傷ってのは簡単に消せるもんじゃない。
少し調べてみる価値がありそうだ……”
”おい、嘘だろ?
あいつはイカれてる。
『見えざる手』の能力、
病の根源的詮索……、
治療の効力を応用して、
奴の病的な思想を覗いてやった。
化け物だ、あいつは!
本当の異常者じゃないか!”
”あいつは……、
下半身不随の半植物人間なんかじゃなかった。
本当はなんの不自由もなく、
動き回れる健常者だったんだ!!
それなのに……、騙したんだ。
自ら、わざと動かないようにしていたなんて。
医師も騙して、家族も騙して、
遂には自分自身まで騙して……、
そこまでして特別扱いの病人という
ポジションになりたがったなんて、
狂ってる! 化け物だ、あいつは!”
”じゃあアイツがEXEに叶えてもらった
本当の願いって、一体……?”
「この数日後から、記憶メモリが不明のウイルスコードに支配されて再生不可になっています。 恐らく、ラヴェンダーという仮面犯罪者の力の影響かと」
「興味本位で仲間の過去を探って反感を買い、処理されたというわけか。 回収時の遺体状況は?」
「争ったような傷はありません。 ただ全身にガン細胞が転移していて……、至るところに黒いアザが広がっていました」
「……ロゴス、お前の専門は犯罪心理学だったな。 読み取った記憶の断片から、そのラヴェンダーという仮面犯罪者をどうプロファイルする?」
「……現状では何とも言えません。 情報が欠けすぎている。 テロリストグループの中でもある程度高い地位にいるような中核人物、それでいて……、この男の情報が正しければ、特別性に強い憧れがあり歪むほどにそれを欲している……。 プロファイルしようにも、類似した性格タイプや事件が存在せず、分類が不可能です。 ……調査を続けなければ」
「待て、もうひとつ気になることがある」
タブレットを指で撫でて画面をスクロールさせようとした7thだったが、機械の指では反応せず。
ロゴスの手首を掴み、その指先を借りて怪文書をスクロールさせていく。
「ここだ。 EXEの『願いを叶える力』を使って――、他の仮面犯罪者の記憶データによると、EXEというのは『少数派』指導者のコードネームだったな」
「はい。 ……ですが、『願いを叶える力』など……。 そんな仮面の力があるなら、テロ行為なんてする必要がない。 どうしてEXEは……」
「……今夜は活動しすぎた、残りの調査は任せる」
「はい、何か分かればすぐに通達します」
「では」
無機質な機械音をたてて自動ドアから出ていく7th。
それが閉まりきるまで背部の装甲を見つめていたロゴスは、タブレットの怪文書に目を移した。
「……願いを、叶える力。 そんな仮面の力が本当に存在するのなら……。 競争や富、名声の獲得のような利己的な使い方をするのではなく……、むしろその逆、戦争を、貧富の差を、孤独や飢えのような悲しいものを世の中から消すことにも使えるはず……。 EXEというリーダーに上手く取り入ることさえ出来れば……」
コメント
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ああ、もうっ……この話、重すぎて苦しいのに目が離せなかった……! 一条くんの噂、流星から聞いた"正しいサイドにしか立てない"って台詞がすごく刺さった。空気読めないとか怖がられてるとか、それって本人のせいだけじゃないのにね。だからこそ、どうしても煌くん側を応援したくなるよ……。 それに後半の仮面犯罪者パート、EXEの"願いを叶える力"って何だろう。ロゴスの最後の独白、切実すぎて胸が痛い。一瞬の希望みたいなのに、使い方次第で悪夢にもなるんだろうなって。 情報量多いのに全然ダレなくて、ページめくる手が止まらなかった!