テラーノベル
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私の家系は代々魔法使い(魔女)の血を受け継いでいる。そして私もその血を受け継いでいる。このスズラン村に生まれた魔法使い(魔女)は、代々村人を助けたり、魔法を見せて遊んだり、村人はみんな魔法使い(魔女)が大好きだった。
ピヨピヨと元気な小鳥が窓をトントンと叩いていた。
「…おはよ。」
「ミリー。おはよう、起きるの遅いのに今日は早いのね。」
「なんてたって今日は、年に1度の感謝祭だからな!」
そう。今日は、このスズラン村で年に1度だけ行われる「感謝祭」の日。日頃から助けて貰っている魔法使い(魔女)にお礼をするお祭りなのだ。屋台を出したり、子どもたちの劇を見たり…みんな私達の為に用意してくれているのだ。
「でも、やってもらってばかりじゃ申し訳ないから、私達も出し物することになったけれど。」
「…私、出し物したい。」
「…ミリー、でも貴方…。」
(…やっぱりだめ……か。)
そう。私達は3人家族。その中でも、魔力が1番弱いのは私だ。だから、村人達の役にあまり立ったことがない。
「パパとママより、魔力弱いもんね。」
魔力が弱いなんてことはもう分かっている。けれど、いざ口に出してみるともっと悲しくなる。
「出来損ないの魔女は、ちょっと出掛けてくる。」
扉が静かに閉まる。
(…気分転換にお祭りの様子でも見ようかな。)
村人達が協力して何かを運んだり、屋台の組み立てをしている。子ども達は、小さなステージで劇のリハーサルをしている。
「みんな朝早くから凄い。」
それだけみんな私達の為に頑張っている。私は特に彼らに何もしてないのに。
ボーッと空を見ていると、村人達が数人駆け寄って来た。
「えっと、君は確か。マジックさんのところの娘さんだっけ?」
最初に話しかけてくれたのは、小さな書店を営んでいるレオさんだった。
「えっと、何…?」
「今日の感謝祭で君達も出し物をするって聞いたんだけど…その確認をちょっとしたくてさ。」
「君のお母さんとお父さんがしてくれるよね?ちょっと呼んで来てくれる?」
さっきの会話を思い出す。思いきって「私が出し物をする。」と言えば、村人達はどう反応するだろうか。驚かれるだろうか、喜ばれるだろうか、嫌がれるだろうか…そんなものは目に見えてる。
「私………パパとママ呼んでくるね。」
「ありがとう。早めに来てねと伝えといてね。」
パパとママを呼んで来ようと、その場を離れようとすると…
「ミリーちゃん、ミリーちゃん!愛犬のメイソンが木に登っちゃって。全然降りて来ないから、パパとママ呼んで来てくれない?」
「おい、マジック。ちょっと急用でよ、カゲロウ町まで行かなくちゃなんねぇんだ。瞬間移動したいから、親呼んで来い。」
次々に村人達のお願いを聞いて、頭がくらくらした。……ようやく、全員聞き終わると誰にももう話しかけられないように、その場をすぐ離れた。
「……1個も私の依頼はなかった。」
とぼとぼと家に帰ろうとすると、1人の青年とぶつかった。その青年は、黒い髪に赤いメッシュ。ルビーのような赤い目をしていた。
「いたいた!ミリー、俺の親父を助けてくれ!」
彼は、私の肩を必死に揺らしながら真剣な表情で私に話した。
「早く、連れて行って。」
「こっちだ!」
彼に手を引かれ、村から少し離れた森に案内された。童話に出てくる可愛いらしい家を見て、少しほっこりした。
家の中に入り、寝室に案内されるとベッドで苦しそうに魘されている男性の姿があった。
「おい、親父。今、ミリーを連れて来たから。」
「……す、まない。」
彼は私の方へ向き直り、私に土下座をする。
「え…。」
「頼む!何でもするから、その魔法で俺の親父を救ってくれ!」
「……でも、私…ま、魔法。」
苦しむ姿と土下座する姿を見て、断れなかった。
(……治癒魔法なら何回も練習して来たし、上手くいくかも。)
目を瞑り、両手を組む。
(この人の病気がなくなりますように!)
すると、じわじわと体温が上がって来た。まるで、誰かに抱きしめられているような温かい感じ。
「……!?」
男性は、突然ベッドから立ち上がり、ダンスをする。
「上手くいった…?」
「見てくれ!体をこんな風に動かせるぞ!こんな風に体を曲げることだって…!」
そんな男性に私は一喝入れる。
「せっかく治ったのに、そんなことしたらまたベッド生活。」
「そうですよね…すみません!すみません!…ありがとうございます、ミリーさん!」
男性と青年は私に深く礼をする。青年は顔を上げると、キラキラと目を輝かせて私に顔を近づける。
「すげぇ!魔法ってすげぇ!こんな直ぐに治せるだなんて…。」
感謝されて、礼をされたのは初めてだ。そうホッと胸を撫で下ろす。
「…全然凄くない。私は、これしかできないから。」
「これしか…?それでもすげぇじゃん!人を救える魔法。」
「……。」
男性は、青年に話しかける。
「ヒューゴ、今日の感謝祭って確か魔法使いさんも出し物するんだろ?」
「ん?あーそうだった気がする…。」
「ミリーさん、今日の感謝祭でもっと魔法見せて下さい。ヒューゴもそう思うだろ?」
「……。」
私は唇を噛み締め、拳を握る。
「私、感謝祭に出ないし。出し物もパパとママがやる。」
「どうしてですか?さっきの魔法凄かったじゃないですか!」
「違う!……さっきのはたまたま。…村人達だって出来損ないの魔女(魔法使い)より、いつも頼りになる魔法使い(魔女)に来てもらった方が嬉しいんでしょ?」
重い空気が流れる中、私はそっと家を出た。
扉を強く閉め、切れてしまった唇を魔法で治す。
「でも、、意外だったな自分にできる魔法があるって。」
村の方でざわざわと何かが聞こえた。
「何…?」
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