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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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美奈子とその夜は別れて、千秋は美紅の待つマンションへと帰る。

帰りの電車の中では、LINのやり取りはおやすみ程度で終わらせた。

もしかしたら、もう2度と美奈子と会えない気もした。


「お帰りなさい。思ったより早かったね」


「明日も仕事だし、仕事の打ち合わせで軽く飲んだだけだし」


美奈子を遅くまで引き止められなかったので、10時前に千秋はマンションに到着した。


「お風呂すぐ入れるよ」


美紅の笑顔が眩しい。

汚れ切っている自分とは対照的だと思った。

美紅を愛しているのに、どうして美奈子を引きずってしまうのか千秋は自分が分からない。

美紅を裏切ってまで、どうして美奈子と会いたいのか、美奈子に囚われているのか分からない。


「千秋さん?難しい顔してるよ。疲れた?」


「ううん。なんでもないよ。飲みすぎたかな。風呂入ってくるね」


ネクタイを外し、スーツの上着をソファに脱ぎ捨てると、美紅がそれを腕にかけてベッドルームへ向かう。

ハンガーを持ってリビングに戻って来た。


「下も脱いじゃって。一緒にハンガー掛けておくから」


千秋は言われるまま下も脱ぐと美紅に渡す。


「ありがとう」


「どういたしまして。ほら、その格好流石にマヌケだよ。早くお風呂入っちゃって」


ワイシャツに靴下姿。

そんな格好でも、美紅は千秋が愛おしい。

自慢の素敵な旦那様だからだ。


「千秋さん」


美紅に呼び止められて千秋は振り返る。


「あのお店、いったんだー」


美紅はハンカチを出そうと、スラックスのポケットに手を入れ、レシートも一緒に出した。

レシートを見られた以上、美奈子が飲んだカクテルの表記を見れば、連れて行ったのが女性とバレると千秋は思った。


「あ、ああ。ごめん。連れて行ったの女性なんだ」


レシートを見ていた美紅が千秋を見る。


「だから、カクテル、飲んでるんだね。誰と行ったの?」


美紅の表情が曇る。


「東堂の真壁課長」


業務提携先の女性課長と分かり美紅はホッとした。

その課長とは、結婚前に美紅も顔見知りだった。

とても美人で仕事ができるが、どちらかと言えばハンサムウーマンで、人の夫を盗るような人物ではない。美紅のことも可愛がってくれていた。


「そうだったんだ。仕事の相手って真壁さんだったんだ」


美紅は安心して笑顔になった。

その表情を見て千秋は胸が痛む。

もっとひどい嘘を、美紅につくことになるかもと考えた。


「心配しなくて大丈夫だよ。本当に仕事だから。愛してるのは美紅だけだよ」


にっこり笑う千秋。

その笑顔に美紅も笑顔で返す。


「分かってまーす。千秋さんが浮気とか考えられないもん」


この会話は地獄だと千秋は思った。

地獄だと分かっていながら、後ろめたさを感じながらも、千秋は美奈子と2人きりの世界で会いたいと思ってしまった。


「ほら、お風呂」


美紅は千秋を促す。

千秋がリビングから出て行くと、美紅はレシートを見つめる。

なぜ領収書じゃないのか気になった。

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